福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

都響が町田にやってきた

2015-07-14 00:05:02 | コンサート



13日の午後、町田市民会館にて都響プレミアムコンサートを聴いた。

プレミアムコンサートとは、都の職員としてのお務めのひとつで、多摩地区、伊豆諸島や小笠原諸島など島嶼に暮らす都民にオーケストラやアンサンブルのコンサートを提供する催しである。

800名無料ご招待とのことで、勇んでネットから申し込んだものの敢えなく落選。一方、「是非、聴きなさい」とのボクの勧めで申し込んだスウィング ロビンのメンバーは大量当選(笑)。お陰様でおこぼれを頂戴して聴くことができたのである。

お目当ては、指揮のグスターボ・ヒメノ。この秋、ロイヤル・コンセルトヘボウ管と来日する指揮者が、どのような棒を振り、如何なる音楽を紡ぎ出すのか、この目と耳で確かめたかったことに尽きる。

プログラムが、ベートーヴェンの「コリオラン」序曲と「第7」というのも、指揮者が本物であるか否かの判断材料にはうってつけだ。

結論を言えば、グスターボ・ヒメノには心底魅了された。

音楽の作りはオーソドックス。外連なしの真摯なアプローチ。その演奏は豊かな歌に溢れ、活き活きとしたリズムに貫かれている。フレーズ内のちょっとした濃淡の描きわけにまで目が配られており、バランスも美しい。

スペイン出身ということよりも、メンゲルベルク以来の伝統を誇るコンセルトヘボウ管の打楽器奏者としての出自がヒメノの音楽に「本物」の裏付けを与えているように思う。

そして何より評価すべきは、ヒメノが指揮者にとって大事な「楽員の魂に火を付ける」資質を備えていることだろう。

定期演奏会ではない「お務め」。オーケストラにとってつい気の緩みがちな類いの催しだと思われるが、それを一期一会の真剣勝負の場にしたヒメノは真実の芸術家だ。

ここ何回か通った定期演奏会のどの演奏よりも、オケの音が美しく、そしてよく鳴っていたように思う。

今回のプログラムは、コンサートの性質上、通常の約半分というボリュームであったが、むしろ、これら2曲だけに全力を傾けてくれたという爽快感があって、なんの不足も感じることはなかった。

駄目押しは、アンコールのモーツァルト「フィガロの結婚」序曲。まさに目眩く高揚感と至福があった。

今後、しばらくはグスターボ・ヒメノから目が離せそうにない。

今月の23日(木)、24日(金)には、大阪フィルへの客演もあり、関西方面の方には是非とも確かめて頂きたい。

 大阪フィルハーモニー交響楽団 第490回定期演奏会

2015年7月23日(木) 24日(金)
19:00開演(18:00開場)
フェスティバルホール

<指揮>グスターボ・ヒメノ
<独奏>ダニエル・ミュラー=ショット(チェロ)

<曲目>
レブエルタス/センセマヤ
アンドレ・プレヴィン/チェロ協奏曲
ガーシュウィン/パリのアメリカ人
バーンスタイン/「ウエストサイド物語」より “シンフォニック・ダンス”

http://www.osaka-phil.com/schedule/detail.php?d=20150723

また、11月のコンセルトヘボウとの来日公演は仕事とバッティングしていてなかなか行けそうにないのだが、なんとか調整し、1公演だけでも聴いておきたいものだ。



 

 

※ご指摘があったので、一部訂正しました。ねこまるさん、有り難うございました。
コメント
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