さて、ラストにご紹介するのは、大塚みどりさん。
(またしても隠し撮り。ゴメン!)
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彼女は私の大切な「相方」です。
あの、普通、芝居では「相手役」と言います。
「相方」っていうのは、漫才ですね。
だけど、いや、だから、
今回は「相方」です。
だって、出演シーンのほとんどが、
彼女と2人っきり。
究極の2人芝居、というより、ま、漫才ですな。
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汗だくで、喋りまくって、走り回って、
初めての漫才に挑みます、みたいな状態です
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我々の役は、前にも書きましたが、
落ちこぼれの、見習い神様。
六道能化といって、ちゃんと昇進すれば、
<地蔵菩薩>様・・・なのです!
だけど結局、あんまりマジメに働かないで、
ホームグラウンドの黄泉の国で、
ふーらふーらしてるから、
いつまでたっても、見習い止まり。
ん?
「見習いなのに、若くないの?」
とか思った奴は誰だっ!
いいのっ!
神様は何百年でも生きるんだから、
トシなんて超越してるのっ!
・・・って、何を1人でコーフンしてるんだ?
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はい、とにかくオバサンです。それは認めます。
オバサン2人で、まぁにぎやかに、
漫才みたいなノリの芝居をいたします。
そんな彼女も、私と一緒で(オバサンはダメを覚えきれないので)、
レコーダーでダメ出しを録音しています。
それと同時に、ものすごい勢いで、
ダメ出しをノートに書いていきます。
だから、彼女の台本はさぞや真っ黒・・・、
と思いきや、
何の気なしにのぞいてみると、
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これもちゃんとはお見せできないのですが、
余白部分に赤鉛筆で、<>や→を使って、
整然と書き直されているんです。
まさに、授業で先生が黒板に書く「板書」そのもの。
これなら一瞬で、必要なことが体系的にわかります。
稽古場で書き散らしたダメ出しと、
レコーダーで録音したダメ出しを、
もう一度、総合的にまとめ直しているんですね。
私と一緒に、
コメディエンヌ丸出しで走り回っている彼女は、
実は、れっきとした女性経営者。
つまり会社の社長さんなんです。
フルタイムで社長業をこなしながら、
稽古して、こんな台本まで作って、
当然自主練もしてるだろうし、
主婦業もやって・・・。
それもね、彼女、
役者としてのキャリアはあまりないんです。
つまり、年をとってから、芝居を始めた人なんですね。
それなのに、まったく甘えがない。
今回の役は、膨大な台詞を、フルスピードで喋るという、
我々の年代には、けっこう過酷な役なんですが、
私より台詞が多いのに、私より早く台詞を覚えてきました。
(ついでに言えば、トシも私より上なのに)
これってね、稀有なことなんです。
なぜ稀有なことなのか、といいますと・・・、
中高年の新人の役者さんで、
彼女みたいに、ひたむきに頑張る人って、
きわめて珍しいんです。
実は・・・今流行りなのかもしれませんが、
シルバー演劇とでもいうんでしょうか。
年をとってから芝居を始める人がすごく多くて、
それが演劇界の<由々しき問題>になってまして。
・・・って、
こういうことは書くべきじゃないんでしょうね。
だから、書いちゃいます(笑)
実は、ここだけのハナシ(って公的なブログに書くか?)
年をとってから芝居を始めた方とは、
あまりご一緒したくないんです。
まず、ほとんど基礎ができてない。
中高年対象の演劇教室は、
ゆるーいところが多いようで、
とにかく演技は学芸会レベル。
それなのに、まぁ、威張る威張る。
主役の若者をアゴで使い、
演出家のダメ出しに文句をいい、
みんなが働いていても働かず、
稽古中に平気でお喋り。
全員・・・ではありませんが、
実はかなり多いんです。
いや、自分たちで楽しくやる分には、
なんの文句もないんですけど、
プロの世界に紛れ込むと、いやはや、もう、
とんでもないことになったりします。
(けっこう、たまってるモンがあったりする)
でも彼女は違います。
常に真摯に芝居に向き合い、
率先して働き、
若者にも「私の方が新人だから」と頭を下げる。
謙虚に、でも貪欲に、芝居に向かっています。
結局ね~、そういう人は、
ちゃんと芝居も上達するんですね~。
とはいえ、
今、彼女は、ダメ出しの渦中にいます。
演出の久間さんは、キャリアなんて気にしません。
求めるレベルに到達するまで、妥協は一切ありません。
当然のことではあれど、横で聞きながら、
きついだろうなぁと思ったりもします。
でも、絶対に愚痴も言わなきゃ、卑屈にもならない。
やるしかない、ってことがわかってるから。
かっこいいです。
そんな彼女に頭が下がるのと共に、
<中高年のあるべき姿>
みたいなものも、
思わずマジメに考えちゃいました。
単にトシをとってるだけじゃぁ、
何の価値にもならないんだよなぁ。
我々、中高年、みっともない姿を晒さないように、
頑張っていかなきゃね!
あ、そうそう、もう1人の中高年メンバー、
70歳の北澤雅章さんも、年をとってから始めた方ですが、
彼も若者と同じように頑張るおじいちゃまです。
それもそのはず。
所属のさいたまゴールドシアターでは、
下から3番目の若さなのだとか。
「だから俺なんか、いつもパシリだよ」
おおっ、70歳は若手なんだ~
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世界は広いわ~。
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演劇集団東京ストーリーテラー公演
TST CLASSICS 「紅い華のデジャヴュー」
詳細はこちらに
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