明鏡   

鏡のごとく

誰も乗っていない自転車

2015-03-02 01:19:42 | 詩小説
誰も乗っていない自転車をひいてしまった
バックしていたときだった
あれからバンパーは
段差のあるたびに悲鳴を上げる
いまもなく自転車の亡霊

もう花は手向けられない
あそこをとおるたび
息を止めていた
通り過ぎるまでの仮死四十五秒
花はもうなくなってしまったのに

くろぐろとしたかみのいろは
そめあげられたあとのくろ
しろいところはみあたらなくて
ただしろいぬりこめられたかべで
はだこきゅうができないくろねこのきしみがある

ゆうぐれどきのさんげきに
いきもできない
われわれはあかいかさをささないまま
自転車をこぐ
あのおだやかなめをさがしさがして