週刊少年ジャンプ2014年20号掲載
掲載順第3位
第66話 【その箱に詰めるもの】
創真の料理『進化系のり弁』のメインである、ご飯を目にして驚愕する審査員。
そのご飯の上には、海苔でなく黒い粒が敷き詰められていました!!
うっわ・・・!!
これは完全に予想の斜め上をいきましたね!
果たしてこの粒々は一体・・・?
何とも得体の知れないその物体に、口にするのに気が引けてしまう審査員のお爺ちゃま。
ですが好奇心の方が勝り、口にする決意を。
・・・箸をシャキン☆て・・・。
なんか未知なる相手に挑む老武者みたい(笑)。
「南無三っ!!」
って
食べる時のセリフじゃありませんこれは。(^^;A)
でも。
創真の「あの」ゲテモノチャレンジスマイルを目にしてしまった我々から見れば、非常に相応しい言葉とも思えてしまう。(^^;;;A)
いざ口へ。
すると。
イクラのような弾ける触感と共に、口の中に染み出るのは海苔の旨味!!
黒い粒の正体は、海苔の旨味をアルギン酸ナトリウムと塩化カルシウムによって球場形成したものでした!!
※塩化カルシウム・・・除湿剤、融雪剤、豆腐用凝固剤、食品添加物などに使用される、至って身近な化学物質。
水に溶けやすく、海水など自然環境の中に広く存在する毒性の少ない物質として知られている。
だからと言って無害というわけではなく、皮膚や粘膜に触れると炎症や潰瘍を引き起こすので注意が必要。
アルギン酸ナトリウムは第57話でアリスが使用していたので、第57話感想を宜しければご参照になさってください。
それは間違いなく分子料理の技術!!
それをどうして創真が!?
訊かれて創真が取り出したのは、駄菓子の、人工イクラが作れる知育菓子!!
あ~~~!! あ・れ・で・す・か!!
私も昔やった覚えがありますよ!
それを考えると、知育菓子って、最も身近で、最も楽しめて、最も早くから体験出来る分子料理といえましょう!!
これは見事な着目点でした!!
観衆らと読者が納得する一方で。
のり弁に加え駄菓子も知らず。
そんなアリスはとことん箱入り娘ちゃん(笑)。
かくして、この黒い粒は味付け海苔を創真なりに進化させた海苔の旨味爆弾だったのでした。
予選のカレー料理の際は「香りの爆弾」を仕掛け、続いて今回は「旨味の爆弾」ってか☆
爆弾発言も天然でかますし。
創真ってさり気に“破壊”をステータスに持ってる子だと思う。
しかも工夫はそれだけにとどまらず。
なんとご飯が四重構造になっており、間の層にはマグロ節の佃煮が。
ここでもマグロ節を用いてきましたか!
これによって、ご飯・おかず・汁物全てに統一性が出ましたね。
おおお!そしてこのご飯への工夫で遂に!
お弁当のイメージの一つ、“蓋を開けてのお楽しみ”という項目もクリア―!!
アリスの品が「宝石箱」なら、創真の品は「宝箱」とは、非常に上手い例えですね~~~!
とてもしっくりきます。
それでもダメ出しを言うアリスですが、めっちゃのり弁をパクつきながらでは説得力なんてまるで無し(笑)。
ほんとアリスって良いキャラしてるなー。
憎めないなー。
かわいいなー。
そして今回もナレーターさんツッコみありがとう。
「旨味の相乗効果」、「分子料理の技術による驚きの演出」、そのいずれも踏破されてしまったアリスの品。
それでも〆の鯛茶漬けまで仕込んであるのは自分だけ、とアリスは言うものの・・・。
ところがどっこい。
その点までも、創真はしっかり用意していました。
創真のお弁当の〆、それは葛餡かけご飯!!
一般家庭では、料理にとろみをつける際使用するのは普通片栗粉でしょう。
ですが、片栗粉は時間の経過と共にとろみが無くなっていってしまうんですよね。
それに対して、とろみが長時間続くのが葛粉。
そしてとろみのある液体は、普通の液体よりも冷めにくいという。
とことんまでこのお弁当は、「温かさ」というものに配慮し尽くされています!!
アリスの時とは打って変わって、とても楽しげに創真のお弁当を食す審査員達。
そんな審査員達の様子に、 「弁当に詰めるべきは“心”だとでも言うつもり?」と創真に言うアリス。
ほう・・・まだ誰からも言われていないのに、“心”について自分から言ってくるなんて・・・。
どうやらアリスは自分の料理には“心(人間味)”が足りないことに気付いていたようです。
きっと、第57話で恵の料理と比べられた時から。
それでも、大事なのは美味しいかどうかであり、“心”なんて精神論は問題ではない。
そのアリスの言葉に異を唱えたのは、仙左衛門でした。
そして創真の品とアリスの品との違いについて語るわけですが・・・。
「おはだけ」状態なせいで、いま一つ締まりが無いなと思っちまうのは私だけ?(爆)
「温かさ」を維持させる創真のお弁当に対し、「冷たさ」を活かしたお弁当を出したアリス。
何故なら、お弁当は冷めるものだから。
ですが、創真はそう決めつけていませんでした。
私も当たり前のように思ってしまってました。お弁当は冷めるものだと。
だから、お弁当のイメージの一つを“冷めていても美味しく食べられる”と述べたのです。
これは“決めつけ”だったのですね。
そんな“決めつけ”に創真は対抗し、保温性能に優れた「ランチジャー」を使用して、あらゆる点において「温かい」美味しさが活かされる、楽しさや新しさが詰まったお弁当を創り上げたと。
「寿司対決であっても同じ品を出せただろう」という仙左衛門の言葉は大変分かりやすい例えでした。
アリスは自分の技術を箱に当てはめただけ。
お弁当だからこそ伝えられる美味しさ。
お弁当ならではの工夫。
それがアリスの品には無かったと。
「新しさ」も、「楽しさ」も、アリスの料理の最大の特徴であったというのに。
創真はアリスの欠点を指摘したのではなく、アリスが最も得意としていながらも見落としていた点を指摘していたのでした。
仙左衛門から全部言われちゃった創真くん(笑)。
まあまあ、その「おあがりよ」だけで充分にオイシイ所持って行ってるじゃありませんか。
そうして、アリスに〆である餡かけのり弁を差し出す創真。
「大事なのは美味しいかどうか」というアリスの最終的言い分に、自分の料理をもって示します。
差し出された餡かけのり弁を口にするアリス。
その美味しさに、アリスの胸に去来する思い。
―――こんな所で負ける訳にはいかない―――
幼少時から「神の舌」を持つえりなばかりに目が向けられ、自分は二の次に見られていたアリス。
なるほど。だから比較されることに敏感だったのですね。
予選での恵の審査の時、そうであったように。
自分も薙切家の者として、価値のある存在として見てもらいたい。
そんな周囲の暗なる比較を見返すため、幼い身でありながら自分だけの武器を手に入れるため、北欧へと渡ったアリス。
慣れない土地。
寒い世界。
それでも、えりなに勝つために。
一口口に付け。
二口。
そして三口目。
耐え切れず、夢中になってかっこむアリス。
「思うままかっこめ!」という郁魅戦に相通じるものがあります。
寒い雪降る世界の中、一人泣くアリス。
そんなアリスに差し出される、創真の料理。
ここの創真の上半身を見せない描写・・・良いですね。情緒深いです。
その料理から染み入るのは、「温もり」。
そして・・・きました。
アリスのリアクション。
はい。
もう隠す気ほとんど無しの完全なる「まっぱ」です。
はあ・・・。
・・・と言いたいところなんですが・・・。
ここまで真正面から堂々と描かれてしまうとねえ・・・。
約1年前の私だったら絶対思わなかったでしょうが、今では、こういう描写にも「意味」が感じられるようになりました。
ここのアリスの姿。
料理の「温もり」によって、“浄化”される様に見えます。
食してのリアクションをコスプレでなく一糸纏わぬ姿にさせたのも、アリスがこれまで囚われていたものからの“解放”をイメージしているのでしょう。
ふう。私もすっかりこの作品に感化されてしまったぜ☆
そうして。
審査員達の意見は全員一致。
筆を持つ仙左衛門。
点数形式だった予選とは変わって、本戦は多数決方式。
そして審査結果の発表は電光表示ではなく、仙左衛門がわざわざ勝者の名前を記入するという形の模様。
・・・リアルだったらけっこうまどろっこしいですよこれ(爆)。
でも祭典ですから、これも一つの演出のようなものなのでしょうね。
それにこの発表形式なら、4:1とか3:2などの違いを細かく比較しないで済みますし。
仙左衛門の宣言と共に掲げられる勝者の名前。
それは幸平創真!!!
もうね。
第60話で癒されたものの、葉山戦での悔しさが今回で思いっきり挽回出来たといった感じ!!
それぐらい、創真がバリバリ全開で快勝を収めてくれました!!
アリスの料理の最大の特徴である分子技術に、独自の視点から対抗策を見つけ出した創真。
丸井も言っていましたが、分子技術というとまだまだ料理への活用が開拓されていない、一般生活に馴染みの薄い分野と思っていたのですが、やはり、視点を変えてみると分かる事ってあるものですね。
まさかこんなにも身近な所にある技術でもあったとは!!
少し視点を変えるだけで、こんなにも色々な事に気付かされるんだなんて・・・。
本当に、なんてこの漫画は面白いのでしょう!!
そして、指摘されるに違いないともはや確信さえしていた、「温かい人間味が無い」というアリスの料理の最大の欠点。
創真の料理の「温かさ」に関連させて、その精神論が語られるとばかり思っていたのですが・・・。
裏切られました。非常に良い意味で。
まさか「温かさ」から、「お弁当のこれまでの“常識”を覆す工夫」へと繋げてくるんだなんて!!
それを考えると、前回のキヨお婆ちゃんの回想は物凄く巧みなミスリードでしたね。いや~完全にやられました!!
それでもそこはやはり創真。
直接的な言葉ではなく、己の「温かい」料理を通してアリスに「温もり」を与えたというのが、もう流石としか言えません。
料理を通したアリスの「寒さ」と創真の「温かさ」。
その絡みが大変秀逸でした。
偶然か意図的だったかは分かりませんが、これまでのアリスの料理が全て「冷たい」品だったこと、そして創真の品もこれまでずっと「温かい」品だったことが、よりこの二人の違いを確たるものとしていましたね。
・・・もし意図的に仕組んでいたのだとしたら、凄いなんてもんじゃねえぞ附田先生。
・・・てっきり創真の「温かさ」によって、「冷たさ」が溶かされるのはえりなとばかり思ってたのになあ・・・。
まさかアリスとの勝負で、このエピソードが用いられるとは思いもしませんでしたよ。
北欧育ち。
白い肌と髪。
既にこれらは語られていたものの、今回でようやく理解。
創真は「荒野」、恵は「田園」というイメージがあるのと同様に、アリスのイメージって「雪」なのですね。
綺麗だけど冷たい、でも柔らかいという。
そしてえりなは「氷(氷山)」。同じく綺麗で冷たい、そして硬いという。
マイペースで裏表の無いアリス。
そんな彼女のこれまでの表情に“嘘”は無かったと思います。
それでも。
ようやく彼女の“本当”の顔が見れたような気がしますね。(^^)
果てさて、創真に完敗を喫したアリス。
そんな彼女がどう出るかは次回への持ち越しになりました。
果たしてこれまでの関係からどう変化するのでしょうかね?
もし郁魅と同じパターンになるとしたら、どこをどう見ても仲の良い友達にしか見えない関係になっちゃうでしょうね~。
アリスはお喋り好きそうだし、創真の会話の得意さは本人も周囲も読者(笑)も認める所だし。
今回の勝負の中でのやり取りから、一般常識について疎いアリスが、創真と世間話を弾ませる様子が簡単に目に浮かんでしまいます。(^^)
個人的にはタクミとは違う形で、良き友であり良きライバルな関係になってくれたら、とっても嬉しいんですけども。
でも、「今度こそは負けないんだから~!(>o<。)」とか言って、子どもっぽくムキになっちゃう流れもあり得そう。
それはそれで別に構わないのですがね。
創真に対する冷たい見下しさえ無くなればそれで良いんです。(←とことん創真至上主義者)
そして今回の件でえりなは、そして黒木場はどう思うのでしょうか。
特に黒木場は個人的に注目している存在なので、結構気になります。
そして今回、ほんっと~~~にひっさし振りの「御粗末!!」を披露してくれた創真。
彼の「御粗末!!」を最後に見たのはいつだったでしょう・・・。
第38話の唐揚げ編決着からだから・・・リアル時間で半年以上前!!
ふえ~~~ん!!
そりゃ禁断症状も出るよね!!(え?私だけ?)
葉山戦での敗北に加え、この長期間の我慢もあっただけに、今回の完全勝利はひとしおでした!(><。)
「弁当は冷めるもの」という思い込みに対抗するという、先入観の無さ。
身近な駄菓子から分子料理への着想を得るという、自由な発想。
「のり弁」に科学技術を組み合わせるという、定番を踏まえた上での斬新な工夫。
何より、「温かさ」を通した思い遣り。
文句無しの「創真らしい」料理で掴み取った今回の勝利は、喜びもさることながらとても感慨深くもありました。
改めて、創真の料理って本当に良いですね。
郁魅戦(初の食戟)とほぼ同じ流れだった今回。
ですが。
あの時よりも確実にストーリー作りの“深み”が増していましたね。
その一方で、あの時より確実に料理人としての腕を上げている創真。
だけど。
相手の“欠点”を指摘するのではなく、相手が“見落としていた部分”を気付かせ、そして己の料理で相手が本当に求めていたものを伝えるという姿勢は、当時と何ら変わっていません。
“変わらないでいてくれる良い所”と“より良く変わっていくもの”。
それらが作品自体と主人公を通して示されていました!!
まったくもって天晴れです!!!
そして次回は早くも恵の出番の模様。
果たして、対戦相手は新戸かもという、私の予想は当たるでしょうか。
それでは最後に。
第一回戦完全勝利おめでとー!!!!!