「連作 命と言の葉と、応援と」より
難解でもなければ長編でもないにもかかわらず、どうにも読み進めにくい本を読んだいた。
原田マハ氏の本には、「楽園のカンヴァス」や「暗幕のゲルニカ」などキュレーターであることを生かした素晴らしい作品があるだけでなく、愛犬への鎮魂の気持ちを込めた「星守る犬」を始め様々なジャンルの本があり、それぞれ有難く読むことが多いのだが、何冊かに一冊、どうにも感想が書き難いものに出会ってしまう。
今回も、そういった本の一冊かと思いながら読んでいた。
「ロマンシエ」(原田マハ)
主人公・遠明寺美智之輔(おんみょうじ みちのすけ)は、祖父が与党幹事長 父が党役員を務めるという政治一家の遠明寺家の一人息子で、将来政治家になることを期待され、与党幹事長の娘との縁談も持ち上がっているのだが、彼には幼い頃から両親に言えない秘密があった。
それは、彼が幼い頃に好きだったのは、お姫様の絵を描くことであり、お人形遊びであり、フリルいっぱいのミニスカートであり、長じて恋心を抱いたのが男子だったということだ。
そんな彼が、同じ美大の男子生徒への思いを断ち切ると同時に 父が勧める見合いを断るために、憧れのパリに留学する、という場面から始まる物語。
パリでは、美智之輔自身も愛読者であった世界的人気作家 羽生光晴(はぶみはる・通称・ハルさん)に出会った縁で「idem」というリトグラフ工房に出入りするようになり、美智之輔の美術の幅が広がるという面白さもあるし、絵画の美智之輔と小説のハルさんを通じ、ジャンルは違えど創造することの難しさと喜びを感じさせる(軽めの)芸術論もあるので、そこに美智之輔のLGBTに起因する悩みがそこはかとなく織り込まれていれば、深みのある読み物になるだろうに、数行に一回という割合でコメディタッチで美智之輔の妄想が描かれるだけでなく、下手なスパイ・アクションドラマのような場面まで出てくるので、読み進めるのが苦痛になってしまったのだ。
だが、諦めずに読んでいくと、最後の最後で心をうつ言葉に出会えたのだ。
『君が叫んだその場所こそが、ほんとの世界の真ん中なのだ』(『 』「ロマンシエ」より)
これは、大学時代から憧れていた男子生徒と決別しなければならない苦しみを叫んだ美智之輔へ、ハルさんが掛けた言葉だ。
美智之輔『ごまかすことが、自分にとっては・・・生きていく上で、どうしても必要なことだった』『どうにか世界の端っこにすがりついて、ごまかし、ごまかし生き延びてきた』という。
『どんなに頑張ったって、結局、誰にも理解してもらえないし、自分を殺して生きていくしかないんだなって・・・世界の末端の日の当たらないところで、生きていくしかないんじゃやないかって。そんな思いが、ずうっと胸の深いところにあるんです。太陽をいっぱに浴びて、まっとうな世界の真ん中でのびのび生きている~略~人の隣の立ち位置は、どうあがいても手に入れられないんだって・・・最初から諦めてたんです』
この美智之輔の慟哭に、ハルさんは「自由になりなよ」と言う。
「(アートを選んだ理由は)自由・・・に、なれるから」という美智之輔に「自由になりなよ、自分に素直に、自分の気持ちを自由にすること、叫びたいなら叫ぶこと」と言う。
そして、こう語りかける。
『君が生きている場所、そこは、決して世界の端っこなんかじゃない。
君が叫んだその場所こそが、ほんとの世界の真ん中なのだ。』

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%88%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%95
コメディタッチの妄想恋愛と、ドタバタ・スパイアクションもどきの展開で、読み進めるのが苦痛だった本書だが、最後の最後で「今読むことができて良かった」と思わせた理由や、軽妙というよりは軽薄だと思われた筆致に理由があったと最後の一行で分かった面白味などは、又つづく
難解でもなければ長編でもないにもかかわらず、どうにも読み進めにくい本を読んだいた。
原田マハ氏の本には、「楽園のカンヴァス」や「暗幕のゲルニカ」などキュレーターであることを生かした素晴らしい作品があるだけでなく、愛犬への鎮魂の気持ちを込めた「星守る犬」を始め様々なジャンルの本があり、それぞれ有難く読むことが多いのだが、何冊かに一冊、どうにも感想が書き難いものに出会ってしまう。
今回も、そういった本の一冊かと思いながら読んでいた。
「ロマンシエ」(原田マハ)
主人公・遠明寺美智之輔(おんみょうじ みちのすけ)は、祖父が与党幹事長 父が党役員を務めるという政治一家の遠明寺家の一人息子で、将来政治家になることを期待され、与党幹事長の娘との縁談も持ち上がっているのだが、彼には幼い頃から両親に言えない秘密があった。
それは、彼が幼い頃に好きだったのは、お姫様の絵を描くことであり、お人形遊びであり、フリルいっぱいのミニスカートであり、長じて恋心を抱いたのが男子だったということだ。
そんな彼が、同じ美大の男子生徒への思いを断ち切ると同時に 父が勧める見合いを断るために、憧れのパリに留学する、という場面から始まる物語。
パリでは、美智之輔自身も愛読者であった世界的人気作家 羽生光晴(はぶみはる・通称・ハルさん)に出会った縁で「idem」というリトグラフ工房に出入りするようになり、美智之輔の美術の幅が広がるという面白さもあるし、絵画の美智之輔と小説のハルさんを通じ、ジャンルは違えど創造することの難しさと喜びを感じさせる(軽めの)芸術論もあるので、そこに美智之輔のLGBTに起因する悩みがそこはかとなく織り込まれていれば、深みのある読み物になるだろうに、数行に一回という割合でコメディタッチで美智之輔の妄想が描かれるだけでなく、下手なスパイ・アクションドラマのような場面まで出てくるので、読み進めるのが苦痛になってしまったのだ。
だが、諦めずに読んでいくと、最後の最後で心をうつ言葉に出会えたのだ。
『君が叫んだその場所こそが、ほんとの世界の真ん中なのだ』(『 』「ロマンシエ」より)
これは、大学時代から憧れていた男子生徒と決別しなければならない苦しみを叫んだ美智之輔へ、ハルさんが掛けた言葉だ。
美智之輔『ごまかすことが、自分にとっては・・・生きていく上で、どうしても必要なことだった』『どうにか世界の端っこにすがりついて、ごまかし、ごまかし生き延びてきた』という。
『どんなに頑張ったって、結局、誰にも理解してもらえないし、自分を殺して生きていくしかないんだなって・・・世界の末端の日の当たらないところで、生きていくしかないんじゃやないかって。そんな思いが、ずうっと胸の深いところにあるんです。太陽をいっぱに浴びて、まっとうな世界の真ん中でのびのび生きている~略~人の隣の立ち位置は、どうあがいても手に入れられないんだって・・・最初から諦めてたんです』
この美智之輔の慟哭に、ハルさんは「自由になりなよ」と言う。
「(アートを選んだ理由は)自由・・・に、なれるから」という美智之輔に「自由になりなよ、自分に素直に、自分の気持ちを自由にすること、叫びたいなら叫ぶこと」と言う。
そして、こう語りかける。
『君が生きている場所、そこは、決して世界の端っこなんかじゃない。
君が叫んだその場所こそが、ほんとの世界の真ん中なのだ。』
美智之輔とハルさんにとって大切なリトグラフ

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%88%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%95
コメディタッチの妄想恋愛と、ドタバタ・スパイアクションもどきの展開で、読み進めるのが苦痛だった本書だが、最後の最後で「今読むことができて良かった」と思わせた理由や、軽妙というよりは軽薄だと思われた筆致に理由があったと最後の一行で分かった面白味などは、又つづく