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日本神道に流れている考えの特徴を知る③

2022年07月11日 | 日本
(キリスト教と比べて分かる「光一元の思想」の功罪)
こうした思想はもう一つ、アメリカにも出ていて、エマソン以降、光明思想家がたくさん出ています。ノーマン・ビンセント・ピールあたりまで流れてはいるわけで、「この闇というものを積極的に肯定しすぎると、その力が強く見えすぎて、人生が不幸にとらわれることになるので、『光だけが実在していて、闇などはないのだ。光の不在だけなのだ』というもの」です。これはエマソンも一緒ですが、こういう考え方が一つ出てきているわけです。

この思想は、現実世界の事実を変えられない場合や、事実としての救済が与えられない場合に、考え方でそれなりに切り替えようとする動きであって、確かに、“頓服薬(とんぷくやく)”的というか、急に病気が治るような気分になったりすることも、あることはあります。

私の父親も、「戦前、病気で布団を敷いて寝ていたときに、『生命の實相(じつそう)』などの成長の家の本を読んだら、『病はない』と書いてあるから、『あっ、病気はないんだ』と思い、『布団を上げて立て』と書いてあるから、床を上げて立ったら、病気が治ったように思ったこともあった」というように言っていました。

そういう意味では、いちおう言葉には力があって、そのようになることもありますし、それに、禅宗(ぜんしゅう)あたりの一喝(いっかつ)のようなものが、若干加わっているところもあると思います。

ただ、現在はその教団でも、そういった教えは続かないところがあるようなので、実体論としてはなかなか難しいのでしょう。

「本来、病なし、罪なし、地獄なし」などと言って、悪いものはすべて否定していくのですが、「病なし」と言うのはよいとしても、「その教団の職員は、病院には裏口から入っていく」ということがあったりしたようです。「病はないので病院もないし、要らないのだけれども、とりあえずは行く」という感じで、少し葛藤(かっとう)があったようなことは聞いています。

ともあれ、「一つの思想の流れとして、そういうものがある」というのは、日本の特徴の一つです。

ここまで光一元の思想が強いのは、日本以外のほかのところにもあったかというと、例えば、外国でも古代から多神教が普通なので、神様がたくさんいたのは事実なのですが、「一神教運動」を起こしたときには、「太陽神信仰」など、ときどきこういう少し似たものが出たことはあります。

これに比べると、キリスト教では、「人間・罪の子」「人間には原罪があり、その罪を償(つぐな)わなくてはいけない」というようなことをかなり言います。考え方によっては、「この世的に、いろいろと悲惨な経験をすることによって、多少、罪が贖(あがな)われ、天国に行ったときには、その正反対の境地になる」というような思想もあることはあります。

クリスチャンは、病気はよくするのですが、病気をしても「神様が与えた罰ではないか」と思っているようなことはよくあります。そのため、治らなくても、「これは運命なのかもしれない」と思う者もいるし、例外的に、奇跡として病気の治る者がいるとしても、非常に数が少ない感じはします。

そういうわけで、「すべて光である」という考えもあれば、「罪がある」という考えもあって、「どちらがより多くの人に支持されるかべきか」ということについては、難しいところではあるでしょう。

「罪を反省する」ということになると、やはり、「そもそも、どのような罪があるか」という分類から始まって、「その一つひとつを正していく」という考え方に入ってきて、個人の行動目標や生き方の目標ができるので、「人間としての導きになることが多い」ということは言えると思うのです。

ところが、「人間は神の光からできた」というだけで教えが止まっていたら、「もう、それ以上はない」ということにもなるので、「ただ光の部分だけを強く見よ」ということになります。

これは、日本では古来よくある考え方なのですが、第二次大戦で兵站(へいたん)を無視して、「食料は三日分しかないけれども、とりあえず、インドまで突っ込んで戦うのだ。敵のものを取って食え」といった感じの戦い方、兵站無視の考え方などには、そんなところがあります。

このあたりについては、この世的なところを軽く見すぎている部分もあると思うのです。こうした「光一元の思想」は、日本系の宗教には連綿と流れています。

---owari---
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