その報に接したとき、「そうならねばならぬのなら」という言葉が、浮かんだ。
<エリザベス女王死去の発表時、バッキンガム宮殿に虹 SNSで話題> 毎日新聞9/9(金) 12:34配信より引用
エリザベス英女王死去の報が流れた8日夕、ロンドンの上空に虹がかかったとして話題になっている。
【ダイアナ妃とエリザベス女王 今は亡き二人】
英エリザベス女王死去 96歳 在位70年 [写真特集7/17] | 毎日新聞 (mainichi.jp)
ロイター通信によると、バッキンガム宮殿に市民が続々と集まる中、上空に虹が現れた。この日のロンドンは断続的な雨に見舞われたが、夕方には一時、日が差す時間があった。
「そうならねばならぬのなら」
それは先日、先月8月24日が、リンドバーグ夫妻が日本に初飛行した日だと(何か)で聞き、久しぶりに「遠い朝の本たち」(須賀敦子)を読み返していたからかもしれない。
私の心を打った「遠い朝の本たち」一文は、 大西洋横断無着陸飛行を達成し、「翼よ!あれが巴里の日だ」で有名なチャールズ・オーガスタス・リンドバーグの妻アン・モロウ・リンドバーグの著書「翼よ、北に」からの引用なのだそうだ。
『さようなら、とこの国々の人々が別れにさいして口にのぼせる言葉は、
もともと「そうならねばならぬのなら」という意味だとそのとき私は教えられた。
「そうならねばならぬのなら」。
なんという美しいあきらめの表現だろう。
西洋の伝統のなかでは、多かれ少なかれ、神が別れの周辺にいて人々をまもっている。
英語のグッドバイは、神がなんじとともにあれ、だろうし、フランス語のアディユも、神のもとでの再会を期している。
それなのに、この国の人々は、別れにのぞんで、そうならねばならぬのなら、とあきらめの言葉を口にするのだ』
(『 』「遠い朝の本たち」より)
日本をいよいよ発つ時、横浜埠頭を埋め尽くす人々が口々にした「さようなら」という言葉の意味を知り、アン・リンドバーグは上記のように感動したという。
70年
第二次世界大戦後の激動の世界を見守り続けられた偉大な人生
「女王陛下の外交戦略」(君塚直隆)によれば、たぐいまれな知性の持ち主であられたことも分かる。
だが、その報に接したとき「そうならねばならぬのなら」という言葉が浮かんだのは、崩御ということばかりではないような気もする。若くして亡くなられた英国のバラをふと思い出したことも、あるだろう。
さて、19日にも行われるという国葬に、天皇陛下のご参列が検討されているという。
今上陛下がご即位されるなり、女王陛下みずから国賓として天皇陛下をご招待して下さったことは記憶に新しく(コロナのため実現していない)、また両陛下がともに英国留学をされていることからも、ぜひ日本を代表して「さようなら」の儀式に臨んでいただきたいと願うのだが、総理も出席を検討していると、観測気球のようなニュースが流れている。
いや、リンドバークの話題だけに、飛行機がらみで〆を一つ。
政府専用機はどうするのだ!
女王陛下の崩御を、日本を代表して悼んでくださるのは、天皇皇后両陛下であるべきだと思う。
注
虹の写真は、ネットから頂いたもので、英国に架かった虹ではありません