※ 何年か振りに"ビッグコミックオリジナル"を買いました。巻頭の「善人長屋」も山本周五郎の漫画バージョンという感じでなかなか面白かったです。
それに「赤狩り」という作品が図抜けていて興味深いものでした。
解説によると『第二次大戦後、東西冷戦の深刻化を背景に米国で吹き荒れた赤狩りの嵐。
米国政府はハリウッドの著名な映画人たちを共産主義者であると告発していく。そのうち
召喚や証言を拒否して議会侮辱罪で有罪判決を受けた主要な10人をハリウッド・テンと呼 ぶ。彼らは権力の弾圧といかに格闘したのか!?』
➡ その一人、アルヴァ・ベッシ―(以下A)とチャーリー・チャップリン(以下c)が
出会い会話する部分が本当に深い内容を持っています。
C あなたの名前アルヴァとは、"不服従"の事ですね。
A はい…… その不服従のおかげで苦労しています。
これから一年ほど刑務所に行く事になるでしょうし、帰ってきてもハリウッドでの
仕事はありません。
ですから偉大な芸術家であり、なおかつ何事にも不服従を貫かれているあなたに、
最後にお会いしておきたかったのです。
C アルヴァ……
あたの信念を貫こうとする行為には敬意を表します。
しかし…… 芸術における不服従とは何だろう……
あなたが不服従なら、片方にあなたを服従させようとする者がいるという訳ですね。
しかし、あなたが勝利したらどうなります?
あなたが服従させる側になり、相手は不服従を貫こうとする。
権力と反権力もそうです。反権力が勝利すれば、両者の立場が入れ替わるだけです。
実際に歴史はそのように動いてきました。
しかし、芸術における不服従とは、そのような関係から自由である事じゃない
でしょうか?
A 自由……
C 芸術は勝利してはいけない。しかし、決して負けてはならない。
また同じように服従してはいけないが、相手を圧してもいけない。
そして、何者にも与(くみ)してはいけない。
A …
C 難しい難しい。 芸術とはなんとも難しい。
しかし、アルヴァ… 芸術家にとっての自由とはそのようなものだと私は
思う。
芸術の女神(ミューズ)に仕える私達はあらゆる対立を止揚(しよう)※1し、
自由を模索する…
そして、私にとって「自由」の同義語は「孤独」です。
私の魂はいつでも孤独な浮浪者です。
※ 僅か20コマの漫画ですが自分にとっては、法事の後の坊主の説話や
凡百のHOW TO的な人生論より、遥かに得る事が多かったです。
※1 前にドイツ語のカテゴリーで書いたaufhebenです。自分の好きな
言葉でもあります。
最後に"小悟"とは、宗派は判りませんが禅の言葉で、日常生活をちょっと変えるような
文字し通り小さな悟りのことらしいです。これに対して"大悟"は人生を変えるような
大きな悟りを意味しているようです。
凡太郎の人生の意味や悟りに至る道は、まだ、その一歩を進めただけです。
(達磨大師)

(鈴木大拙)
