何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

人生のセンターコートで、 エースをねらえ!

2017-09-12 23:00:00 | ニュース
9月7日に引退会見をしていた伊達選手が、今日 最後の試合に臨んだ。

子供の頃から、野球とならびテニスが好きだった私なので、伊達選手がライジングショットを武器に世界ランキング4位にまで上り詰めたファーストキャリア時代のウィンブルドンやグラフとの国別対抗戦も懐かしいが、セカンドキャリアへ至る経緯と、それ以後の努力には、スポーツ選手という括りを超えて人として教えられるものがあると、ニュースを追ってきた。

伊達選手が並み居る世界の強豪を向こうに回し快進撃を続けていたのは、バブル崩壊と長い低迷期に入ったことを国民が実感し始めていた頃だからだろうか、ライジングショットを武器とする伊達選手が、日出る処の国を思い起こさせる「ライジングサン」と称されることが誇らしかった。
そんな伊達選手が、絶頂期に突然 引退した時には驚いたのだが、彼女は38歳で再びコートに戻ってきた。
伊達選手の復帰(再チャレンジ)は、失われた10年とも20年とも云われる世代の人間に、ある種の元気を与えてくれると話題になったが、そこに至るまでの伊達選手の女性としての苦しみが報じられるにつれ、当時やはり同様の苦しみから心を病まれたのであろう雅子妃殿下に重なるものを感じ、祈るような思いで応援を続けてきた。  「絶対無二の存在」

そんな伊達選手が、セカンドキャリアを笑顔で卒業する。
その会見での伊達選手の言葉は、荏苒日々を空しく過ごすことが多い私に、軽く?ショックを与えている。

<伊達公子、現役生活2度目の幕引きへ充実の9年半で「やめたくない」思いも>
スポーツナビ2017年9月7日(木) 22:30配信より一部引用
――ご自身の中で納得している部分もあるということでよいのでしょうか?
納得していないことは、まったくないですね。再チャレンジでやってきた9年半という時間の中で、もっとやりたい、やれたことがもっとあったんじゃないか、あの時にもっと違うやり方をしていればもっと違ったのではないかという思いは当然ゼロではないです。アスリートでいる以上は当然です。ですが、その時その時で100パーセント、自分はそれを信じて、今自分ができることとして最大限やったという思いはあります。常に完ぺきはないのですが、その追求心がなくなったらアスリートではありません。常に101パーセントを求めるのがアスリートだと思うので、私はできるだけ常に100パーセントを求めてやってきていたので、後悔もしないし、それだけの思いはあるかなと思います。
https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201709070004-spnavi

伊達選手が引退を決めたのは、膝の手術の効果が芳しくないところに肩の痛みまで再発し、それらは今引退しなければ、もはや日常生活に影響がでるレベルにまでなっていたからだという。それでも、それを乗り越えるべく101%を求めて100%の努力を続けてきたと言い切れる’’強さ’’に憧れ衝撃を受けている。

「運のツキを考える日」で、「’’9勝6敗の生き方が最も強いので、’’運’’の使い方をコントロールできるように’’ という本の内容に、今一つ納得がいかなかった」と書いているが、それは この本を読む直前に、伊達選手の言葉を読んでいたからかもしれない。
当該本には、一生にわたり’’運’’を上手くコントロールしなければならない例として、「’’運’’よく、ちょっと儲けても、健康を損なってしまえば、結果として負け越しだ」「(飛行機事故で亡くなった作家の名あげ)どんなに売れっ子でも、飛行機故事で死んでしまっては、負け越しだ」というニュアンスのことが書かれていた。
著者が読者に伝えたい意図は分からなくもないのだが、この本が基本 若者に向けてのエールという体裁をとっているために、どうしようもないモヤモヤ感を感じたのだ。

そんなモヤモヤした心には、傷む身体と勝ち星を加減乗除することなく、101%を追求しながら100%の努力をし、勝ちも負けも怪我も痛みも全てを引き受け「納得していないことも後悔も全くない」と言い切った伊達選手の言葉は、眩しさと清々しさに溢れるものだった。

そうして、思い出した言葉がある。
『生きていればね、毎日何かが起こるのよ。けれどその起きたこと自体は幸不幸の性格を持っていないのよ。
 幸不幸の性格付けをするのは、私達人間よ。』

これは「エースをねらえ!」(山本鈴美香)にある言葉だ。
中学時代に部活の先輩から借りて読んで以来、ともすればグチグチと文句を垂れがちな自分を戒めるために、折々に思い出してきた、大切な言葉だ。

勿論「うらおもて人生録」(色川武大)の「一生という長いスパンで物事をみて、’’運’’の使いどころをコントロールせよ」という教えは、目先の些細なことに一喜一憂しがちな私には本当に大切なのだが、「幸不幸の性格付けをするのは自分自身だ」という「エースをねらえ!」の言葉の厳しさと、それを体現していてきた伊達選手の生き方を、今一度胸に刻みたい。

選手としてだけでなく、一人の人間として、大きなものを示し続けてくれた伊達選手
伊達選手 サードキャリアでも エースをねらえ!


<伊達公子 現役生活にピリオド、ストレート負けも最後は笑顔> tennis365.net 9/12(火) 17:08配信より一部引用
女子テニスのジャパン ウィメンズオープン(日本/東京、ハード、 WTAインターナショナル)は12日、シングルス1回戦が行われ、元世界ランク4位の伊達公子は世界ランク67位のA・クルニッツ(セルビア)に0-6, 0-6のストレートで敗れた。この結果、伊達はプロ選手として最後の試合を終え、現役引退となった。
雨による影響で試合開始が遅れたこの日、伊達は満員の会場から大きな声援で迎えられ、コートに入場した。
46歳の伊達は、1989年にプロ転向を果たし、ツアー通算8大会でタイトルを獲得。四大大会では3度のベスト4進出を果たし、アジア出身の女子プレイヤーとして初めて世界ランキングでトップ10入りを果たすなど目覚ましい活躍を見せたが、1996年に1度現役を引退。
その後、2008年に再び現役へ復帰すると、2014年の全米オープン(ハード、グランドスラム)ダブルスで4強入りを果たすなど、チャレンジし続ける姿を見せることで若手選手へ刺激を与え、日本テニス界を牽引してきた。
しかし、2016年の全豪オープン(ハード、グランドスラム)後に左膝半月板の内視鏡手術を受け、その後も膝の状態が思わしくなく、再手術を行うなど怪我に苦しめられるシーズンを送った伊達。
今年5月に約1年4カ月ぶりのツアー復帰を果たしたが、8月28日に自身のブログで「再チャレンジにピリオドを打つ決断」と綴り、2度目の現役生活を引退することを報告した。

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