明鏡   

鏡のごとく

「大鴉との勝負どころ」

2017-05-16 21:15:14 | 詩小説
大鴉は朝頃やってきた
警戒することもなく優雅にそれでいて意外ときょとんとした目をして
作りかけの屋根の上に乗っかって悠々としている
しかし昨日はツボの中にあるタブレットに気づかなかったようである
ひとまず勝負あり
鉛筆のように先が削がれた木の杭の上でも遠くを見ていた
あの大鴉は本当にあどけなく優雅であった
また明日会えるといいが

「大鴉との勝負どころ」

2017-05-15 22:12:26 | 詩小説
大鴉が作りかけの茅葺の屋根の中に舞い降りて
熱中症予防のタブレットを突いて食べていた 
袋を突いて食べていた
次の朝
箱にしまっていたタブレットを開けて食べていた
今日はツボの中に入れておいたので
食べられまいが
大鴉のこと
ツボをひっくり返していないか
明日の朝が勝負どころ

sigur ros

2017-05-14 21:42:07 | 詩小説
先日のこと。
朝早く車で移動中にラジオを聞いていた。
震災で亡くなった大切な人や家族の幽霊にあったという方々のお話を聞いて回った方がおられたのは知っていたが、その方の本の紹介をされていた。
今になって薄れていく記憶の中にありありと生き続けている大切なものを忘れてしまったような切ない、世知辛い世の中であろうとも、魂になってもそばにいてという感覚はいつもあればいいと思う。
その時にかかっていたsigur rosもなんだかしみじみといつもそばにある魂のように懐かしいものであった。
今聞きたいのは、まさしく、そういう音であった。

https://www.youtube.com/watch?v=y-UfM4N-Fo8&list=PLGU0GKCyIp5vf9ZiAb0_f5AzdHDsRdXvt

https://www.youtube.com/watch?v=8LeQN249Jqw&list=PLGU0GKCyIp5vf9ZiAb0_f5AzdHDsRdXvt&index=2

山の霞

2017-05-12 22:31:44 | 詩小説
山の霞の中にいた
雨が降り続く中にいた
雷が二度間をおいて光り
二度雷音がついてきた
霞を食って生きていけないと言われたが
霞を体一杯に吸って生きているような
霞に食われているような
そういうやすらいだ休みの中にいた
そうして
茅葺の家を描き出す
美しい茅が濡れている
屋根の上の苔の間に
新しい緑が生き生きと濡れている
そうやって茅葺の屋根は
いつの間にか
この山々のように
私の中に生き続けている
山々の霞を食って
霞に食われて生きている