[シドニー 5日 ロイター] -
◇◇ ニュージーランド(NZ)ドルは、かつては世界でも最も高利回りを得られる通貨の一つとしての地位を誇り、利益を追い求める投資家のお気に入りだった。しかし今やニュージーランド連邦準備銀行(中央銀行)がマイナス金利を導入するとの見通しが強まり、円のような安全だが退屈な通貨と一緒に扱われるようになっている。
☆☆☆ 政策金利のマイナス化は、NZドルや投資適格級の同国債券市場にとって急激な変化の時代をもたらす。というのも、両者は伝統的に、円やユーロといった低金利で調達した資金を、高リスクで高金利の通貨で運用する「キャリートレード」で、運用対象となってきたからだ。
¤¤¤ フィッシャー・ファンズで投資を手掛けるフランク・ジャスパー氏は、NZドルが輝きを失っているため、自身のポートフォリオを見直そうとしている。「人生で初めてポートフォリオに金を組み入れるかもしれない」という。
☆☆☆ 金は危機や景気悪化で需要が高まりやすい資産で、今年は年初から12%上昇している。
⇨⇨ ジャスパー氏によれば、自分のような投資家は既にポートフォリオの分散化をかなり進めており、新興国市場の債券や通貨に資金を投入している。
ジャスパー氏は「ほとんどの顧客はポートフォリオにリスク資産をある程度加えざるを得なくなるだろう。われわれは格付けが比較的高い社債に資金を振り向けることが必要になっている」と述べた。
◐◐ ニュージーランド中銀がマイナス金利を採用すれば、同国はスウェーデン、デンマークや欧州諸国、日本の仲間入りする。こうした国は既にマイナス金利を採用し、高利回り志向の投資家に魅力的な市場ではなくなっている。
○○ 日本の投資家はこれまで、高利回りを求めて豪ドルやNZドルに投資してきた。彼らによれば、ニュージーランドがマイナス金利政策を取れば、収益のため、より長い期間のNZドル建て債を買わざるを得ないかもしれない。
¤¤¤ アセット・マネジメント・ワンのファンドマネジャー、タケイ・アキラ氏は「ニュージーランドの国債利回り曲線は最終的に日本と似たような形状になるだろう。そうなれば大きな収益は無理になるが、損もなくなる」と話した。
<リスクオンとリスクオフ>
◇◇ NZドルは伝統的に同国の経済成長見通しと連動してきた。経済情勢が良好で、リスク選考や利回り追求が促されるときには相場が上昇していた。
¤¤¤ JFDグループのシニア・マーケット・アナリスト、シャラランボス・ピスーラス氏は「NZドルは、普段なら市場が楽観的なときに買われる」とした上で、「ニュージーランド中銀が超ハト派な姿勢を取れば上昇は妨げられるかもしれない」と述べた。「リスク連動型通貨にしては珍しく、リスク志向の局面であっても他通貨より値下がりするかもしれない」という。
◐◐ NZドルは既に豪ドルをアンダーパフォームしている。オーストラリア中銀がマイナス金利政策を選択肢から除外しているためで、NZドルは豪ドルに対し3月半ばから5月半ばにかけて8%以上、下落した。
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◑◑ NZドルの流動性も打撃を受ける可能性がある。同国の名目上の経済規模は世界で50位だが、NZドルの取引高は世界10位。高金利通貨であることに加えて、アジア太平洋地域でまっさきに金融市場を開放した国だったからだ。
¤¤¤ 日興AM・NZの債券・通貨ヘッド、ファーガス・マクドナルド氏は、ニュージーランドがマイナス金利を導入すれば、一部の国内資産を除き、資金が海外に流出するとみる。「株式と不動産は上昇するだろうが、債券とキャッシュ性資産の資金はよそに流れる」と予測した。
(Swati Pandey記者)