週刊少年ジャンプ2014年19号掲載。
掲載順第8位。
第65話 【弁当進化論】
さーてさてさてさてのさて!
遂に創真の料理、海苔弁当のお披露目です!!
観客の反応はやっぱりな反応だったけど(苦笑)。
郁魅と吉野も、やっぱり榊と同じ反応だったけど(苦笑&苦笑)。
海苔弁当と聞き、創真の名を呼ぶアリス。
これがえりななら、格式ある大舞台で超庶民的な料理を出してきた創真を罵倒する言葉を連発してくるに違いないでしょうが、まさかアリスも・・・!?
と身構えたらば。
スカッ☆(空振り)
ナイスだアリス。
さすがは外国育ちのお嬢様。
創真のこしらえたのり弁。
その名も「ゆきひら流進化系のり弁」。
いつもとは一味違う舌の肥えた“お客”ということで、創真も普段より少しだけ礼儀正しく、「どうぞ」を付けて料理を提供。
ま、出す様はめっちゃ堂々としてたけど(笑)。
創真の出した弁当箱は、“ランチジャー”と呼ばれる重ねて運ぶタイプの保温容器。
ご飯とおかずだけでなく、スープも熱いまま保てるランチジャーの性能に感心するアリス。
ああ、そうか・・・!
「お弁当」が日本独自で発展してきた文化なら、「弁当箱」も日本独自かつ世界トップクラスの技術力を誇っているということなんですよね!
ランチジャーについて親しげに話し合う創真とアリス。
そんな二人のやり取りは、一見緊張感の無いものでした。
ですが、アリスの笑顔は創真を見下しているからこその余裕によるものだったのです。
そうしていよいよ審査に。
まずは「3種のおかず!」
ふむ・・・ここはプロト版と全く変わっていません。
ですが評価は上々。
磯部揚げを始め、金平牛蒡の細部までこだわった仕事ぶりに感心する審査員達。
そうなんですよね~。個人的にマヨネーズって苦手なんですけど、“隠し味”としてのマヨネーズの力ってかなりのものがあると思います。
ちょっと加えるだけで、コクがまるで違うんですよ。
お次は鱈のフライに手を付ける審査員。
箸で簡単に切れる柔らかさから、一度煮てから揚げていると分析します。
え~!煮てから!?
それは初めて知りました!
そんなことしたら、身からの水分でベチャベチャな揚がり具合になりそうと思ってたので・・!
口にした審査員の反応は・・・
アハハハハハ・・・ ウフフフフフ
鳥さんかわいいv (←え?そっち?)
B級グルメとは思えない上品な味に驚愕する審査員。
その理由は鱈を煮た“出汁”に。
それは「マグロ節」と「利尻昆布」から引いた出汁でした。
「マグロ節」については本編で説明が述べられているので、ここでは「利尻昆布」について少し。
※利尻昆布・・・真昆布や羅臼昆布に次ぐ高級品で、生産地は北海道の利尻島、礼文島及び稚内沿岸。
利尻島産の物が最上品質とされているが、そのほとんどが京都に流れていくため市場に出ることは滅多になく、幻の昆布とも言われている。
味は他の品種より薄いものの、澄んでおり、やや塩気のある出汁が採れる。
素材の色や味を変えないため、懐石料理や煮物で重宝され、京都では最も一般的なだし昆布として使われている。
千枚漬、湯豆腐など用途が広く、肉質が硬いため、高級おぼろ昆布やとろろ昆布の材料にも。
「マグロ節」と「利尻昆布」による合わせ出汁。
これはアリスが手鞠弁当の特色として用いた、「旨味の相乗効果」と全く同じ効果を発揮しているものです。
合わせ出汁は和食の基本中の基本。
前回の感想でも述べさせて頂きましたが、世界にとっては“最先端の美食学”でも、日本にとっては“昔からの料理法”なのですよ。
揚げ物が2種類ともなると、食べる相手によってはどうしても重く感じられてしまいますが、この「マグロ節」による繊細優美な味わいとビールを用いた衣によって、油っぽさを感じさせないとても軽やかな仕上がりに。
お次は汁物。
これには「ベーコンと玉葱の味噌汁」が。
このお味噌汁にも、審査員達はあははうふふなリアクション。
正直どうツッコんだらいいか困っちゃいますが(苦笑)、アップの表情は大変良い笑顔ですね。(^^)
これらの審査員達の反応、さりげに嬉しく思いました。
食の世界の重鎮に違いないでしょうに、どっかのお嬢様と違って、庶民的な料理であることに先入観や偏見を持たず、至って公正に評価し美味しそうに食べてくれて。
どなたも、安心して審査を任せられる方ばかりで本当に良かったです。(^^)
個人的に、仙左衛門の隣に座っている着物のお爺ちゃまが可愛らしくてお気に入り♪
この味噌汁についても豆知識を披露する創真。
ここ最近本当に日常生活に役立つ豆知識が紹介されていますよね~。とても面白いです。
これはランチジャーの高い保温効果を利用した、余熱による調理法ですね。
こうすれば時間短縮だけでなく高熱費の節約にもなるという、まさに一石二鳥の裏技☆
確かに野菜スープは弱火でじっくり煮込むと、野菜の甘みが出て美味しくなりますものね~。
そんな創真の弁当に対する博識さを褒めるアリス。
ですが、同時にダメ出しも。
他人の料理を見下し、自分の料理が一番というこのセリフ。合宿で出会った頃もこれと同じような事言ってましたっけね。(単行本5巻44ページ)
ここで引っかかったのが「お弁当といえど」という言葉。
・・・「いえど」?
アリスのこの言い方、お弁当への思慮の浅さを感じるのですが?
そして創真もあの頃と同様に。
認めるべきところは認め。
言うべきところは言いました。
「お前の品って ちゃんと“弁当として”すごいわけ?」
なんかすっごく久し振りに思えます。
きましたよ、創真の核心を突く言葉が!!
創真達料理人が「弁当」という箱に詰めるべきものは何なのか、それは―――――
話は過去へと遡り、創真が小学4年生の・・・こ・・・・・ろ・・・・・・・・・・おお゛を゛!!!???
可愛いーーーーー!!!!!!!!!!
(〃>▽<〃)
これまで創真の幼少期は何度か描かれてきましたが、そのいずれもややコミカル気味に描かれたりしていた創真。
こんなにしっかり描かれているのは初めて!!
お目め真ん丸ーv
ほっぺたも真ん丸ーv
髪の毛はツンツンーv(←それは今もですよ)
手ぬぐいもね、今は裾が背中に掛かっているけど、当時はまだ小さいから腰下に掛かっているの。
そんな細かい描写がホント嬉しい。ホント可愛い。
キヨさんという、「ゆきひら」の常連客だったお婆ちゃんを実の祖母のように慕っていた創真。
とっても温和そうなお婆ちゃまですね。(^^)
わちゃわちゃな創真ちゃんがかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいが止まらない。
そしてキヨお婆ちゃんもまた、創真を実の孫のように想ってくれているのが伝わります。
ああ、なんてほっこりなシーン。
創真は実の祖母を知らないから・・・と話す城一郎の表情に少し漂う、創真への負い目。
祖母だけでなく、多分創真は祖父も知らないのでしょう。
という事は、現状創真の肉親は父親ただ一人なのですよね・・・。
果たして創真の祖父母について、これから後明かされる機会はあるのでしょうか?
それは附田先生に委ねるのみです。
そんなある日、腰を痛めてしまい「ゆきひら」に行くことが出来なくなってしまったキヨお婆ちゃん。
そんなキヨお婆ちゃんに、創真はお弁当を届けに。
どうやらキヨお婆ちゃんは一人暮らしの模様。そりゃ心配だよね。
嘘偽りを全く言わない創真。
だけど。
もし彼が嘘を言う時があるならば。
きっと「こういう場合」だと思っていましたよ。(^^)
で、そんな(分かりやすすぎる/笑)嘘を誤魔化すのに気を取られ、創真は門に衝突★
大丈夫か創真ーーーーー!!!???
あああ「痛い痛いのとんでいけ」してあげたいっっっ。(><)
創真が持ってきたお弁当は、温かいのり弁。
そのお弁当にはちょっとした“仕掛け”がありました。
その“仕掛け”に、キヨお婆ちゃんの眼には涙が。
私の眼にも涙が。
あの日、創真が弁当箱で届けようとした物。
それを今回のお弁当にも詰めた創真。
おかず、汁物といき、そして審査はのり弁のメインとも言うべきご飯へ。
弁当箱の蓋を開け、中身を目にした審査員達は驚愕の表情に。
果たしてその中身とは!?
天使だ!!!!!!!!!!
天使がいるぞ!!!!!!!!!!
スクープ!
天使は田園だけでなく荒野にもいた!!!
当時から思いやりのある良い子だった創真。
もうね、創真のこの優しさは国宝級だと思う。
うっかりしていました。
「お弁当」には、“携帯できる食事”、“冷めていても美味しく食べられる”、“蓋を開けてのお楽しみ”の他にもう一つ。
“気持ちの箱詰め”という重要なイメージがあることを!!
第57話で「温もり」や「人間味」が欠けている点が示唆されていたアリスの料理。
それをアリスに教えるのは恵とばかり思っていたのですが、その役目を創真が担うことになるとは。
でも、確かに創真も適任ですよね。
創真の料理も、恵に負けず劣らず“温かい”ですから。
創真とキヨお婆ちゃんの過去エピソード。
初めてでした。
辛い話でもない。
お別れの話でもない。
心温まる話で涙が出たのは。
キヨお婆ちゃんに届けたお弁当も、“温かい”お弁当。
そっかー・・・。
前回の感想で「そろそろ創真の冷菜も見てみたい」なんて言っちゃったけど、今回の創真の弁当は「温かくした」のではなく、「温かくなければならなかった」のですね。
何も分かってなかったくせに勝手な事言っちゃって本当にごめんね、創真。
そんな可愛い天使が、よくまあこんなにも格好良く大きく成長してくれて・・・(ほろり)。
心は天使で考え方と力は魔獣。
あ、こりゃ最強だわ。
創真を見下していたからこそ、余裕の笑みを浮かべていたアリス。
そんなアリスの笑みが次第にはがれていく様は中々見応えがありました。
私から見て創真とアリスの関係は、創真とタクミの関係の逆バージョンといった感じに思えます。
創真とアリスの場合は一見親しげだけど、根本的な部分で対立し合うピリッした緊張感がある感じ。
対してタクミとの場合は、一見競争相手的な関係(といってもタクミがほぼ一方的にですが/笑)に見えるけど、根底ではお互いの事をちゃんと認め合い、料理に対する信念も似ているという安心して見守られる関係、といった感じですね。(^^)
合宿編で出会った当初から、創真の料理の姿勢を侮辱していたアリス。
そんなアリスが最も重要視しているのが「最先端の科学技術」。
ですが、最先端、最先端とこだわっているものの、それって一方向からの目線でしか見ていないのでは。
最先端と思っていたものが、ちょっと目線を変えればなんてことはない、ずっと以前から当たり前のように用いられている工夫だったりすることもあると思うのです。
皮肉にも、今回のアリスの料理がまさにその例となりました。
最先端の技術と知識によって用いた、「旨味の相乗効果」という美食理論。
それは日本の食文化からしてみれば、アリスが最も見下していた「古くからの知恵」だったという事実。
アリス・・・墓穴を掘ってしまったかも。
そして、「お弁当」というお題に対する思慮。
今回の話で浮き彫りになりましたが、アリス、「お弁当」に対する知識がかなり浅いですね。
もともと日本の一般生活の中から発展してきた「お弁当」というお題が、外国育ちなお嬢様であるアリスにとって馴染みの薄い分野だったというのは事実です。
でも、それを差し引いたとしても、アリスの「お弁当」に対する見解は甘いと感じずにはいられません。
おそらくその最大の原因は彼女の“驕り”。
「最先端の科学技術」を重視するあまり、「お弁当」の本来の持ち味、魅力、なぜこれほど発展し、親しまれてきたのかという理由に思い至らなかったこと。
それが彼女の最大の落ち度になると思います。
その点創真は、実家の定食屋で培った“経験”を充分に踏まえていますね。
弁当箱の機能やその活用法を充分に活かした品となっています。
その上で、「お弁当」という料理に求められるものを理解している様子。
おかずや汁物では、しっかりした工夫を加えながらも王道な料理を、そしてメインのご飯で、いよいよ「創真らしい」料理が披露される模様です!
アリスの手鞠寿司弁当の特色だった、「旨味の相乗効果」と「驚きの演出」。
その内の「旨味の相乗効果」を、今回のおかずと汁物で落城させた創真ののり弁。
そして次回。
アリスの料理の最後の砦である、「驚きの演出」も壊されることとなるでしょう。
そして、「温かい人間味が無い」というアリスの料理の最大の欠点も指摘されるに違いありません。
創真は今回の弁当をキヨお婆ちゃんの事を想って作ったようですが・・・。
ひょっとしたら創真はアリスに、本当の祖父である仙左衛門が食べてくれるのに、アリスは仙左衛門の事を考えて作ったのかどうかということを問いかけてくるかもしれませんね。
暗に今回の話は、第61話の「料理に心をのせるには、誰か一人、特別に想っている人を思い浮かべること」ということと関連していたかもしれません。
創真に「特別に大切な人」はまだいないかもしれない。
けど。
「大切な人」なら、創真には沢山いますから。(^^)
打ち負かすつもりでいた創真から、想像以上の返り討ちをくらいそうな気配が濃厚なアリス。
ここで指摘された自分の弱点を認め、自分の糧とすることが出来るならば大したものなのですが・・・。
そこはえりなの従姉妹。
はてさてどうなることやら。(前回の黒木場のセリフもあるしネ)
今回の話を読み進めるうちに、アリスがダークサイドに落ちるかもという不安が湧いてしまいましたが、最後のページでその不安は無くなりました。
創真の料理を食べてダークサイドに落ちるなんてことはあり得ませんから、絶対に。(^^)
どうやら期待以上の完全勝利を収めそうで非常に楽しみな次回。
創真の「御粗末!!」、心から期待しています!!!