何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

世代を越えて ①

2018-05-15 12:00:00 | ひとりごと
「那古野 なごや ではない①」「那古野 なごや でもよい②」「那古野 名古屋 がんばれ」より

入り口を入ってすぐの間 ※ の虎は、見る者を大いに威圧するが、ここは虎の間とも呼ばれた本丸御殿の玄関で、藩主に拝謁する者が控える場所であったそうだ。
藩主様が狐であったとは云わないが、拝謁を前にした家臣を縮み上がらせるのに、虎は大いに役立ったことだと思う。

さて、脅してばかりでは上に立つ者は務まらない。
次の間は、いきなり雅な雰囲気になる。

格式ばっていながらも、枝振りが柔らかで明るい松が、客人を迎えてくれる。


殿さまが、松やら美しい植物や鳥やらで威厳と雅を見せつけるという硬軟あわせもった力技で、家臣を圧倒した?ここは表書院で、正規の謁見に使用された場所だという。



更に進むと、絵柄はもっと くだけたものとなる。
人の肩越しでは、絵柄の細かいところまでは見ることはできず、まして説明書きなど読むことは出来なかったので、くだけた絵柄に変わったとしか感じなかったのだが、今調べてみると、それは庶民の生活を描いたものだという。

この くだけた絵が描かれた間は対面所といい、藩主とその身内が内々に宴会を催す場であったというが、貴人がわざわざ市井の様子を楽しむのは洋の東西を問わないのか、人工的に田舎の風景を作ったプチトリアノンを思い出させる。

本丸御殿は、フラッシュさえ焚かなければ基本 写真撮影はOKだったので、ヘタな何とかも数撃ちゃあたる!とばかりに撮ったはずだが、掲載できるようなものは、、、そんな事とは露知らず、カメラ片手に意気揚々と天守閣へ向かっている、つづく


追記
「入り口を入ってすぐの間 ま※」、に※をつけたのには理由がある。
知り合いが、どうにも最近の若者とは会話が噛み合わん、と嘆くのを聞いたことがある。
料亭だか旅館の大広間(和室)だかを借り切って、研修か何かの打ち上げの場を持った時のこと。
知人が新人君に、「とりあえず背広は長押に掛けておこうか」と言ったが、どうにも伝わったようにない。
知人は何なんだ!?と思いながら、新人君に座席票を見せると、「この、ゆかのあいだ って何ですか?」と聞いてきたそうだ。
聞かれた知人の方が、「ゆかのあいだ」の意味が分からない。
・・・・・
何のことはない、教授にお座りいただく上座を示すための「床の間」を、新人君は「ゆかのあいだ」と読んだそうだ。

聞けば、自分の家も祖父母の家も(高級らしいが)マンションで、床の間も床脇も出書院も実物を見たことがなかったそうだ。
感覚や価値観の違いなどというジェネレーションギャップではなく、元から言葉が通じない状況が起こりつつあるようだ。
そんな新人君も今頃は、医師として三年目の春を迎えているはずだ。