事務所を文京区千石から調布市多摩川に移して、いろんなことが変わりましたが、その一つが本の扱い。広さが四分の一くらいになったので、なるべく本は増やさないようにしています。図書館がすぐ近くにあるので、気軽に利用しています。買わなくなったのですが、読む量は増えています。
磯崎さんの「語りなおし日本建築史」、大変刺激的な本です。建築=構築する力ととらえます。「非自然・人工の存在を構築しようとする意志といとなみ」=建築ということです。私には、大変しっくりきます。
ただ、本日書きたかったのは、磯崎さんの論のすばらしさではなく、この本の写真のすばらしさです。磯崎さんは構築する意思を「水平の構築」と「垂直の構築」に分けて論を進めますが、水平の構築の位置例として満を持して最後に代々木体育館を登場させます。
説明の写真が見事です。新潮社写真部の広瀬達郎という写真家です。面と面の接するラインの美しい曲線が、立体的に描き出されています。それは外部写真でも、内部写真でも同じです。汚いスケッチでは伝わらないでしょうが、面の切り替わりの端部、エッジラインの表現が実にうまいと思いました。
この写真によって、改めてこの空間をインテグレートして生み出した丹下先生の「構築する意思」のすごさを思い知ることになりました。今まで一体何を見ていたんだろうか・・・この年になっていつも思うことです。
高谷時彦
建築・都市デザイン
Tokihiko Takatani
architecture/urban design