愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

地域性はあるか

2010年05月09日 | Weblog
現在上海万博が開催されています。愛知万博開催から5年経ちましたが,あの騒動を懐かしみながら,上海万博の報道に接しています。

上海万博では一部お客さんのマナー問題でトラブルが起きたと報じられています。中国におけるこの問題は北京オリンピックが始まる前から繰り返し報じられてきました。とくに列に並んで待つことができない人々が悶着を起こすので,いかにきちんと並ばせるかということに政府や主催者が腐心しているという報道が,中国に対する嘲笑を含んで,日本で流されてきました。

さて,今,私はリニモ(東部丘陵線)で通勤しています。ここでの体験は中国を笑えなくしてしまいます。毎朝,混雑時,藤が丘駅で乗車指導が駅員によって展開されているのです。「二列になって並んでください」「前の人との間隔をあけずに並んでください」というアナウンスが列車ごとに流され,さらに駅員による個別指導が行われます。乗車後も,「入り口付近に立ち止まらずに奥まで進んでください」「あいている席にきちんと座ってください」「座席に荷物を置かないでください」という指導があります。毎日しつこい指導があるのは,名古屋の人々(ここに集う人も含め)に乗車マナーが身についていないからでしょう。実際,往き(藤が丘駅乗車)では何とか指導に従ったとしても,帰りでは元の木阿弥だったりします。ちなみに,リニモは愛知万博のために作られた路線です。

これは別段リニモに限られないかもしれません。名古屋で地下鉄に乗ると,「入り口付近に立ち止まらずに奥まで進んでください」というアナウンスをしょっちゅう聞きます。十年前にこちらに移住したときにそのアナウンスに驚いた記憶がありますが,いまだに繰り返されています。東京や大阪で,私の知る限りそんなアナウンスを聞いたことはありません。そして,あいかわらず入り口付近に立ち止まる人が多いので,下車時に押し合いへし合いして混乱しています。総じていうと,名古屋は交通マナーの悪い都市という印象を持っています。名古屋の人々は混雑への適応方法を学習していない(しない)とも思います。

ある意味,これが地域性というものなのでしょう。いまうちのゼミで,卒論において,名古屋人の装いの地域性をあぶりだせないかと考え始めている学生がいます。服装についても,名古屋ならではの特徴があるでしょう。かつて「名古屋嬢」というのが騒がれたことがありましたが,それは名古屋的だったのかもしれません。

問題は,その地域性を客観的に何らかのデータによって示すことができるかということです。多くの地域性を扱う論評は,印象論で終わっています。以上の乗車マナーの話もそれにとどまっています。では,例えば乗車マナーに関する地域性をあぶりだすにはどうすればいいのでしょうか。都市ごとに,乗車に関するアナウンスについてそのメッセージ内容や頻度を集計する,乗車列の長さや形状を記録する,列に並ばずに横入りする人の数をカウントするなど色々考えられるでしょう。

実はこのような調査研究は古くからあります。今和次郎という学者が考現学というのを提唱して,日常風景や風俗を観察調査しました。人々の振る舞いや装いを徹底して記録していくのです。考現学はマーケティングの研究や実務に活かせる手法・発想を持っています。ゼミ生には,単なる印象論で終わらず,地域性を客観的にあぶりだす調査をして欲しいと思っています。
コメント
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