宝塚星組公演「ガイズ&ドールズ」、面白かったです。
8月27日、新・星トップ北翔海莉の大劇場初舞台に期待しながらムラに向かいました。
途中少し渋滞がありましたが、なんとか予定時間内に大劇場駐車場へ。ただし障害者駐車スペースが満杯。でもかろうじて入り口近くが空いていたのでなんとか駐車できました。この日は確かに車椅子の方が多かったです。
劇場内はもう多くの方でにぎわっていて、ホールも活気がありました。公演の人気を表しているようです。これが不人気な公演だと、どこか虚ろな雰囲気が漂っていたりしますね。
さて今回は北翔海莉のトップ就任初の大劇場公演ですが、これまで長く彼女のトップ就任を期待していた私たちにとって、感無量・万感胸に迫る(はちと大げさかな)な観劇でした。
もう10年ぐらい前になりますが、職場でヅカファンな同僚女性と話していて「北翔海莉もトップになる実力があると思うけどね」と言ったら、「昭和の香りプンプンですね」と軽くいなされました。
それまで感想などでは一致することも多かったのでちょっと意外でしたが、「あーそんな見方もあるのか」とも思ったり。ただその後、長く二番手ポジションだったのが、だんだんその保持が怪しくなってきて、とうとう専科入り決定となってからはこちらも吹っ切れました。(笑)
ところがその後、よもやのトップ就任発表というドンデン返し。100周年記念のどんなイベントもかすんでしまう大ビックリ。世の中、何が起こるか本当にわからないですね。
でも彼女も現在研18。あと何回公演できるかなと他人事ながら心配になります。(^^;
余談ですが、開演前トイレに行くと、携帯で大きな声で通話中の男性がいました。
「ええ、今回は招待ということでセットしています」とか「本人も本当によくやってきたと思います。まったく縁もカネもないところで、ひとりで長い間頑張ってきて、ようやくここまで来られましたので‥」とか話していました。ひょっとしてご家族とか?
それはさておき、当日は立ち見とまではいかなかったものの、ほぼ満席でした。私たちの席は7列上手端に近い席。
舞台の両袖の通路には、1950年代のニューヨーク・ブロードウェーの街頭が再現されていて、凝った作りの公衆電話ボックスのセットや、
レンガ塀に貼られたリアルなテレビや車の宣伝ポスターと落書きなどがあって、雰囲気たっぷりでした。見ているだけで期待感が高まってきます。
さて、感想です。いつものとおり敬称略。
(画像はプログラムの部分スキャンとスカステ・ナウオンステージのキャプチャーです。)
幕が上がってちょっと古めかしいなと思ったのはオープニングが長くてスローテンポなこと。でもセットや舞台を往来する人物の多彩さ、いい出来栄えの舞台装置で、'50年代のニューヨーク・ブロードウェーの雰囲気たっぷりです。行きかう人々を観ているだけでも楽しい。
話は単純で、ニューヨーク・ブロードウェーの裏町に生きるギャンブラーや小悪党たちの世界と、そこでの二組のカップルの恋愛関係を描いたミュージカルコメディですが、やはりアメリカの良き時代を反映してみんな人情味のある人物ばかりです。
で、まず主役スカイ・マスターソンの北翔海莉から。
冒頭の場面でいきなり登場した北翔の歌は、期待どおりの伸びやかな美声で気持ちよく聞けました。これだけでもう作品の出来が予測できます。(笑)
(ただ彼女、前から気になっているのが会話の声ですね。やや鼻にかかった、軽い風邪気味な声(殴)が今回も気になりました。ただそれが歌になるとまったくクリアになるのが不思議です。)
オペラで見ると、ちょっとお疲れか眼の下のクマがちょっと目立っていました。やはりいろいろ心労もあるのでしょうね。
それと、たまに彼女の演技はどこか頭で作っているように思えて、心ここにあらずな印象を受ける時がありました。でもそれも束の間、舞台は娘トップの妃海風との絶妙の掛け合いが楽しくて、また細かい感情の駆け引きも自然で、安心して観ていられました。
二人とも相手を思う気持ちとその変化がよく表現されていて、見ごたえがありました。
ハバナに連れ出すのに成功したスカイです。↓
サラは酔っぱらっています。
歌声の組み合わせもよくて、息の合ったいいコンビぶりです。やはりトップの第一条件は歌ですね。
フィナーレも魅力たっふりで、歌も堪能しました。耳福なひと時でした。
その救世軍のお堅い女軍曹サラ・ブラウン妃海風ですが、外見に似合わない(殴)度胸の演技にびっくりしました。ナウオンステージとかで見ていると、上級生から突っ込まれたらすぐ顔を真っ赤にしているのに、舞台では堂々の演技。
大したものです。それに歌もよかったのでバランスのいいコンビになっていました。
最初はギャンブラーなんかとんでもない!だったのが、だんだんスカイに傾いていくところが面白いです。
わざとらしくなくしかもしっかりした演技で、黒木瞳よりこちらのほうがはるかに好みです。観劇前は苦手なタイプと思いこんでいましたが、今回の好演で一変して好感度急上昇。(殴)
つぎはネイサン・デトロイトの紅ゆずる。
最近(といっても去年です)スカステで「風と‥」全国公演のニュースを見て、あんまりなレット・バトラーぶりだったので、かなり我が家では評価が低下していたのですが、今回彼女がナウオンで「風はガチガチの型芝居でやりようがなかったが、今回はいろいろ自分で演技ができてよかった」みたいなことを言っているのを聞いて一安心。そのとおり今回はのびのびと演じていてよかったです。
歌劇団ももういい加減に古色蒼然とした型芝居の「風‥」とか「ベルバラ」は打ち止めにしないとダメです。賞味期限がとっくに切れています。
今回のネイサンは、彼女の持ち味がよく出ていて、安心して観られる出来で本当によかったです。歌もよかったし。
ここにきて彼女も再評価の機運です。
ただ、最初はちょっと横山やすし風なところもあったりしましたが(殴)、話が進むにつれそんな気配もなくなって、アデレイドとの呼吸もピッタリ。
二人の絶妙な掛け合いはこの作品の大きな見どころの一つです。
でも今回最大のびっくり&収穫は、そのアデレイド役の礼真琴でした。
リピートを決めたのも、私的には礼真琴の絶品演技なアデレイドをもう一度観たいというのが最大要因。(殴)
まあとにかく脱帽の演技。昔映画でモンローがよく演じていたような、かわいらしくていじらしくてセクシーな役どころを完璧に演じていて、完全に周りの女役を食っていました。(笑)
台詞ももちろんのこと、早口言葉みたいな難しい歌を、男役と全く違う高い女声で完ぺきに歌っているのには本当に驚きました。大した力量です。男役では少し小柄だし、ビジュアルが少し地味目な印象(殴)だったのですが、もともとダンスも歌も演技力も高水準な人ですから、今回のアデレイドではまさに水を得た魚。弾けまくっていました。
彼女はプログラム中でも役作りについていろいろ書いていましたが、その通りの演技になっていて感心しました。興味のある方はぜひプログラムを買って読んでみてください。(笑)
歌が男役時とはガラリと違う声で、伸びもあって感心しました。もう彼女が出てくると勝手に目がロックオン状態、自動追尾モードに入っていました。(殴)
フィナーレのショーでも紅ゆずるとのダンスが絶品。最初上手通路から登場しますが、これがまたすごいスタイルです。初め誰かわからなかったほど。
脚色・演出の酒井澄夫から「清く正しくセクシーに」とか「素を出さず色気を出せ」といわれたとか。難しい注文ですが、彼女の演技はその通りの出来で、セクシーでも下品でないのはさすが。(笑)
下品なのも嫌いでないけど。(殴)
その他の出演者もみんな生き生きと演じていました。中でもやはりナイスリー・ナイスリー・ジョンソンの美城れんがよかった。
美城れんは歌も絶品、演技も余裕、もうタカラヅカにはなくてはならない存在になっていますね。マンホールに窮屈そうに出入りする姿も笑いを誘っていました。
ベニー・サウスストリートの七海ひろきと、ラスティー・チャーリー役の麻央侑希を引き連れた凸凹トリオがウケていました。
七海ひろきはちょっと出番が少なくて物足りない役です。
そしてビッグ・ジュールの十輝いりすです。
文字通り大きいです。周りの出演者を睥睨しています。(笑)
ところで、余談ですが、この「ガイズ‥」、私は未見の作品とばかり思い込んでいました。
でも途中で十輝いりすが「クラップやろうぜ」と言うのを聞いて一挙に記憶が戻ってきました。実は大地真央と黒木瞳バージョンを観ていました。(殴)
そのときのビッグ・ジュールは旺なつきでしたが、これがインパクトがあって、当時観終えてからも「クラップやろうぜ」がしばらく耳について離れませんでした。その印象からすると、今回の十輝いりすの「クラップやろうぜ」はちょっとおとなしめで物足りない。体に合わせて(殴)もう少しドスを利かせてほしい。(笑)
でも強面なのにテディベアを離さないとか、人情味があちこち垣間見えて、台詞は極少でも面白い人物です。
あと結構目立っていたのがブラニガン警部の美稀千種です。
ただ初めのほうで台詞が滑ったり、ちょっと聞き取りにくかったりしてプチ残念。リピートではよくなっていることを期待します。この役、夢乃聖夏がやったらまさにハマリ役だったでしょうね。
組長さんもよかったです。出番は少なくても存在感があり、ピッタリの役と演技でした。
少ない出番というとアーヴァイド・アバーナシーの天寿光希ももったいないし、
壱城あずさも食い足りない役でかわいそうでした。
そうそう、ちょっとツボだったのが、スカイがレストランでの食事のあと、代金をテーブルに置いて立ち去るところ。その紙幣をウェイター(名前は分かりません)が数えて、ニヤリと笑いながらポケットに入れる場面。この作品では、各場面でみんなそれぞれ楽しい小芝居をしています。
というわけで、やや古さはあっても文句なしに楽しい脚本で、出演者のバランスもよくて、私的には一番いい「ガイズ‥」になっていました。みんな歌ウマぞろいなのも気に入りました。そんな幸福な余韻に浸りながら、帰途につきました。
このあたり、雪組公演の後味の悪さとは対照的。現金なもので、帰宅後さっそくチケット仲介サイトを物色。(笑) 数日後、リーズナブルな価格の良席を発見、リピートが確定しました。
みっちゃんの大劇場デビューとして、まずは上々の出だしでよかったです。おすすめです。観ないと損します。(笑)
今回も拙い感想をご覧いただき、ありがとうございました。