毎年恒例卒業生に贈る言葉。今年は以下の言葉を卒業生に贈ります。
「穴を深く掘るには幅がいる。」
専門家が深く進むのは当然だが、狭くなるとは不可解だ。ほんとうに深まるためには、隣接の領域に立ち入りながら、だんだん幅を広げてゆかなければならない。深さに比例して幅が必要になる。つまり真の専門化とは深く広くすることだ。そうして、この深く広くの極限が総合化になるのだ(土光敏夫『新訂経営の行動指針』産能大学出版部、1996年、128-129ページ)。
土光敏夫さんの名言です。土光さんのことを知る今年度の卒業生はほとんどいないでしょう。しかし、私の世代やその上の世代の方々には大変著名な経済人です。石川島重工業(石川島播磨重工業)社長、東芝社長・会長を歴任し、これらの会社を再建したことで有名です。さらに経団連会長を務めたのちに、1980年代第二次臨時行政調査会長に就任し、政府のご意見番として、財政再建や三公社(国鉄、電電公社、専売公社)の民営化の推進役として活躍しました。JR、NTT、JTはこの三公社の民営化から生まれました。
土光さんは質素倹約を心がけ、華美な生活を避けたことから庶民派の財界リーダーとして人気がありました。大企業のトップにもかかわらず、バス・電車通勤をしていました。また、めざしの土光さんと呼ばれました(夕食にめざしを好んで食べたことから)。土光さんは仕事のあり方について様々な名言を残しています。そのうちの一つが上記の言葉です。
卒業生の皆さんは将来的に何らかの専門家になることを求められます。「この問題だったら、彼に相談すれば解決策が授けられる」「この分野は彼女より詳しい人は周りにいない」。このような評価を得られるようになれば、社会で必要な人材として重宝され、生き残っていけます。
是非専門家になれるように日々努力を重ねてほしいと思います。ただし、その際に留意してほしいのは、狭い領域で経験を積み、知識を蓄積すれば、ひとかどの専門家になれるのかといえば、そうではないということです。併せて、広く様々な分野で経験を積み、知識を得る必要があるのです。
幅広い経験や知識によって、多面的に問題に対する解決策を検討することができるようになります。通常、ある問題の答えを出すための解決策は複数存在します。また解決策は異分野からももたらされます。様々な解決策を客観的に評価してどれが良い解決策となる得るのか検討することが専門家には求められます。しかし、狭い領域の少数の解決策しか知らなければ、それが本当に妥当な解決策なのかどうなのか検討することさえできずに解決を図ることになります。非効率な解決策を採用し続けるかもしれません。公平で客観的な判断のできない専門家は、本当の専門家ではありません。
卒業生の皆さん。様々な知識を得て、多様なものの見方をできるように、様々な経験と勉強を重ねてください。人生に無駄はありません。一見無駄なことも多様なものの見方を獲得するチャンスになります。
最後にもう一つ土光さんの名言を紹介。「自分を他者と比べるな。比較は自分自身とだけやればよい」(前掲書、190ページ)。追い求めてほしいのは自己の成長であり、自己の目標の達成です。
「穴を深く掘るには幅がいる。」
専門家が深く進むのは当然だが、狭くなるとは不可解だ。ほんとうに深まるためには、隣接の領域に立ち入りながら、だんだん幅を広げてゆかなければならない。深さに比例して幅が必要になる。つまり真の専門化とは深く広くすることだ。そうして、この深く広くの極限が総合化になるのだ(土光敏夫『新訂経営の行動指針』産能大学出版部、1996年、128-129ページ)。
土光敏夫さんの名言です。土光さんのことを知る今年度の卒業生はほとんどいないでしょう。しかし、私の世代やその上の世代の方々には大変著名な経済人です。石川島重工業(石川島播磨重工業)社長、東芝社長・会長を歴任し、これらの会社を再建したことで有名です。さらに経団連会長を務めたのちに、1980年代第二次臨時行政調査会長に就任し、政府のご意見番として、財政再建や三公社(国鉄、電電公社、専売公社)の民営化の推進役として活躍しました。JR、NTT、JTはこの三公社の民営化から生まれました。
土光さんは質素倹約を心がけ、華美な生活を避けたことから庶民派の財界リーダーとして人気がありました。大企業のトップにもかかわらず、バス・電車通勤をしていました。また、めざしの土光さんと呼ばれました(夕食にめざしを好んで食べたことから)。土光さんは仕事のあり方について様々な名言を残しています。そのうちの一つが上記の言葉です。
卒業生の皆さんは将来的に何らかの専門家になることを求められます。「この問題だったら、彼に相談すれば解決策が授けられる」「この分野は彼女より詳しい人は周りにいない」。このような評価を得られるようになれば、社会で必要な人材として重宝され、生き残っていけます。
是非専門家になれるように日々努力を重ねてほしいと思います。ただし、その際に留意してほしいのは、狭い領域で経験を積み、知識を蓄積すれば、ひとかどの専門家になれるのかといえば、そうではないということです。併せて、広く様々な分野で経験を積み、知識を得る必要があるのです。
幅広い経験や知識によって、多面的に問題に対する解決策を検討することができるようになります。通常、ある問題の答えを出すための解決策は複数存在します。また解決策は異分野からももたらされます。様々な解決策を客観的に評価してどれが良い解決策となる得るのか検討することが専門家には求められます。しかし、狭い領域の少数の解決策しか知らなければ、それが本当に妥当な解決策なのかどうなのか検討することさえできずに解決を図ることになります。非効率な解決策を採用し続けるかもしれません。公平で客観的な判断のできない専門家は、本当の専門家ではありません。
卒業生の皆さん。様々な知識を得て、多様なものの見方をできるように、様々な経験と勉強を重ねてください。人生に無駄はありません。一見無駄なことも多様なものの見方を獲得するチャンスになります。
最後にもう一つ土光さんの名言を紹介。「自分を他者と比べるな。比較は自分自身とだけやればよい」(前掲書、190ページ)。追い求めてほしいのは自己の成長であり、自己の目標の達成です。