安曇野ちひろ美術館は初めて訪れた。設計者にとって内観とそれに合ったプランが重要だったのだろうか、と思った。外観は、よくパンフレットなどで紹介されているのはそのリズミカルに並んだ切妻屋根だ。しかし、私は目があまり良くはなく、池のあるあたりからだと遠すぎてその切妻屋根の魅力は薄れてしまうのだった。何か行く前の予想と違って変だった。そして近くへ近づくに従い、そのリズミカルな連続的な感じは全く無くなってしまうのだった。下から見上げると屋根の下の飛び出したコンクリートの部分などが、あまり格好良くなく目に映った。立面図で検討した時だけはこのリズミカルさは現れるのだろうが、立体になった時にそれを感じられるような視点の置き場を見つけられなかった。望遠、三脚で撮る建築オタク写真家は満足するだろう。
岩崎ちひろの絵は、充分な時間が無かったにもかかわらず、ぼんやりとしつつ見て回った。初期の頃はほんとにごく普通の子供のスケッチを描いている。ある時から急にあの独特の子供の絵のスタイルになったようだ。何かから素晴らしいヒントを得ることができたのかもしれないなと思った。そして絵の変遷を見るうちに、もしかするとこのちひろという人は最終的には、その色の選択とそれを置くところに意識が集中して行ったのではないか、と思った。それらの絵を見ていてふとそう感じた。すると子供をかたどったスケッチはおおざっぱに言うと、単純にそのためのきっかけの役割へと変化していったのでは?と。無着色の良いスケッチを描くことができているなら、あえてそれが子供の絵ではなくてもよいというところまでいってしまったのでは、と思わせるくらい、色の選択と塗る場所に切れ味が出てきているように思った。いや、子供の絵ということでこれだけ知られた人にはやはりそういうことはなく、着色前の子供のスケッチは重要なモチーフだったのだろう・・・。