ねこ絵描き岡田千夏のねこまんが、ねこイラスト、時々エッセイ
猫と千夏とエトセトラ
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猫も中年の恋
2006年11月03日 / 猫
ポチが最初実家にやってきたとき、もとから家にいたチャプリと折り合いが悪く、よく体の大きいポチがチャプリを追いかけていじめていた。だが同じ敷地で一緒に暮らすうち、二匹の間にあったわだかまりは次第にとけて、すっかり仲良しになった。よく一緒にいるところを見かける。二匹寄り添って日向ぼっこをしていたり、ひとつの段ボール箱でぎゅうぎゅうになって眠っていたり。
チャプリは今年七歳。ポチと出会うまでは、孤独を好む猫だった。ポチの年齢はわからないが、毛並みの状態などから、それほど若くはないと思われる。猫だって中年の恋、なのだ。
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鴨川のトンビ
2006年11月02日 / 鳥
私も被害にあった。いつだったか、日本海側のどこかの砂浜に座って菓子を食べていたときだ。上空を舞っていたトンビが不穏な動きをしたと思うと、痛い、菓子を持っていた手に衝撃が走った。一瞬何が起こったのかわからなかったが、トンビが手の菓子を狙って急降下し、菓子を掴もうとしたその足が私の親指にぶつかったのであった。トンビは菓子を取りそこなって再び空へ舞い上がった。私は大急ぎで菓子をカバンにしまい、その後、トンビから目が離せなかった。
その海岸で、トンビにエサをやっている人がいた。その人の周りには何羽ものトンビがぐるぐると旋回し、投げ上げられたエサに向かって空中を滑るように突き進んでは上手にエサを取っていた。まず足で掴んでキャッチし、飛びながら器用にくちばしに渡して食べる。
冬の鴨川に飛来するユリカモメには何度もパン切れをやったことがあるのだが、トンビにエサをやったことはない。ぎゃあぎゃあと騒がしく鳴くカモメにパンをやるのはなかなか面白いが、トンビにはカモメにはない迫力とスリルがありそうだ。トンビのエサやりをぜひやってみたいのだが、トンビは何を食べるのだろう。猛禽類であるからやはり肉食なのだろうか。
ある日鴨川を散歩していたら、小さな犬を連れたおじさんがトンビにエサをやっていた。犬は突付かれないのだろうかと思いながら、エサに何をあげているのか聞いてみた。
「パンです。結構迫力あって面白いよ」
カモメと同じ、パン切れでよかったのだ。今はよちよち歩きの息子がもう少し大きくなったら、一緒にトンビにパンをやりに行こうと思う。
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つい出てしまうにゃんこの手
2006年11月01日 / 猫
実家で一番言うことを聞かないのが、このトラ猫ネロである。少年時代のやんちゃぶりは年を取っておさまったが、年を重ねた分嗜好の幅が広がり、夕食に刺身でも出ようものなら、食卓に上って大変なことになる。言うことを聞かないから、無理やり降ろしても叱っても、何度でも上ってくる。仕方がないので、ご馳走の一部をお皿に分けて別室でやり、こちらは扉を閉めておかないと落ち着いて食事ができない。ネロの好みは幅広く、魚から鶏肉、ハム、さらには野菜まで食べる。鰹節のかかった菜っ葉のおひたしが好みである。
もっとも好物の品がなくても、家族が食事に集まると、ネロも食卓に上がってくる。これは、ちょうど猫の集会(注)に出席しているつもりなのではないかと思われる。ネロは室内飼いで、猫の町内会には出席できないのだ。どんなに眠くてもまるで義務だとでも言うように、私たちと一緒に食卓を囲んで輪になって、うとうとしながら座っている。食事のときに限らず、家族の者が集まって話をしていたりすると、決まってネロはやってくる。
人が見ていないと、こっそり皿に手をつけてしまうネロだが、毎度のように叱られるので、それが悪いことだとはわかっているようだ。ちょっとかじったところで、あ、しまったと気づくのか、ぺろりと食べることはない。また、いつも反抗的なネロが、叱られるときにはしゅんとしている。悪いと分かっていながら、ついつい、猫の手が出てしまうのだろう。
(注)猫には、同じ地域に住む猫が、夕方や夜、公園などいつも一定の場所に集まる習性がある。これを「猫の集会」と呼ぶ。集まって何をするかというと、特に何をしているわけでもなさそうである。ただ集まって、座っている。情報交換や顔見せが目的であると考えられている。
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