明鏡   

鏡のごとく

「転倒・つまずきには注意」

2017-06-07 22:26:18 | 詩小説
暗闇の中
廊下を右足を引きずりながら歩いて転倒した父

右足と右手から転がった
右半身不随の父

転倒・つまずきの可能性あるところ
足元・手元注意

と言う文言を
一日の注意事項として毎日書き続ける現場の中

父の現場において
一日の注意事項が暗闇の中つまずいた

あと一年は生きるか否か
父は電話の向こうの暗闇で笑いながら言う

あなたは暗闇でもつまずいても
笑いながら生きてきたのだから

その暗闇の重みに耐えられるように
転倒・つまずきには注意

沢蟹の横歩き

2017-06-07 21:37:40 | 詩小説
雨の中 
杉皮の作業を終えて 
休み中
沢蟹 足元 横歩き 
両手鋏のこの蟹の
触覚のような目ん玉の
こちらを向いて横歩き
杉皮切った鋏ほど
でかくはないがなかなかの
挟み具合の鋏もち
さわさわ 目の前 横歩き
雨つぶ 避けて 横歩き
沢蟹と目が逢うたのだ
雨の中