まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

集落活動センターなめかわ「なめかわの郷」が先月オープンしました

2021-11-22 10:02:21 | 公共建築 Public architecture

高知県本山町上下関地区集落活動センターなめかわ「なめかわの郷」が先月、10月3日にオープンしました。

(※印の写真は集落活動センターなめかわのIさん撮影、※※印は施工を担当してくれたMさんの撮影です。きれいな写真を有難うございます)

<吉野川下流側からの外観※>

本山町は高知県嶺北地方に位置する山あいの町です。人口は約4000人。高知市から北へ車で1時間弱ですが、四国のど真ん中にあるため、徳島、愛媛、香川の各県へのアクセスが良い場所です。私のように香川育ちの人間からすると、四国の水がめである早明浦ダムの近くということで親しみを感じる場所です。

集落活動センターは地域住民や地域外からの人材が一体となって地域活動に取り組むための拠点で、高知県内に60余り設置されています。「なめかわの郷」の中心施設は本格的な厨房がついた多目的ホールですが、そのホールが、会議研修などのレンタルスペース、コワーキングスペースそして週末カフェとして使われます(ホームページを参照:https://www.at-namekawa.com/namekawanosato/)

敷地は東西に流れる吉野川に向かう南斜面、美しい棚田の一区画です。

<吉野川上流側からの外観※※>

<北側、下の棚田から望む※※>

多目的ホールです。木とスティールで、軽やかなトラスを組みました。北の吉野川方面に大きく開口をとっています。

<多目的ホール※>

厨房も本格的です。カウンターは栗の幅接ぎ板、共芯合板の木口でルーバー状の縦じまをつくっています。天井のルーバーのデザインと呼応しています。

 

下の写真のように、窓際には地元の大工さんの手作りの家具が並びます。仕事スペースとして、快適に使えそうです。

もちろん食事にも最適です。

<窓際を望む※>

ここからは、少しだけ過去を振り返ります。

なめかわの郷はプロポーザルで設計の機会をいただきました。

最初のスタディ。まずは屋根から発想しました。

とにかく、吉野川への南斜面に突き出す美しい屋根をつくりたいと思っていました。屋根を浮かび上がらせるために、あるいは屋根との動的なバランスの中で壁などの建築的要素の配置も決めたように思います。模型の向こうには今となっては懐かしい、大学院研究室のドアが見えています。

 

 

少しずつ整理して、独立的に存在する屋根、それに覆われた大黒柱を持つホール、そしてそこで展開される自由な住民活動・・・というコンセプトを固めてきました。

コストのこともあり、相当のものをそぎ落としてきました。下の写真はコストダウンのためには、片持ち屋根を小さくした方が部材の数量が落ちるのではないかということで、屋根を柱で支える案です。

下の模型もそうですが、最初のワイルドなイメージは全くなくなっています。とくに屋根を支える柱は余計ですネ。結果的には何とか柱はなくしました。

150㎡あまりの小さな建物ですが、やはり、多くの時間をかけてスタディを重ねることになりました。発注者である本山町や、集落の方々、集落活動センターなめかわの方々、施工してくださった藤川工務店の皆様、本当にお手数をおかけしました。多くの人たちに長く、楽しく、使ってもらえる施設になることを陰ながらお祈りしています。

 

高谷時彦

設計計画高谷時彦事務所

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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