日本人はいかに生きてきたかを、もう一度確認しておこう。来し方に日本人の意志は刻まれている。近代以降、日本が一貫して戦ってきたのは、人種差別という壁である。それがどれほど苛烈(かれつ)で酷薄(こくはく)なものであったかを、いまの日本人はなかなか実感できない。戦後の日本人が、「国家」も「人種」も忘れて暮らせたのは幸福だったが、そうした“特異”な時間は終わりを告げている。
世界の歴史を見渡せば「平和」は常態ではない。戦後の日本は恵まれた戦間期を過ごしただけと心しておくほうがよい。そして、それは「平和の毒」を日本人の体内に注入した。
繰り返すが、日本が明治開国以来、国際社会において主張し続けたのは人種平等である。しかも白人に対して、決して諦めなかった。いまや世界で人種平等の理念は当たり前だが、その口火を切り、大きな炎としたのは日本である。そして、白人絶対の時代を終わらせたのは、すべて日本単独の力だった。
人種平等は二十世紀最大の事件である。パソコンや原爆といった科学技術の分野はいずれ誰かがつくるが、白人絶対時代は有色人種の誰かが立ち上がって、“実力”で打ち破らないかぎり、終わらなかった。白人のほうから譲歩することはあり得なかったからである。日本が日露戦争でロシアを打ち破るまで、近代自然科学と近代工業の発展は、白い肌に生まれた人間でなければ成し得ないというのが白人たちの常識だった。
社会進化論が学問として確立したこともあって、人類のなかで最も進化した優秀な人種が白人あるという思い込みに彼らはまったく疑念を抱かなかった。そういう時代にわれわれの父祖(ふそ)は生きたのである。
(日下公人著書「『超先進国』日本が世界を導く」より転載)
---owari---
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