福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

ヤノフスキ&ドレスデン・フィルの「オイリアンテ」演奏会形式

2018-01-19 23:30:45 | コンサート


ベルリン・フィル定期への小澤征爾降板(ラヴェル: 歌劇「子供と魔法」)に伴い、ドレスデンに留まり、今宵はヤノフスキ&ドレスデン・フィルによるヴェーバー: 歌劇「オイリアンテ」の演奏会形式を聴くことにした。



「オイリアンテ」と言えば、序曲こそ有名なものの台本の評判の悪さから上演される機会は多くない。かくいうわたしもレコード、生演奏含めて、はじめての体験である。

ヤノフスキはこのオペラをレパートリーとしているようで、ジェシー・ノーマン、ニコライ・ゲッダ、トム・クラウセ、ジークフリート・フォーゲルら、錚々たる歌手陣を揃えたシュターツカペレ・ドレスデンとの全曲録音(1974)もある。



このコンサートのための予習は、あらすじを読んできただけ、という乱暴なもので、退屈してしまうのでは? という心配もあったが、思いのほか愉しむことができた。音楽は随所にワーグナーの先駆とも言えるべき美しい場面があり、木管の組み合わせ、ホルンの効果的な使い方など、オーケストレーションの妙をヤノフスキ&ドレスデン・フィルの充実した演奏が伝えてくれた。

歌手陣では、オイリアンテ役のエミリー・マギーと、悪玉リジアルドのバリトン、エギリス・シリンスが声も芝居も立派。
かたや、オイリアンテの伴侶アドラールを歌うベルンハルト・ベルヒトールトは、病欠のクリスツティァン・エルスナーの代役で、声は綺麗なのだが声量が全く足りないのが惜しまれた。また、オイリアンテを陥れる侍女エグランティーネを歌うカテリーネ・フォスターは、邪悪の性格をよく表現しつつも、所々ピッチに不安を残したのが残念。

さて、文句なしに素晴らしかったのはMDR(中部ドイツ放送)合唱団の歌うコーラス・ナンバーである。「オイリアンテ」という作品にこれほど合唱が重用されているとは知らなかったのだが、MDR合唱団によるまるでドイツ民謡を聴くようなドイツ・ローカルなハーモニーとディクションの美しさには、魅了され通しであった。我が指導するコーラスのひとつの目標ができた。

なお、あらすじでは第3幕に登場する村娘ベルタや騎士ルドルフの出番のなかったことをみると、台本の稚拙を補うためのカットが施されていたのかもしれない。気になるので帰国したら調べてみよう。