何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

憧れ、常に念じる山

2016-07-28 00:03:05 | 自然
まさか、「幸せはまた巡る 神降地」を書いてたった二日で、計画が没になるとは思いもしなかった。

「氷壁」(井上靖)で穂高に憧れたときは、まだ私のなかで、山は異次元の世界だった。
3000メートル級の山では、ナイロンザイルは切れ、いずれはデュブラ「モシカアル日」を吟じなければならない場所に思えたからだ。
しかし、年に一度は魂の洗濯に訪れる上高地が、あまりにも賑やかになったため、少しだけ奥へ少しだけ高い所へと歩いているうちに、岳沢や涸沢へ辿り着き、前穂以外のてっぺんには、とりあえず立っている。ここで、とりあえずとしか書けないのは、「氷壁」を読み、あれほど一目見たいと願った滝谷を見損なっているからだ。初3000メートルが北穂の私は、とにかく登頂できたことに興奮すると同時に、下山できるのだろうかという不安に苛まれながら・・・山小屋とは思えないほど充実している北穂小屋のランチメニューに目移りしているうちに、滝谷を見下ろすことを忘れてしまったのだ。

滝谷を見る為にあの山に再度挑戦したいという想いは今も強く持っているが、それと同じくらい憧れ続けている山に、常念岳がある。
梓川右岸から望む常念岳


「日本百名山」(深田久弥)で有名な、常念岳。
皇太子様が登られ素晴らしい写真を撮っておられることで有名な、常念岳。
槍や穂高や蝶が岳から、いつも憧憬の念をこめて金字塔を拝んできた、常念岳。
何年、憧れ続けてきたことか。
蝶が岳から望む常念岳

そして今年、満を持して登る予定だった、常念岳。
7月31日一の沢から入り、翌日てっぺんに立つ予定だった、常念岳。

家人が「腰が痛い」と訴えたのが六日前、それが昨日になって腰付近に水泡ができはじめた、帯状疱疹だった。
昨年末、歯性感染症を患い抵抗力が低下していたことも、遠因として、あるのだろうとのことだった。

すべての計画が、水泡の如く消え去ってしまった。

この15年、この山域の本を読みつくしていたため、残るは推理小説とばかりに、最近「一ノ俣殺人渓谷」「吉野山・常念岳殺人回廊」「蝶ヶ岳殺人事件」(梓林太郎)を読んでいたのがイケなかったのだろうか、それとも例の本がやはり縁起が悪かったのだろうか?
このまま登っていれば、「〇〇殺人事件」という帳場が立つ事態に遭遇したのだろうか、それとも「モシカアル日」になりかねないところを、ワンコが警告して救ってくれたのだろうか(歯性感染症は、ワンコと関わりがあるゆえに)

これほど憧れ、登りたいと常に念じてきたにもかかわらず、どうしても頂に立てない、常念岳。
槍ヶ岳から望む常念岳



せめてWikipediaから頂戴した写真を眺めて心を鎮めたいと思っている、しかし、それは逆効果かもしれないと気付いてもいる。
写真出展 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%B8%E5%BF%B5%E5%B2%B3

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