明鏡   

鏡のごとく

「息も出来ない」

2011-10-21 21:42:17 | どうわ
「息も出来ない」を見る。


暴力につぐ暴力。


家族に暴力をふるう父親が母と妹を殺して刑務所に入り、そんな父親を許せず出所してきた父親に会う度に殴る借金取り立ての男と。

屋台を出していた女子高生の母親はやくざものに殺されているにもかかわらず、母親が家事をせず出歩いていると言い続ける精神不安定なベトナム戦争帰りの父親と遊びの金を毎日せびる弟と三人暮らしの女子高生が、坂道の途中で出会う。

男がつばを吐いたのが女子高生のネクタイに付き、口論となったからだった。

男が女子高生をなぐり、気絶するような暴力的な出会いであったが、逃げ場のないもの同士しだいに共鳴しあっていく。

その共鳴は、女子高生の記憶と繋がり出す頃、終わりを告げる。

金を無心する弟が男の事務所に出入りするようになり、男にたいした訳もなく殴られ続けた恨みを募らせていたが、男は女子高生との未来を意識しつつ、そこから足を払う気になった日のこと。

男は自分と同じ名前の男の子を持つ父親から借金を取り立たようとするが、子どもたちを見ていると昔の自分と共鳴し出し、取り立てることが出来ず、帰ろうとしたところを、その父親に後ろからハンマーで殴られる。

弱ったその男を帰り道に殴り殺す女子高生の弟。

暴力を振るっているものは自分が暴力を振るわれること等、その行為の間は考えもしないが、その暴力は最後にはふるったものに降り掛かってくる。


暴力につぐ暴力。


男が死んでしばらくたってのこと。

男の姉親子と取り立て屋をやめて店を出した男の友でもあった社長の食堂を出て町を歩いていた女子高生は、屋台を壊している弟を偶然見つける。

屋台を出していた母親が殺された現場を見ていた女子高生は、男が母親を殺したものたちであった記憶と、その殺したものたちの中にいる弟が、ひとつに重なる瞬間。


暴力につぐ暴力。


息も出来ない瞬間。