怒涛のフレット交換は、とりあえず一段落しました。これまでも多くのフレット交換を経験してわかってはいた事ですが、こうして複数をまとめてやってみて改めて、その難しさを知った、という思いでいます。作業の方法は同じであっても、ギターが違えば、全く同じようには進まない、というところが難しい。具体的に言うと、指板材・指板アール・スロットの状態・フレットの太さ…などが絡み合っているため、それぞれのギターの性格を把握しつつ進める必要がある、ということなのです。例えば、今回使ったフレットの太さ(クラウンの幅)は、チャキが0.090"(2.290mm)、他は0.080"(2.030mm)で、太いチャキの方が当然入れにくいと思っていたのですが、圧倒的にストラトの方が入れにくいと感じました。チャキはストライプド・エボニー指板、アールは7.25"-9.5"-10"という円錐指板(*)で、ストラトはメイプル1ピースネックでアールが7.25"の円柱指板(*)でした。おそらく「フレットの太さ」という要素よりは「指板材」と「指板アール」という要素の方が「フレットの入りやすさ」を左右した、ということなのだと思います。ハンマーで打ち込む時も、強く叩けばいいというものではなく、かといって弱くては入らないし、叩き加減も一様にはいきません。そのような条件下で、いかに均一に仕上げられるか、が技術者としての課題です。もっと経験を積まなければならない、と今回また改めて実感しました(もちろん、プレイヤーの立場からは何の問題もないレベルの仕事をしています。当然、修理前に比べれば圧倒的に弾きやすい状態です)。
(*)円錐指板と円柱指板に関しては、機会を改めて考察したいと思います。
お問い合わせ ABE GUITARS
(*)円錐指板と円柱指板に関しては、機会を改めて考察したいと思います。
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