まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

まちキネがベルカBELCA賞を受賞しました

2012-02-13 17:52:12 | 民間建築 Private Sector Building

まちキネがBELCA賞を受賞しました。

   

書類選考に残り、昨年秋には内田祥哉先生(40年前に建築構法の授業に出させていただきました)他そうそうたる先生方の現地審査を頂きました。結果発表を待ち焦がれていましたが、ようやく2月10日に発表となりました。

    

BELCA賞には古い建物を適切に維持管理した建物に与えられる「ロングライフ部門」と、改修して再生させた建物を対象とした「ベストリフォーム」部門がありますが、まちキネは「ベストリフォーム」ということになります。

    

早稲田大学2号館やプリンス箱根本館、南海ターミナルビルなど歴史ある有名大型施設に交じり、地元の工務店、大工さんの作った平屋の木造建築であるまちキネが並んでいるのは私たちにとっては誇らしいことです。http://www.belca.or.jp/belca4.htm

   

この場所こそ中心部再生の拠点となると熱く語ってくれた地元経済界のリーダーとともに、初めてまだ操業中の工場を訪れた頃のことを思い出します。その思いは株式会社まちづくり鶴岡の小林社長や菅部長たちが引き継いでおられます。

    

その意をうけ、私たちも庄内の風土で生まれ、松文産業さんや関係のみなさんに80年間も使い込まれてきた地元材による木造架構システムを目に見える形で継承し、それを生かしたどこにもない映画館を作ろうということでやってきました。

    

また短い工期の中、当初不可能と思われた工期内竣工を成し遂げた工事JV(石川所長)の皆さんの超人的な仕事ぶりも今となっては懐かしく思い出されます。

    

次に副委員長鎌田先生の講評を転載させていただきます(公益法人ロングライフビル推進協会HPより)。

    

     

   

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「鶴岡まちなかキネマ」(1936竣工、2010年改修)は、鶴岡中心地で昭和初期から続いていた絹織物工場の移転を契機として、その跡地利用に、鶴岡商工会議所加盟企業の出資による民間資本のまちづくり会社が事業主体と名って取り組んだ、中心市街地活性化プロジェクトによる改修物件である。

トップライトからの明かりを得て、絹織物工場の記憶を呼び起こさせる木造トラスが美しく表現されたエントランスホール、梁下高さを確保するために地盤を掘り下げて階段状スラブを新設し、内装・椅子などの工夫により温もりと雰囲気のある空間を創出している40~165席の4つのシネマなどが評価されたが、これらは一次審査資料からは十分読み取れず、現地審査参加委員すべてが、書類による審査の限界を知らされた物件である。

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写真や図面で十分お伝えできなかったことを反省しないとはいけないのですが、そこではどうしても伝えきれない、時間が生み出してきたものと対峙するデザインが生み出す空間の質を感じ取っていただき評価いただいたことを大変うれしく思います。

   

また表彰建物の紹介文では「・・・織物の縦糸横糸を連想する木製ルーバーの壁面と、絹の柔らかさを思わせるきわめてすわり心地の良いオリジナルデザインの客席により、温もりと雰囲気のある空間に仕上がっている・・・・」という評価も頂きました。設計者としてこれほど的確にまた細やかな感覚で見ていただいたことに頭が下がる思いです。

     

これからもまちキネが多くの人に見守られて、まちの賑わいの中にあり続けることを願うものです。皆様有難うございました。