日本の心・さいき

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笑ってよ、カバの歯医者さん

2006-09-27 05:51:13 | Weblog
 動物村に、カバの歯医者さんがいました。待合室では、今日も、治療を受ける沢山の動物達が、ヒソヒソ話をしています。
「全然、あの先生、笑わないね」
「恐そうな目付き、してるね」
「道で会っても、笑わないよ」
「おっかないなー、もう、帰ろうか」
 しかし、この村には、歯医者さんは、このカバの歯医者しかいないのです。交通の便利も悪く、皆、仕方なく、ここに来るしかないのです。
 実は、このカバの歯医者さん、長い事、歯の痛みで、苦しんでいたのです。歯医者さんは、自分一人だけの為、休む暇なく、ずっと我慢してきました。いろんな事を試みました。逆立ちしたり、痛みがとれると言う薬を飲んだり、温めたり、口を動かさなかったり、しかし、どの方法を取っても、日増しに悪くなるばかりでした。
 とうとう、我慢できなくなって、意を決しました。「よし、隣の村に行って、歯の治療をしてこよう」と。そう思うと、何年か振りに、休診の張り紙を入り口に貼って、隣村のワニの歯医者さんの所に何時間も掛けて行きました。
 すると、どうでしょう。そのワニの歯医者さんの待合室で、沢山の動物達が、話していました。
「ここの先生、恐いってなあ」
「一言も、説明がないらしいよ」
「笑った事、誰も、見たことないなあ」
「どうしようかなあ、もう、帰ろうかなあ」
 カバの歯医者さん、恐くなりましたが、しかし、この村も、歯医者さんは、このワニの歯医者さんだけです。後は、数日間掛けて、舟で大きな町に行くしかありません。
 「ここまでせっかく来たのだから、治してもらおう」、そう思ったカバの歯医者さんは、そこで、長い順番を待ちました。
 会うと、ほんとに、ワニの歯医者産、とても恐そうでした。
 実は、このワニの歯医者さん、永い事、口が開けられないくらいに歯が痛くて、我慢していたのです。
 お互いに、歯医者さん同士で、歯を見ました。お互いに、「どうしてこうなるまでほおっていたの」と驚いて言いました。そして、お互いに治療しました。
 
 それから、カバの歯医さんお患者さんも、ワニの歯医者さんの患者さんも、小言を言う人がいなくなりました。
 これ、歯医者さんの待合室にあった絵本の内容です。題は、「わらって、カバのはいしゃさん」で、さくらともこ作でした。

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