あまぐりころころ

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時に旅行記等も交えながらの、のんびりのほほんブログ。

『食戟のソーマ』第168話感想

2016-06-11 23:50:00 | 食戟のソーマ

 ああ・・・。
 自宅でいつでもネットが出来るって素晴らしい・・・。





 週刊少年ジャンプ2016年26号掲載
 掲載順第5位
 第168話 【出会いの日】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見た瞬間ドキッとさせられましたね。
 今回のカラー扉絵には。

 創真とえりなが背中合わせというのはこれまで何度も描かれてきた構図ですが、えりなが素顔とも言える繊細な表情になっているのは初のことです。
 このイラストの何が巧いって、創真の鉢巻きが軽くえりなに掛かっているというところ。
 創真とえりなの運命的な“繋がり”。
 そして創真に影響を受け始めているえりなの心情。
 それが創真の鉢巻きによって巧みに暗示されています。
 まったくもう、佐伯先生は読者の気持ちをくすぐらせてくれる描写の達人ですね☆





 予期していなかったえりなの訪問。

 一体何の用だったかというと・・・。
 取っ掛かりが相手の批判って、どんだけコミュ障なんだよこのお嬢様は(呆)。
 裏を返せば、創真を支持しなかったことに少なからぬ負い目を感じていたという証拠なんですけどね。
 それでもこの余計な発言には個人的にイラッとしましたが。

 勿論えりなはそんな文句を言いにわざわざやって来たわけではなく、話したいことが別にありました。
 しばしの沈黙の後、えりなが語り始めたのは自分の過去。
 「ある日」まで、自分は料理というものに何の情熱も持っていなかったと―――





 生まれながらにして[神の舌]という才能を発現させていたえりなは、幼い頃から既に味見の仕事を請け負う日々を送っていました。
 それにしても不味い不味い言いすぎです。
 少しは良い点も述べなさい。

 ※ベニエ・・・衣を付けて油で揚げた物。
       [フリット](第161話)とは別。

 ジュ・・・英語で肉汁のこと。
      沢山の水分とある程度の時間をかけて煮出す[フォン]とは違い、素材が隠れる程度の少量の水分を加え、短時間で煮出すのが特徴。

 ブロード・・・イタリア語で出汁のこと。
        日本ではブイヨンと呼ばれることが多い。
        イタリア料理における[ブロード]は、使用する材料によって「肉のブロード」、「魚介のブロード」、「野菜のブロード」に大きく分別される。

 ちなみに[フォン]と[ブイヨン]の違いについては第82話をご覧くださいませ。(m(_ _)m)


 そんな連日働き続けるえりなを仙左衛門は気にかけてくれていましたが、えりなは薙切家のためにと不平不満を言わずに勤め続けていました。
 おびただしい料理を相手に、味に絶望し続ける日々を送っていたとしても。


 以前から思っていた事ではありましたが、遂に作中でも[神の舌]のマイナス部分について描かれましたか。
 「絶対音感」の味覚版とも言えるのが[神の舌]なわけですが、いつぞやのテレビ番組内で、絶対音感を持つ方が仰っていました。
 全ての音を逐一正確に把握してしまうため、音楽を聴きながらゆっくりするということが出来ないと。
 そういった感覚的能力というものは、専門分野で発揮する場合はこれ以上ないほど強力な武器になりますが、日常生活においてはかなり厄介な負担になるんですよね。
 普通の人が大まかに感じ取る刺激を詳細かつ論理的に受け止めてしまうため、あまりに長くその刺激を受け続けると気疲れしてしまうという。
 それが感覚的能力の大きなデメリット。
 そしてえりなはその出生故に、その能力をひっきりなしに使わされ続けることになってしまったわけです。



 そんな絶望の日々を送っていた時に出会ったのが、城一郎でした。
 どうやら城一郎はお忍びで仙左衛門に料理を作りに来た模様。
 わざわざ人払いをするほどとは、よっぽどの事情があったりするのでしょうか?
 なにせ城一郎が『ゆきひら』で暮らしていたことは薊はおろか、堂島先輩やふみ緒さんですら知らなかったことですしね~。

 それにしても、私としてはえりなと城一郎が出会ったのは薊の洗脳後で、仙左衛門の計らいによるものではないかと考えていたのでしたが、二人の出会いは本当に偶然だったのですね☆
 ということは、薊の推測は完全な「勘違い」である可能性がま~た大幅に高まったわけです★


 城一郎と仙左衛門の会食の様子を隠れて見ていたえりなでしたが、お腹の虫の訴えによって見つかってしまいます(苦笑)。
 えりなは素直に退席しようとしますが、お腹の虫は我儘でした。(苦笑&苦笑)
 ここのシーン、お爺ちゃんと孫のやり取りといった感じで微笑ましいな~。(^^)
 そんな空腹なえりなに、城一郎は一緒に食べることを勧めたのでした。

 出された品はというと・・・、お~『ガレット』ですか。
 ※ガレット・・・フランスの郷土料理で、「丸く薄いもの」という意味を持つ。
         クレープの元となった料理だが、クレープは小麦粉を材料とするのに対し、ガレットは蕎麦粉。
         蕎麦粉・塩・水等を混ぜて寝かせた生地を平鍋または専用の鉄板に薄い円形状に伸ばし、中央に肉類や魚介類、チーズや卵などを載せて正方形に折りたたんで作られる。

 その味に感動を覚えるえりな。
 それはまるで、心の奥から温かさが広がっていくような味でした。

 こうして、とても楽しい時を過ごしたえりな。
 それがえりなにとって初めて、料理を素晴らしいと思えた時だったという。

 ですが。
 そんな“希望”を知って半年ほど経った頃・・・
 薊の“教育”が始まってしまったのでした。





 そんな過去を話し終え・・・
 えりなは自白します。
 城一郎の料理を食べた時の感動は今も覚えている。
 だけど

 の言う理念の正しさも私にはわかると。

 

 

 

 

でしょうね。 

 

 

 

 だって。



 薊がやっていることは、えりながこれまでやってきたことと大して変わりませんもの。

 

 

 どうしようもなく不出来な料理が世の中に溢れていることを物心がついた頃から散々思い知らされてきたえりなにとって、不出来な料理を撤廃しようとする薊の考えは共感できるものだったわけです。

 なるほどね。
 欠点が全て分かってしまう能力を持つが故に、そう思ってしまうのは仕方ないことかもしれません。
 だけど一つだけ問いたい。

 どうして「不出来なもの=排除すべきもの」と言い切れるの?

 作中では今のところ、えりなの排他的で否定的な思想は全て薊の洗脳が原因のように描かれていますが、そう一概には言えないと思います。
 薊が施した洗脳は、えりなが料理に対して元々抱いていた絶望をより徹底的に、より容赦なくさせただけ。
 だからこそ厄介なわけです。



 えりなはわからなくなってしまったのでした。

 自分にとって、料理とは何だったのかということを。

 素晴らしいものなのか。
 それとも、粛清すべきものなのか。



 一通り創真に打ち明けたえりなは我に返り、一方的に相談してしまった事を詫びます。

 ・・・もう一度言いましょう。

 詫びました。えりなが。創真に。

 誰かボイスレコーダー持ってきて!!(←)



 退室しようとしたえりなを呼び止める創真。

 創真は提案します。
 もう一度味わってみればいいのでは?と。

 ゆきひら』の料理を、今、ここで。

 

 

 ここの創真さん・・・

 美少年以外の何者でもないね。(←アホ)

 

 


 

 

 前回の予想・・・見事に空振り大外れ★
 お恥ずかしい・・・。(orz)

 てっきり私としては えりなが創真の元を訪れたのは「進級試験を始め、次々襲い掛かってくるであろう試練を前にしても闘う意思を曲げないのか」ということを訊くためと思っていたんですよね。
 司とのあのような一件があったばかりですし。
 ですが実際は、それほど自発的な理由ではありませんでした。

 ここで大きな疑問になるのは、何故これほどの本音を他の誰でもなく創真に話したのかということなんですよね。
 もっとも付き合いが長く、もっとも心を許している筈の新戸も傍にいるというのに、どうしてつい最近まで一方的に嫌悪していた創真に相談したのか。
 それを考えてみたところ、ネガティブな理由しか考え付きませんでした。

 やはり理由として考えられるのは、創真が城一郎の息子だから。
 えりなにとって、城一郎はずっと自らの料理の価値観を支えてきた存在でした。
 ですが、食べた品が高級料理だったために、「高級料理こそが城一郎の料理」と勝手に思い込んでしまっていたという。
 それ故に、「高級」とはかけ離れた料理や姿勢を持つ創真をこれまでひたすら否定していたわけです。
 ところが。
 創真と城一郎が親子という事実を知ったことによって、「城一郎の料理⇒完璧な料理⇒高級料理」という図式が崩れてしまう事に。
 それによってえりなはこれまで自分を支えていた拠り所が分からなくなってしまったわけです。

 そんなえりなは多分、「教示」が欲しかったのでしょう。
 創真やアリスから言われたことで「自分」を見つめ直し始めたものの、これまでの拠り所、ひいては“原点”が揺らいでしまった事で明確な「答え」が出せなくなってしまったのでしょうね。
 それだけ、彼女の“土台”は非常に不安定なものだったわけです。
 そんな不安定で脆弱になってしまっている自分を、えりなは誰かから導いてもらいたかったのかもしれません。

 でも。
 今えりなの周囲にいる人物達は皆、薊に対して敵対心を持っているわけで。
 そんな人達に自分の本音を打ち明けてしまったら、否定されるに決まっている。
 だからと言って。
 自分の絶対的な味方である新戸にも話す気にはなれなかった。
 何故なら、新戸はえりなの全てを肯定するばかりであろうから。
 これが女の業。
 「否定」されるのは怖いけど、「肯定」されるだけというのも不安という。
 だからこそえりなは、自分のこれまでの拠り所であった城一郎に最も近い存在である創真に縋ってしまったのでしょう。

 ・・・私からしてみれば、それは甘えや弱さでしかありませんがね。
 ついこの前まで創真を否定するは侮辱するはで散々な態度を取っていたというのに、自分のアイデンティティーが揺らいだら相談しに行くなんて、ちょっと虫の良い話に思えてしまいます。
 とはいっても、きちんと詫びたり素直に本音を口にしているので、非難するつもりは特にありませんけど。



 そんなえりなに創真はどう対応したかというと・・・。
 「否定」も「肯定」もしませんでした。
 だけど、「教示」もしませんでした。
 ただもう一度『ゆきひら』の料理を食べてみろと提案しただけだったという。

 これは非常に創真らしいです。(^^)

 創真は料理で語る人物ですから。

 それに。

 創真は本当に温かいながらも、決して甘くはない人物ですしね。





 そういうわけで、えりなの口から城一郎との出会いが語られたわけですが・・・
 それに関連付けてえりなというキャラを随分と掘り下げてきましたね。
 これには好感触です。
 そうです。
 こういう丁寧なキャラクター描写こそが附田先生の最大の長所なんですよ。(^^)

 出生と天賦の才の合致が仇となり、料理を食べることに楽しさや充実感を一切感じていなかったえりな。

これは不味い。

 言い換えれば、
 これはいけない。

 何故ならば。
 食べる”ことは“生きる”ことですもの。
 
 そんな“食べる”という行為に幸福感を抱けないということは
 “生きる”ことに幸福感を抱いていないことと同義です。

 ふ~む・・・。
 『ジャンプ流!vol.10』での附田先生のコメントから考えて、えりなは附田先生が最も大切にしているメッセージに正面から対峙しているキャラと言えるのですね。


 そんなえりなが生きることの原動力とも言える「食欲」を湧かせられたのが、城一郎の料理だったという。
 そしてえりなは初めて“食べる”ことに楽しさや喜びを感じられたわけですが、彼女がそれほど城一郎の料理に惹かれたのは、城一郎の料理が技術だけでなく“心”も込められていたものだったからだと思います。
 えりなはこれまで数多の美食を口にしてきましたが、そのほとんどがビジネスとしての品で、純にえりなのためにと作られた料理ではないのですよね。

 離乳食でさえ、学園の講師陣が作った品しか口にしなかったというえりな。(第20話参照)
 そんな彼女は、普通の子供なら当たり前のように与えられる食事である、親の愛情が込められた料理、言うなれば「家庭の味」をほとんど知らないのではないでしょうか。
 「家庭の味」。それは料理への価値観を根本的に支える“土台”といえます。
 その意味での“土台”も形成されていなかったからこそ、えりなはこれほどまでに不安定に葛藤し続けているのでしょう。
 
 だからこそ創真の料理は大変大きな意味を持つわけです。
 主要人物三人(創真・えりな・恵)の中で、創真は“中間”のキャラだということを至る所でちょくちょく述べている私ですが、この場合も当て嵌まるんですよね。
 えりなの料理は完璧をモットーとしたうえでの「プロの味」。
 恵の料理は心遣いに満ちた「家庭の味」なわけですが・・・。
 創真の料理はそんな「プロの味」と「家庭の味」どちらも併せ持っています。
 それもひとえに
 創真は「大衆料理屋」という、「プロの世界」でありながら「家庭料理」を提供する店の出身だから。





 幼少時から、まるで口癖のように料理を不味い不味いと言いまくっていたえりな。
 ですが、意外にも彼女はあれほど憧れている城一郎の料理にさえも「美味しい」とは言っていませんでした。
 
この事実は創真の「あの目的」をより明確にさせたと言えます。
 それは勿論、「えりなに「美味い」と言わせる」という決意。

 そんな創真がえりなのために作ってくれる料理は、果たしてどんなものになるのでしょうか?

 

 


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