□□☞☞ 東京証券取引所は、株価の情報を配信するシステムのトラブルで、終日すべての銘柄の取り引きを停止しました。国内外の投資家などに幅広い影響を及ぼしかねない異例の事態で、1日午後4時半から社長らが記者会見し、現時点で把握できた原因や、2日以降の対応などを説明することにしています。
東京証券取引所では1日午前9時前、株価などの情報を配信するシステムに何らかのトラブルが発生し、正午前に、1日は終日すべての銘柄の取り引きを停止すると発表しました。
東証で、すべての銘柄の取り引きが終日停止されるのは、株式の売買が全面的にシステム化された1999年5月以降で初めてだということです。
また、この影響で東証と同じシステムを使っている名古屋、福岡、札幌の証券取引所も、終日すべての取り引きを停止し、国内外の投資家などに幅広い影響を及ぼしかねない異例の事態となりました。
東証は、先ほどホームページで「現在、ハードウエアについては交換を予定しており、メンテナンスなどを含めてあす以降、正常な売買ができるよう対応を行っている」というコメントを出しました。
東証によりますと、株価の情報を配信する機器の故障による障害とみられるということで、午後4時半から宮原幸一郎社長らが記者会見して現時点で把握できた原因や、2日以降の対応などについて説明することにしています。
一方、先物取引が中心の大阪取引所では、東証とは別のシステムが使われているため、通常どおり売買が行われているということです。
金融庁は、東証で発生しているシステムトラブルについて、原因や取り引き再開のめどなどを確認しているということです。
東証には1部や2部、マザーズなど合わせておよそ3700の銘柄が上場し、ニューヨークやロンドンと並ぶ世界有数の取引所ですが、過去には2005年にシステムのトラブルで3時間にわたって全面的に取り引きが停止する事態も起きています。
東証のシステム開発した富士通「対応中」
株式を売買するシステムを開発した富士通は「トラブルが発生して対応しているのは事実だが、トラブルの状況や原因、いきさつについてはコメントできない」としています。
東証 過去にもたびたびトラブル
東京証券取引所では、これまでも取り引き停止などのトラブルがたびたび起きています。
2006年1月には、ライブドア事件の影響で取り引き量が急増し、システムの処理能力の限界近くに達したことから、午後になって売買を全面的に停止しました。
2005年11月には株式などの売買システムにトラブルが発生して注文を受け付けることができなくなり、3時間にわたって全面的に取り引きが停止する事態が起きています。
最近では、2018年10月に証券会社から注文を受け付けるシステムの4つの系統のうち1つで障害が起き、一部の証券会社で株式やETF=上場投資信託などの売買ができなくなりました。
名古屋証券取引所でも取り引き停止
東京証券取引所のシステムトラブルを受け、名古屋証券取引所でもすべての銘柄の取り引きが停止しています。
今のところ復旧のめどは立っていないということです。
東京証券取引所で、1日午前9時前に発生した株価などの情報を配信するシステムのトラブルを受け、名古屋市にある名古屋証券取引所でも、すべての銘柄で取り引きが停止し、売買の注文が受け付けられなくなっています。
名古屋証券取引所の売買監理室では、画面に株価が表示されておらず、担当者がパソコンに向かってシステムが復旧した際に速やかに取り引きを開始できるよう準備を進めていました。
名古屋証券取引所は、東京証券取引所と同じシステムを使って売買を行っていることから、単独で復旧することはできないということで、復旧のめどは立っていないということです。
名古屋証券取引所では、東京証券取引所と連絡を取りながら情報収集を進めているとしています。
札幌証券取引所でも取り引き停止
札幌証券取引所でも1日朝から、上場している銘柄の取り引きが停止しています。
停止を受けて、本来、取り引きが始まる午前9時をすぎても、札幌証券取引所の中に設置されたモニターの表示が更新されず、30日の株価の終値がそのまま表示されていました。
午前10時ごろには、札幌証券取引所の職員が投資家などに周知するため、モニターの画面に「売買停止中」と書かれた紙を貼り付けました。
札幌証券取引所によりますと、取り引きが停止したのは、おととし9月の北海道胆振東部地震以来で、午前9時すぎには証券会社や投資家からの問い合わせが殺到したということです。
札幌証券取引所は「投資の機会を逸することになり、投資家や会員企業などにご迷惑をおかけしています」とコメントしています。
大阪取引所は通常どおり
日経平均株価の先物などを取り扱っている大阪取引所では、影響はなく、通常どおり取り引きが行われています。
日本取引所グループ傘下にある大阪取引所は、日経平均株価の先物などデリバティブと呼ばれるさまざまな金融派生商品を扱っています。
けさ、東京証券取引所でシステムトラブルが発生し、すべての株式の取り引きが停止していますが、大阪取引所はシステムが異なっていることから影響はなく、通常どおりの取り引きが行われています。
大阪取引所にあるボードには東京証券取引所で取り引きされている日経平均株価も表示されていますが値動きはありません。
一方、大阪取引所で取り扱う先物価格の値はときおり動いて取り引きが行われている様子が見て取れます。
証券会社 顧客対応に追われる
証券会社では顧客からの問い合わせの対応に追われています。
東京 大手町のインターネット専門の証券会社では、取り引き停止が伝わった午前9時ごろから顧客から問い合わせの電話が相次いでいます。
問い合わせは午前9時からの1時間の間に、ふだんの7倍のおよそ700件に上ったということで、通常は別の業務にあたっているスタッフも動員し対応にあたっているということです。
顧客からは「いったいなにが起きているのか情報がほしい」とか「自分が持っている株を売りたいが、なんとかならないか」などといった問い合わせが多いということです。
auカブコム証券の小松圭一営業部長は「問い合わせをいただいても、情報がなくて答えられないことも多く、もどかしさを感じている。お客さまのためにも早く復旧してほしい」と話していました。
東京では「ありえない」の声
東京・八重洲で聞きました。
60代の会社員の男性は、「驚いたし、ちょっとありえない。一刻も早く復旧するしかないがきょう売買しなければいけない人もいるのでそういう人たちに被害が出たらどうするのかと思う。きょうは今年度の下期の最初の日なので運用会社なども運用に困っているのではないか」と話していました。
また、別の60代の男性は、「日本経済にとって大事な東京証券取引所で取り引きが停止したことにびっくりした。少しでも早く復旧してもらえればと思う。株価が注目されている経済状況なので、世界的に注目を浴びるのではないか」と話していました。
官房長官「金融庁が原因究明と復旧に向けた対応指示」
加藤官房長官は、午前の記者会見で「現在、金融庁から日本取引所グループと東京証券取引所に対して、原因究明と復旧に向けた対応を指示していて、鋭意、復旧の作業を行っていると承知している。マーケットの重要なインフラである取引所において取り引きが行えなくなることは、投資家にとっても取り引きの機会が制限されることであって、大変遺憾だと思っている」と述べました。
また、記者団がサイバー攻撃などの可能性を質問したのに対し「現時点でそういった可能性などの情報は確認していない。原因は究明中で、現時点で確たることは申し上げる状況にない」と述べました。