昨夜は、サントリーホールにて、ジョナサン・ノット&東響による「運命」ほかを聴いた。
ノット時代になって、訪れるたびに東響の音が変貌しているのに驚かされる。
今回、感じたのは、弦に厚みや奥深さが増していたこと。
もともと透明な美しさを持ちながらも、線が細く、響きの量に若干の不満のあった弦楽セクションが実に良く鳴っていた。
最後列のプルトに至るまで、大きな弓幅による全身全霊を賭した奏法は音のみならず、視覚的にも美しい。
音量だけではなく、そこに人間の様々な情感が宿っていたことを賞賛したいと思う。
また、ノットの渾身の指揮ぶりにも、些かの力みのない伸びやかな音で応えていたのも素晴らしい。
ノットによるベートーヴェンについて、完全に自分の好みであったわけではない。
ボク自身、古い巨匠タイプの重量感あるベートーヴェンの方が心にはピタリとくる。
しかし、どこを斬っても新鮮な血が噴き出し、未来への光に照らされたベートーヴェンもまだよいものだ、と思わせてくれた。
ジョナサン・ノットと東響がこれからどんな境地まで昇り行くのか、目が離せない。
東京交響楽団第632回定期演奏会
2015年7月16日(木) サントリーホール
ストラヴィンスキー:管楽器のための交響曲
バルトーク:ピアノ協奏曲 第1番Sz.83
ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 作品67「運命」
ピアノ独奏:デジュー・ラーンキ