アーティスティックディレクターとしてご活躍の清水敏男さんのご厚意で、「アニッシュカプーアin松川ボックス」の展覧会にご招待いただきました。
アニッシュカプーアというとシカゴで見た巨大なクラウドゲート(下の写真)を思い出します。日本でもよく公共空間に「環境彫刻」が置かれていますが、これはむしろ「環境体験彫刻」とでも呼ぶべきもので、人を包み込む環境との応答体験が味わえるエキサイティングな彫刻でした。こういうものであれば、日本の貧しい「公共空間のデザインの質」に強い刺激を与えてくれると思います。
ということはさておき・・・・
松川ボックスも刺激に満ちた体験となりました。2層分の高さを持つコンクリートのボックスの中に木造グリッドの構造体がはめ込まれていました。
このシンプルな空間構成の中に、小さな心地よい居場所と視線が仕掛けられているだけでなく、宮脇檀さんのセンスに満ちた、素材、色、ディテールがあふれているわけです。
恥ずかしながら、宮脇さんの住宅は初めての体験でしたが、実に細やかな仕掛けがあることにも驚きました。個室と、共用部(2層の吹き抜け)との間仕切りです。下の写真のように藍色(芹沢圭介さんの作品の色だそうです)の壁と同色のふすま(枠のない太鼓張りです)があります。すごいと思ったのはそのふすまの戸当たり部のおさまりです。
分かりにくいので、確認のためにスケッチしてみました。柱梁の構造体を見せる真壁的なデザインですが、ここの柱だけはふすま1本分の幅を残して藍色の壁で仕上げられています。ふすまがしまった時に、「邪魔な枠(柱)」を見えなくするためでしょう。参りました。
今頃気付くのもお粗末ですが、宮脇さんの住宅には、宮脇センスがぎっしり詰め込まれているんですね。ほかの建物もぜひ見ていきたいものです。
高谷時彦
建築・都市デザイン
Tokihiko TAKATANI
architecture/urban design
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