Now+here Man's Blog

Surf, Run and Trails / Endurance For Fun

BOCKY The Final 

2007-04-19 11:58:41 | ThinkAbout..


早朝5時。
藤沢市フィラデルフィアのクゲヌーマビーチ。

一人の青年がロングボードを頭に乗せ、R134を超え走ってきた。
青年の名前はBOCKY SEKIBOA。
ロングボードのコンテストで小銭を稼ぐ3流サーファーである。

BOCKYはビーチに着くと、ボードを砂の上に置き、また走り始め、
ビーチパークのアスファストの階段を駆け上った。
数段しかないのに上りきると、両手を高く上げ、何度も何度もジャンプした。
『ボッキー!ボッキー!ボッキー!』
自分で自分の名前を高らかに叫び、天に向かって自分を誇示した。
BOCKYの一日の始まりである。

『ぱっぱーぱらら、ぱららーぱらら♪』
BOCKYは『ROCKYのテーマ』を腹の底から歌い始め、沖に向かってパドルし始めた。
『ROCKYのテーマ』はインストなので歌詞がない。
ぱっぱーだけの発音が、クゲヌーマ響き渡り、東のエノスパスタジアムにこだました。

沖からセットが来た。
BOCKYはパドルを開始した。もちろん片手パドルである。
『WIN!BOCKY WIN!』とペイントされたボードにスタンドする。
おそるおそるノーズに向かって歩く。
なかなか足がクロスしてくれない。
1塁ランナーが『リー、リー』してるみたいだ。

BOCKYは意を決し、小走りに前に出てみた。
右足のつま先が左足のフクラハギにつまづいた。
ヨレヨレとノーズに向かっていく。
一気にノーズが沈み、ボイ~ンとテイルが45度に上がった。
BOCKYはそのまま前方にダイブし、ボードは後方ロケット発射。
ボードはそのままの勢いでBOCKY目掛けて戻ってきた。
波に巻かれながら、ボードが何度もBOCKYの顔面を強打した。

打たれても打たれても、海面に向けて這い上がるBOCKY。
どうやらリーシュが海底のリーフに引っかかったようだ。
目は腫れ、タラコ唇になり、鼻はつぶれ、耳は餃子になっている。
打たれても、打たれても、、もう立たなくていいよ、いいんだ、
いや!立て、立て、立つんだジョー!

もう息が続かない。
『ワン、ツー、スリー、、』 BOCYが浮かんでこない!もはやこれまでか!

クゲヌーマローカルたちはビーチで固唾を飲んでいる。その数はすでに1000人を超えている。
『ボッキー、ボッキー!』誰かが声援を送った。
やがて声援は広がり、大きな歓声となって水中のBOCYへと届いた。

『エイト、ナイン、』
最後のカウントで、BOCKYが浮上した。
顔面は醜く腫れ上がり、水中での死闘を物語るようだ。
ビーチまで聞こえるような深い呼吸とオエツを繰り返した後、
『チャララーラ チャーラララララー チャララー♪』また歌いだした。
ROCYの大逆転クライマックスのテーマじゃないか!

一通り歌い終わると、彼は苦痛の顔で叫び始めた。
『エイドリユウコ!エイドリユウコ!』

。。。
あれから30年。
60歳になったBOCKYはクゲヌーマ前乗りレジェンドとして名を残している。
ある日『J-COM湘南』で全盛期のサーファーが年老いて波乗りしたらどうなるかを
CGシミュレーションされたものが放映された。
BOCKYは当然のことながら出演した。CGとして。

パドル力は衰え、腹が出て、最悪なことにカッパゲーハーである。
足腰が衰えていることは否定できなかった。

もう25年もサーフィンをしていない。

あのときの仲間からは
『ウインドを忘れた男』
『やはり面接系AVだったか』
『朝って風吹かないのにね』
『マンションって耐震疑惑じゃなかったっけ?』
『混んでる海ってどうなのよ?』
などなどメールが寄せられた。

BOCKYはリベンジすることをエイドリユウコに伝えた。
エイドリユウコはBOCKYにエールを送った。
『生きたいように生きるのがサーファーでしょ!
手が折れても、足が折れても、心が折れなければまた這い上がれるわよ!』

バシッ!バシッ!
トレーニングの音が聞こえた。

米沢牛とイガギューをサンドバッグにしてパンチを浴びせているBOCKY。
不屈の精神を宿し、明後日土曜の朝吹くすかね伝説は真実に???

BOCKY THE FINAL は明日20日公開である。