じじい日記

日々の雑感と戯言を綴っております

盗作童話「最後の一葉」

2018-11-23 13:29:29 | 盗作童話

 とある村の庄屋に「鶴」という娘がいた。
鶴は幼少の頃から体が弱く、暑いと言っては臥せり、寒いと言っては、また臥せっていた。

今年の、長引いた梅雨の頃に体調が優れないと床に着いた鶴は、柿の実が熟れても起きられずにいた。

立冬を過ぎたある日、強い北風が吹いた。
翌日は寒くはあったが日差しがあり、陽だまりは暖かかった。
鶴は寝床を縁側の障子のそばに移してもらい横になったまま庭に目を向けていた。

初冬の、抜けるように澄んだ青い空に舞い散り落ちる木の葉を見ていた。
そして鶴は言った。
あの最後のひと葉とともに私も散るのかしら、と。

それはほとんど声にならない言葉であったが、ちょうど手入れに入っていた庭師の作造は聞き逃さなかった。

作造は見習いの頃から出入りし鶴の成長をずっと見て知っていた庭師だった。
いや、知っていたというよりも鶴の良き遊び相手でもあった。
病弱で屋敷の外に出ることの無い幼少の鶴は作造を遊び相手にしたのだ。
だから鶴は作造をよく慕っていた。

作造はよほど鶴の前に飛び出し、そんなことを言ってはいけない、気をしっかり持ってくれろ、と言おうとしたが止めた。
辛いのは聞いた自分では無く、思わず口をついてそんな言葉の出る鶴であると思ったからだった。

最後のひと葉は真紅に紅葉したもみじであった。
作造は鶴が眠るのを待って木に登った。
そして火で炙った松脂でもみじの葉を固めた。
これなら北風が吹いてももみじが落ちることは無い。

庄屋の庭は広かったので作造は手入れのために毎日出入りしたいた。
作造はあの日からもみじの葉の細工を欠かさなかった。

鶴は晴れていれば陽だまりを求めて床を縁側の障子のそばに移し、外を眺めていた。
木々はすっかり葉を落とし庭は寒々しい冬の景色になっていた。
しかし、その中に一点、真紅のもみじがいつもひと葉、どれぼどの北風吹いても飛ばずにいた。

鶴はそのひと葉が気になっていた。
いつかは必ず飛ばされるであろうもみじに己が明日を見ていたのだ。
そして言うのだった。
あのひと葉とともに私も散るのだ、と。

作造は落ちたもみじの葉をかき集めてあった。
北風に吹かれたもみじは1日と持たずに千切れてしまうのだ。
だからほとんど毎日付け替えていた。
これで、この葉っぱを見て鶴が冬を越してくれたらと作造は思ったのだった。

あれから幾日か経ち、もはや初冬は過ぎ、初霜から初氷を経て今朝は雪が舞った。
そんな日でも作造には庭の仕事があった。
そしていつものようにもみじの木に登り梢に枯葉を一枚松脂で付けた。
もみじの木はそこそこの高さでおよそ15尺もあった。
腕の良い庭師の作造は10尺でも12尺でも造作無く登れ、手早く作業をしていた。

もみじの梢に腕を絡め片足立ちをし、空いた手で懐の鳥黐を探っていた作造が何かの拍子に落ちた。
吹き付けた雪が氷となって作造の足を滑らせたのだった。
作造はもみじの下の氷の張った池に落ちた。
池が幸いして命に別状は無かったが強かに腰を打っていた。
しかし作造は冷たい池に浸かったまま唸ることもできずにいた。
やがては凍えて逝くことになるのは明らかだった。

障子を閉め奥で寝ていた鶴であったが大きな物音が気になった。
この日、庄屋の屋敷には誰もいなかった。
鶴についていた女中も一時ほどの暇をもらって外に出ていたのだ。
湯浴みと用足し以外ではほとんど起きることの無い鶴であったが虫の知らせる胸騒ぎにやっとの思いで立ち上がり、障子を開けた。

すっかり葉が落ちて見通せる先の池に異様なものを鶴は感じた。
よく目を凝らすと誰か人が池の中で蠢いているのが見えた。
鶴はとっさに作造であることを察した。

鶴は用足しに行くときの支えの杖を手に草履も履かずに庭に出た。
寝間着姿のままの鶴に北風が吹き付けていた。
おぼつかない足で池まで、やっとたどり着いた鶴は作造に、今助けてやるからと語った。

しかし鶴にそんな力が無いことは作造は知っている。
そんなことよりもこの寒さの中で寝間着一つの鶴の容体を気遣って、自分のことは構わないで屋敷に戻ってくれと懇願して言った。

だが鶴は聞かなかった。
「作造、最後のひと葉は貴方なのにどうして放っておけましょうか」と言うのだった。

作造は自分が池から出ないと鶴が動かないと分かり意を決した。
池に入ろうとする鶴を制して作造は、痛めていない右手で腰の棕櫚縄を探った。
そして探り当てた縄を鶴に投げ渡し、もみじの幹に巻いてくれろと頼んだ。

これも不思議であったがほとんど身動きできないほどに弱っていたはずの鶴が棕櫚縄を受け取ると素早くもみじの幹に結びつけたのだ。

作造は痛めていない右手に渾身の力を込めて引き、また、激痛の走る足で池の底を這いずった。
紅葉に結びつけた棕櫚縄を鶴も一緒に引いていた。
岸から這いずり上がるとき、作造に差し出された鶴の手は血が滲んでいた。
赤子にも等しい鶴の手は粗い棕櫚縄で痛めていたのだ。

作造は水から上がって震えていた。
歯の根も合わぬほどに震え言葉にならない声で鶴に礼を言った。
小さく華奢な鶴が作造を抱きかかえ、暖めようとしていた。

作造は、少し休めば動けるから屋敷に戻ってくれと懇願したのだが鶴は動かなかった。
このままでは自分ばかりか鶴を巻き添えにしてしまうと思った作造はもみじの幹に右腕を絡ませ立とうと試みた。
すると鶴が作造の左の腕の下に体を入れ持ち上げようとした。
鶴の髪が作造の顔の鼻先にあってとても良い香りを感じていた。

作造は思った。
死にたく無い、と。
閉じ込めていた鶴への想いが作造に力を与えた。

作造と鶴は互いに支えあい、どこから湧いたものか判らない力に助けられ屋敷の縁側にたどり着いた。

屋敷に上がった鶴は作造を裸にし自分の布団に寝かせた。
そして鶴も濡れた寝間着を脱ぎ作造の脇に身を寄せた。




 続かない・・・これでおしまい。





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北風が窓を叩く

2018-11-22 22:11:11 | 日記的雑談
まだ日付が変わって居ないので1日で熱帯から冬の我が家に移動したわけであります。

彼の地も熱帯にしては肌寒く、折しもハバガット・・・滞在中は毎日北風が強かったのでありました。

まっ、厚い雲を一皮むけば熱帯の日差しが差して瞬く間に暑さを取り戻しはするんですが、それでも、なんか違うよなと思わせる天気でありました。

日中、天気が良ければプールサイドでビールを飲むんですけれども、そんな気分はミジンコも起こさせないハバガットでありまして、正直言って暇でありました。


プールサイドでビール片手にブログを

いや、ドピーカンで炎天下なら水にも入るでありましょうし、泳ぎもするんであります・・・まっ、狭いプールですけど。

しかし、こんな肌寒いビルの屋上のプールには誰も来ないわけであります。
そこで私は一人ポツンとパソコンを開きブログに有る事無い事を書き込んでいたわけであります。
もしブログをやって居なかったら・・・恐らく、カジノでスロットマシーン相手に頭から湯気など吹いて居たことでありましょう。

いや、近所に博打場がいくつかあるんですぜ・・・ホテルに併設で。

で、北風もアレなんですけど時折雨も吹き付けてくるわけであります。
自分は濡れても平気なんですがPCが嫌がるんで屋根の下に引っ越して「フィリピーノブレックファスト」を食べたのであります。


昼飯に食べたブレックフアスト

いや、まさか、ソコソコの体裁を保ったこのホテルにこれが有るとは・・・ジジイ感激ぃ~でありました。

それは、お写真では分かりにくいですけど、ブラッドと言う干し魚なんであります。
私しゃこれが大好きでして、この小魚・・・いや、種類はたくさんあってイワシやヒイラギなんかも美味いんであります。

本日のお魚はエボダイでありまして、これはこれで美味いのであります。
私はセットメニューに付いて来た3枚をあっという間に平らげこの魚だけをオーダーした次第であります。

しかし、そもそもがフィリピンでも貧乏人が好んで食べる干物なのでホントーに安いんであります。
そしたら、お皿に5枚載せて来てサービスで置いて行きました。

で、ウェイターさんも、ナンでこんなもの好きなの、と尋ねるわけであります。
と、言うことでその昔はあっちの島でダイビングの仕事をして居たことなどをレストランのスタップと話しつつ盛り上がっていたのでありました。

いや、ブラッドは塩がきついんで喉が乾くのであります。
そんなわけでサンミゲールビールも一本が二本になり、真昼間から三本も飲んじまってブログ書きどころでは無いほどに回ったのでありました。

で、いよいよ雨が本気で吹き込んできたところで部屋に引き上げ読書になったんですが、ベッドに潜った途端に酔いが回ったのか、寝ちまったのでありました。




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韓国ツアー?

2018-11-22 12:52:40 | 旅の記憶
嫌韓を趣味とする私でありますが、時と場合によっては簡単に宗旨変えをするわけであります。

そんなわけで、ここは韓国、仁川空港であります。

で、朝の6時半に飛行機から放り出された私は途方に暮れる予定でありましたが、無料の市内観光があったのを思い出し、サッサと応募したのでありました。

無料のツアーは最短では一時間から有りますが私は8時も待ち時間があるので四時間の韓国古刹巡りに出かけたのでありました。

で、朝の8時に出て昼飯頃に戻るツアーでして、先程空港に戻り昼飯を食べてベンチに寝転がっているわけであります。



韓国はキムチの季節との事で真っ赤な唐辛子と大量の白菜がそこかしこに散らばっていました。

で、寺院は由緒正しい歴史的建物らしいんですけど、日本の荘厳な寺を見馴れている私には、はっきり言って陳腐に見えたのは内緒であります。

で、昼飯なんですが、ハンバーグカレーを食べたのであります。
しかし、韓国にしてはそこそこ美味いので驚きました。

ですが、一番辛く無いのを頼んだんですけど、それでもCoCo壱の3辛程度の力があって私には強烈でありました。

なので余りの辛さから喉を守るためにさして欲しくも無いビールまで呑んでしま ったわけであります。


ビールとカレーで1800円なので日本よりはなんぼか安い感じでありました。

搭乗まであと約二時間であります。

暇だなァ~




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寒いので避難してきました。

2018-11-21 15:21:46 | 日記的雑談
もー今夜の便で帰るんですよわ・・・まっ、飛行機の便は日付が変わってるんで明日とも言えますが、チェックアウトは12時ごろですかね?

あぁ~ さしたる戦果もなくこの旅も終わりであります。

今までプールサイドバーにいてブログを書いていたんですけど、ハバガット・・・北からの風が強く、寒いんであります。

南国のフィリピンで寒いなんて、とお思いでしょうけど、ここルソン島はフィリピンでも北の方なんで意外と寒くなるんであります。

ここからバスで6時間ほどの街にバギオがあるんですが、フィリピンでも避暑地として有名でして夏でも涼しいんであります。

で、ルソン島の北の先に小さな島があってそこがフィリピンの最北なんですけれども、そこの海峡は僅かに150キロ弱で台湾の南側に届くんであります。

と、言うことは、日本の最南端とフィリピンの最北端は300キロも離れていない訳でして、本当に近いんですよ。

もう少し長くいたなぁ~・・・来たと思ったらもう帰りですもん。
4泊5日で組んできたと言っても、最初の夜が日付の変わった深夜到着で、帰りが4日目の夜に出るんですから、実質の中身は3日も無い訳であります。

プールのバイトを始める以前、一度出たらだいたい一ヶ月、短くても二週間はうろついていた自分ですから、こんな神風旅行は瞬く間に終わった気がするのであります。

まっ、そんなに長くいるには旅の資金もそれなりですし、資金的にきついと質を落とさざるを得ないわけでして、この旅のように2泊の部屋代を捨てでも良いホテルへ、なんて荒技は使えませんけど。

この街は今韓国色に塗りつぶされつつあります。
嘗ての日本が跋扈した面影は薄く・・・いや、韓国人が蔓延ると日本人が引っ込むわけでして、古くはサイパンがそーですし、フィリピンでもいたる所でそれが起きています。

かつて白い砂で世界に名を馳せたボラカイ島ですが、今は韓国が制覇しちまった感が強く日本人はあまり行かなくなりました・・・まっ、しばらく行っていないんで人伝ですが。

まっ、だからナンなんだ、でもありまして、精神的に嫌っても実質的な弊害は特に無いんですが、しかし、20年、30年前のフィリピンは日本製品と日本人があふれていたのを覚えている自分としては少し悲しい話であります。

セブの空港もマニラの空港もテレビはシャープであったのに、今は全部サムソンで有ります。
で、安いホテルのエアコンはLGで、テレビもLGであります。

まっ、異国の地で少しばかり知っている昔を語っても栓無きことでありますね。

今回、カメラは一台きりで有ります。
ソニーのTX10、一つで有ります、が、正解でした。

もう見慣れた街の景色は自分を刺激するものでは無く、十分面白い被写体なのにカメラを向けるのが億劫なんで有ります。

先日コンビニから出たら物乞いの子供がいて5ペソくれたわけです。
その時の嬉しそうな顔は十分絵になるはずなんですけれども・・・そして、お金を渡せばその状況になるのはわかっているんですから、以前の自分ならカメラを準備してからコインを渡したはずなんで有ります。
でも、なんだか、もーいいや、ってな気分でした。

しかし、それも年齢なんですかね・・・なんかやるのに最初に口を突いて出るのが「めんどくせぇ」なんであります。

めんどくせぇ、は自分への言い訳・・・悲しいことですが、衰えは隠せないんで有ります。

いやいや、まだなんだってできますよ、たぶん。
昨夜の彼女だって自分が誘わなかったからあの状況に流れたわけでして、女が裸でベットに入ったのに手も出さない男って・・・だから、めんどくぇ~のであります。

オスの本能がめんどくせぇ~を上回ってあんな美味しい状況に二の足を踏む・・・男であった自分と、男であり続けようとする自分の境には見えないけれども結構厚い壁があるような気がするんで有ります。
それを承知の馬鹿な行動・・・まっ、良識ある大人ならこんな馬鹿なことはしないでしょうけどね。

そして、そんなことを言いつつ、今夜の便の前にもう一回あのバーに行くんですぜ、たぶん・・・何を求めているのか自分にも不明ですが。

こうして一生こんな馬鹿げた旅を繰り返すんで有りましょうか・・・まっ、たぶん、では無く絶対付きでやるんでしょうね。

世の中には男の救いの薬があるわけです。
が、何度か試しましたがあんなものに頼らないとナニなのであればアレをする資格は無い、と自分は思うので有ります。

まっ、誰でも読めるブログにこんなことを書き綴る馬鹿も珍しいと思いますけど、いいじゃ無いですか、これが俺なんですもん、と恥ずかし気も無く晒せるのも歳のせいにしたいわけで有ります。

あの手の薬ね・・・確かに効くんですよ。
でもね、自分のような体力と筋力だけしか持ち合わせずに世の中を渡ってきた人間は身体能力の衰退は悲しいんで有ります。

言っときますがまだ頑張れば出来るんですからね・・・ダメと宣言してるわけでは有りませぬよ・・・昨夜は試していないんでナニでは有りますけど。

今回もこのビーサンを履いているわけです。

もう10年近くになりますかね。
タイで買ったんで有ります、たぶん。
そして、この10年で彷徨った東南アジアの国はこれで踏みしめたわけで有ります。

カンボジア・ラオス・タイ・ミャンマー・マレーシア・シンガポール・ベトナム・インドネシア・・・それらの国を行きつ戻りつして、路地裏の犬の糞など踏みしめて来たわけであります。

各国の路地裏の怪しいネオンは宛ら誘蛾灯で有りまして、自分の嗅覚はそれを敏感に感じ取るわけで有ります。
そして、ある時は雨季でぬかるむ泥道を、そしてまたある時は風に舞う埃には犬の糞が紛れて飛ぶ赤土の路地を徘徊し、如何わしい雰囲気に酔いしれるので有りました。

書けば、そんな恐ろしいところまで行ったのか、と、知る人ぞ知るところへも徘徊したんですけれども、どう言うわけかまだ平気で生きてますし、下手な病いも得て居ないわけで有ります。

まっ、用心深いと言うよりも雰囲気が好きなんで実際には女に手を出すことはほとんど無いんで有ります。
ただ飲んで馬鹿話がしたい・・・それも場末の最下層の人たちと。

それって自分のどんな処から湧き出す思いなのか、よく解らないんであります。
ですが、東南アジアの貧困の街には自分を解放して癒してくれる何かがあるのは間違いないんであります。

ひょっとすると自分はそう言う血筋なのか、とさえ疑うんですが、父と母ともに普通の日本人なのでそーでも無さそうなんですが・・・あれか、子供の頃に川から流れてきたのを拾ったと言うのはホントーなのかも。

と、まぁ、取り留めのないことをダラダラと綴っているのは暇だからであります。
すでにバーは開いているので行けばNovieもいるんでしょうけど、なんだか今日は気が重いと言いますか、ゲームオーバーの心境であります。

ナンちゃって・・・そろそろシャワーでも浴びようかな、と。





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Novieのこと

2018-11-21 11:52:37 | 日記的雑談
自分はMovieのことはほとんど何も知らない。
知っていることといえば、4歳になる息子がいて、父親は韓国人。
今も少しは送金があるらしいが、深い仲では無い、と自分では言っている。
生まれはビサヤ地方のマスバテ、で、海辺にせり出した家に住んでいるらしい。
父親しかいなくて、その父は10年前にダイナマイト漁で片腕を失ったことなどを聞いた。

韓国人との経緯は聞けば多分嫌な思いをするので深くは聞いていない。
しかし、彼女の生活環境を推測すると、たぶん、スクオッターなのだと思う。

スクオッターは国の土地に勝手に掘っ建て小屋を建てて住み着いてしまった違法な住人である。

そして、ずいぶん昔から禁止になってフィリピンの大部分の田舎からも消えたはずのダイナマイト漁を10年前にやっていたと言うのは、恐らく警察もいないほどの僻地である可能性が高い。

そう言う環境で育つた娘はどこか荒んでいる。
街に出で来て環境が変わっても、その匂いというのか、表情や仕草にその影は付いて回る。

サマール島の田舎、マスバテ州のさらに田舎から出で来た娘の何となく潮くさい雰囲気が気に入って、自分はNovieに興味を持った。


と、一応のエピローグと思しきものを入れて、さて、本題に突入であります。

昨日、午後3時に出勤するのでその時刻に来いと言われたので行ってた訳であります。

午後3時・・・微妙な時刻であります。

私は既に4泊分の宿代を支払ってあるホテルを出て次のホテルへ移動するべくトライク(バイクに側車を付けたもの)に乗って引っ越しをした訳であります。

チェックインできるのは午後2時から・・・まっ、フィリピンタイムですから前後30分はOKと踏んで一時半前にホテルに着いた訳です。
で、何の問題もなくさっさとチェックインしまして遅い昼飯を食べにフィールズ通りに歩いて出た訳であります・・・その距離、推定で1035メートルは熱帯のこの地では歩くのに微妙であります。
が、まっ、健康のためなら死んでも良いタイプの私は足腰のために歩くことにして、一昨日ハンバーガーが美味かった店に足を運びトーストサンドなるものを食したのであります。

へっ? 前置きが長いですか? Novieとの組んず解れつを早く書け、ですか?
まっ、徐々に行きますので・・・。

で、頃合いを見計らってバーに向かって歩いた訳です。

で、ほぼ3時ごろ、律儀な日本人はお約束の時刻に少しも違わず到着・・・しかし、Novieの姿は無いのであります。

テーブルに着くと、何を飲む、と問われ、サンミゲールライトと答え、Novieは、と同僚に尋ねた訳です。

ワラ Novie, ラカウ と・・・。

私がビサヤ語を話せるというのを知っていたウェイトレスがそう答えたのでありますが、所在は分からず、来るのか来ないのかも分からずでありました。

ふぅ~・・・やられたかな、と思いつつ、まっ、フィリピンタイムだな、とビールを舐めて待つことにした訳であります。

およそ30分後、Novieは現れました。
昨日までの長い髪を短くして、少し金色系に染めていました。

自分は少し驚くとともに、ガッカリしました・・・長い黒髪が好きなのにぃ~、と。

で、Novieがこの髪どぉ~ぉと尋ねるので、とても似合っている、と心にも無い言葉を吐いた訳です。
いや、ここで正直に言ってご機嫌を損ねるのは得策では無い訳でして・・・でも、俺は何度かその長い髪が似合っている、と褒めたはずなのに、と残念感が漂ったのであります。

Novie イノム カ? (なんか飲む?)と声をかけましたが、どーも昨夜のテンションとは大違いで少し沈んでいるのであります。

で、ラムコークなんぞを注文したので一口飲んでみると、やっぱしアルコールは入っていなくただのコーラだった訳です。

酒が入らないとテンションが上がらないタイプなのは先刻承知・・・軽く飲んで欲しいんだけどなぁ~と、こっちの思惑を全部はぐらかす勢いのNovieでありました。

Novieはこの手の仕事をして長いのでありましょう。
今は踊り子をやめてウェイトレス・・・まっ、早い話が雑用係であります。
なので客慣れは相当しているわけで、日本人のジジイなど掌でコロコロなのだろうと思うのであります。

が、こっちだって伊達にフィリピン長いわけでも無く、Novieが海岸で砂遊びをしていた頃からバーで呑んでいるわけですから、これからが勝負であります。

さて、サンミゲールライトの小瓶を一本空ける頃、午後四時過ぎに「Novie アット ナ」(そろそろ行こうよ)と水を向けると「アサ タ」(どこへ)と言うではありませんか。

昨夜SMショッピングモールに行きたいと言ったのはお前じゃ無いかと言いたいのを我慢してSM、と言ったのであります。

まっ、その後はさしたる話も無く、彼女が着替えて・・・と、言っても少し草臥れたTシャツから着替えただけなんでありますが。

で、トライクに乗ってSMに行きました。
私は過去の経験からそれなりの覚悟はしていたんであります。
まず、無事では帰れず、それなりに財布の痛手は被るだろうと。

で、彼女に引きずられるままにあちこちと見て回ったんですが一向にこれ買ってとねだらないんであります。
いや、フィリピーナはこんなはずでは無いんだが、と、困惑しつつ、なんか買えば、とこっちから勧めてしまった次第であります。

ああ、ここまでを計算しているとしたら何て強かなんだろう、と少し怖くなってきたんでありますが、私とても日本男児・・・撤退は無いのであります。

で、いくつかのショップを見ては、良さげなものを身に当ててみるんですけれども、どれも気に入らない様子で買わないんであります。
こりゃぁ、相当難しい女かもしれない、とこっちが身構えちまう始末であります。

しかし、とあるショップで自分が99ペソのビーサン・・・プールの仕事で履くのに良さげと思って買うと、そこでピンクの帽子を選んだのであります・・・それは390ペソ、日本円で800円でありました。

で、その後自分の土産を買いにギフトコーナーに行ったわけです。
そこにはクリスマスシーズンに突入しているフィリピンらしく、子供用のギフトとてんこ盛りでありました。

私はNovieに ウンサ グスト イモン バタ クリスマスギフトと問うたのですが(あなたの子供のクリスマスギフトは何が良いですか)無言で微笑むだけでありました。

そこには、立ち入って欲しく無いという意志を感じたのでありますが、こんなフィリピーナは初めてであります。
男がこんなことを言ったらここを先途とばかりにあれもこれもと買い漁るはずなのに・・・金に困っていないということか。

そー・・・昨夜、酔っ払ったNovieは、私はボンバイなのと言いつつウェイトレスの上着のポケットから千ペソ札の混じった札を取り出して見せたのでありました。
ボンバイとは、フィリピンに蔓延っているインド人系の金貸しでありまして、その存在は容赦ない取り立てで悪名を挙げているのであります。

まっ、冗談だろうと聞き流していましたが、なんだか怪しい雰囲気ばかりが続くわけでして、百戦錬磨を自認し、嘗てとあるフィリピンの街で、一番すけべな日本人と称された自分の自信が揺らぐのでありました。

店を出るなりタグを引き千切ってピンクの帽子を冠ったNovieは少し機嫌を良くしたのか、突然腕を組んできたのでありました。

自分の荷物を持っていない左の腕に軽く手を添えていたんですけれども、やがてその腕は絡みつくようになり、自然とNovieの、あまり大きく無い胸に当たるのでありました。

Novieが見たいTシャツが有ると言うので行ってみたんですけれども、やはり気に入ったものがないようで買わず仕舞いでありました。

ずいぶん歩き回って少し疲れたのでなんか飲むか、食べようか、と言うと、コリアンレストランに行きたいと言いました・・・ああ、前の男との暮らしでコリアンフードに馴染んだんだな、と、微かなジェラシーを感じつつ、Novieが行きたいならどこでも良いと行ってコリアンレストランに入ったのでありました。

いや、ここでは違った驚きが勃発でありました。
買い物ではかなり控えめだった彼女が次から次とオーダーするのであります。
自分は先ほどトーストサンドを食べていたので腹は減っていなかったわけです。
なのでこんなに頼んで食べきれるのか、無駄に頼んで食べ残す様を描いたのであります。

はじめ、しゃぶしゃぶを頼もうとしていたので、それってコリアンフードじゃ無くてジャパニーズだぞと言うと驚いた表情で、んじゃぁ豚の焼肉にする、と切り替えたのであります。
でできた豚肉は冷凍の三枚肉でして、自分は食べる前に想像してしまい、箸がでませんでした。

そして、Novieは韓国の平たい箸を器用に使ってキムチを食べたのであります。
ここでも私は I feel jealousy でありました。

そっかぁ~日本人の俺と一緒にいてもそこまで韓国色を出すのか、と、少し憤りさえ感じましたが、まだここは自分の形勢が不利なのでぐっと心を抑え沈めたのでありました。

斯くなる上は物量作戦で日本色に染め上げたいところではありますが、敵が投下した弾薬は計り知れないわけで、我が軍は未だ斥候が迷っている始末・・・戦さの本番はこれからなのであります。

で、私は食べたくもないトーフチゲを頼みましたが、これが意外と本格的な味ですし、トーフも昔のフィリピンの似て非なるそれとは違って本物なので、思わず知らず全部食ってしまったのでありました。

いや、ここでやっとNovieがビールを飲んでくれたわけであります。

Novieは割とすぐに酔っ払うんであります。
そして、酔うとはしゃぐし、話も弾むんであります。
まっ、たった一本のサンミゲールライトではその効き目も薄いんですけれども、腹も膨れたからか、彼女の顔に少し笑みが見えたのでありました。

彼女は韓国海苔巻きとお代わりしたキムチと豚の焼肉をさらりと平らげ、ブソック カーヨと言って席を立ちました。

お勘定は心配したほどでは無く1100ペソ、2300円ほどでありました。

さて、パオリ ナ カ? (帰ろうか)と問うと、アットナ(行こう)と言うのでトライクを拾ったわけであります。

で、私が黙っているとホテルのある地区を告げたわけです。
まっ、彼女のバーはトライクの戻り道に当たるのでそこで降りると言うのかと思っていましたが、トライクはホテルの前まで来てしまったのであります。

あいやぁ~・・・これは、この展開は望んではいたかもしれないが、予定外なわけであります。

まっ、しかし、私とても男の端くれ・・・もとい、元は男の端くれ、そう言うことなら応じないわけにはいかないと、褌の紐を締めたのでありました。

で、ホテルのロビーに入った時でありました。
Novieが私の腕にしがみつくようにして着いてくるのであります。
これ、自分は嘗て何度か経験しているシュチエーションでして、彼女が予想外のホテルの雰囲気に緊張している証しなのであります。

大昔のことでありましたが、当時セブでも最高杞憂のホテルに泊まっていた時にガールフレンドを食事に誘ったわけです。
が、どこへ行っても何をしても生意気だった娘が錦地ようして手に汗を握って、ホテルでは借りてきた猫になったことを思い出したのであります。

しかし、そこまで大袈裟なホテルではないのでNovieはエレベーターの中で二人になると緊張が解けたのか、また無口な無愛想に戻ったのでありました。

部屋に入った二人は所在無く、Novieはテレビのリモコンをやたら忙しく切り替え、私は買ってきた土産のチョコレートの袋を開き弄んでいたのでありました。

やがて私は意を決してNovieが足を投げ出してテレビを見ているベッドの傍に寝転び、一緒にテレビを見たのでありましたが、この歳になってそー言うことは期待しても栓無き事、ただ意味もなくクロコダイルがハンターに仕留められる画面を眺めるしかなかったのであります。

Novieはと言うと、食べ過ぎで膨らんだ腹を無意識にさすりながらテレビに目を向け無言でありました。

この状況は堪らんなぁ~と思って、最上階のプールバーで一杯やらないか、と誘ったのであります。

するとNovieは、カーポイ ナ コ(疲れた)と言い、シャワーを浴びで少し休んで良いかと問うのでありました。

私に異存はないのでありますが、バスルームはスケスケのガラス張り・・・それは、何を意味するのか、また、その後の展開はやはりそっちの方向にしか転がらないのではないか、と、思わざるを得ないのでありました。

私は嘗て、フィリピンとある街で、街一番のすけべな日本人という称号を戴いていたんではありますが、しかし、もーこの歳であります。
分別盛りと言うには遅すぎる年齢・・・それが年端もいかない娘と一緒にホテルの一室で、しかも彼女はシャワーを浴びると言うではありませんか。
ワット キャン アイ ドゥ・・・でありますが、どこかに邪まな期待に胸を時めかせ、微かではありますが股間にも反応が無いと言えば嘘になるのでありました。

さて、バスルームのスケスケなんですが、上の方にはブラインドが折りたたまれてあるわけです・・・と、言うことは・・・彼女は何と言うことも無く電動のブラインドを下ろして目隠しをしてしまったのであります・・・少しではありましたが邪まな期待をしていた私は、大きくガッカリしたのは言うまでも無いのであります。

で、バスタオルを巻いて出てきた彼女はさっさとベッドに潜り込んで目を閉じでしまったのであります。

そして、イカウ マリゴ ナラン(シャワー浴びたら)と彼女が言うので自分も汗を流しに風呂場に行った次第であります。

そして、髭を剃り、頭も洗い、バスルームから出ると、Novieは既に服を着てベッドに寝ていたのであります。

そっかぁ~・・・そう言うことだよな、やっぱし。

やるなぁ~・・・その手で来たのか、と、私は嘗てこの手の状況を数多経験していましたが、風呂に入っている好きに身支度を整えられたのは初めてでありました。

どっちかと言えば風呂に入るのは、戦さが始まるサインでもあったわけでして、この度はNovieが一枚上手であったと褒め称えるしか無い訳であります。

敗軍の将となってしまった感の強い状況で私は・・・イカウ トログ カ(寝ちゃうの?)と、問いつつ、せめて、最上階の雰囲気の良いバーで一杯付き合ってくれることを期待した訳であります。

するとNovieは驚く返事をしてきた訳です・・・アコ ゴトム ナ(私、お腹が空いた)でありました。

お前ねぇ、さっきあんだけ腹を膨らませていたのにもー腹減ったの?と、驚きよりも呆れてしまったのが偽らざる心境でありました。

それは、戦闘状態に入るか否かの緊張を瓦解させるのに十分な威力を持った言葉でありまして、フィリピーナに腹が減ったと言われてはどーしようも無いのであります。

腹の減ったフィリピーナほど恐ろしく、手のつけられないものはこの世にそれほど多くは無いのであります。

私は、OK、カオン ナラン(OK食べよう)と言いつつ、大いなる未練とともに短パンとティーシャツを着たのでありました。

プロローグ・・・。

最上階のプールサイドのレストランは二人きりでありました。

そこでビールを頼み、フレンチフライとチキンウィングをツマミに静かな夜を楽しんだのでありました。

冒頭で書いた彼女の家の環境や生い立ちなどはこの時に聞いたものでありました。

で、夜風が冷たくなりプールサイドにいるのが辛くなった頃、彼女が部屋に戻ろうと誘った訳です。

ああ、バッグをとって帰るんだな、と思った自分は・・・パオリ ナ カ?と言って勘定を済ませエレベーターに乗った訳です。

すると、彼女が背伸びをして軽くキスをし、サラマット・・・ダグハン サラマット と言ったのであります。

ありがとう、とてもありがとう・・・と、ビサヤ語で言ったのであります。

そして、部屋に戻るとしっかりと抱きつき、アコ ほにゃららららぁ~と言うのでありました。

それ、先に言ってヨォ~・・・そんな心配してたから無口だったノォ~、と言うことで、彼女は本日から旗日だったので心配していたんですトォ。

で、ネクストタイム ナラン・・・と言いつつ、カヌサ カ バリック?(いつ戻ってくる?)と、言い、バレンタイ ナランと言うのでありました。

ここで私はすっかり自分を取り戻し、そんな先のことはわからないよ、と言いたかったんですが、無責任にもプロミス ほにゃららら~なら飛んでくるよ、と、言ってしまった訳です。

と、言うことで、私とNovieは危うくも可笑しな関係のまま、その夜の幕をとしだのでありました。

私は何故だかもう一度熱いシャワーを浴びたくなり、そしてNovieが居なくなって間の抜けた部屋で一人、サンミゲール ピルスンを一本ルームサービスで届けてもらい飲んだのでありました。












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