先日の天声人語に、東洋大学主催の現代学生百人一首が紹介されていました。10点の作品が取り上げられていたのですが、どれもみずみずしい感性に富んだ高校生や中学生の作品で心に残りました。若さゆえに敏感に純粋に社会や自分を見つめていることに、青春という生の鼓動を感じました。
取り上げられた作品以外に、心を打つ作品はないかと思い、東洋大学のホームページをのぞいてみました。以下、印象に残った作品を紹介します。
・母の分生きると決めたあの日から自慢の娘になれていますか 高校3年
この思いが、お母さんと同じようなすてきな女性に成長させてくれる大きな力になっているのですね。悲しみを越えて前向きに生きている姿に心が打たれます。
・色一つ周りにあわせて選んでたなじまぬ色にかさなる自分 高校1年
周りになじめない寂しさが伝わってくるようです。お互いに自分らしい色を大切にしながら通い合うものを見つけることがてきたら、少しは楽になるのでしょうが……。
・「すきなんだ」浴衣のきみがゆびさしたラムネとぼくがしゅわっとはじける 中学2年
好きだという思いをこんなにもストレートに表現できることに、青春そのものを感じます。まっすぐなハートは、相手に届いているのでしょうか。
・虹を見たそんなささいな出来事が前向きに生きるきっかけになる 高校1年
純粋であるが故に、傷ついたり悩んだりすることも多いのでしょう。でも、その柔らかな感性の持ち主であるからこそ、ささいなことからも新たな生きる力を見出せるのだと思います。
・貸していた教科書のすみさりげなく君のまるじで「好き」の二文字 高校2年
「好き」の二文字に込められた思いが、しっかりと作者の心に届いているのでしょう。すみにさりげなく 見慣れたまるじで書かれた二文字を 愛しく受け止めているのですね。
・三人で鍋を突っつく夕食で進路の話で箸が止まった 高校3年
進路を考えることは、それだけ重いものなのだと思います。どんな進路を選択し踏み出そうとしているのか、本人はもちろんご両親も 期待と不安の中で 未来を見据えているのでしょう。
・国境を気にしてしまう私たちこの大空は壁がないのに 高校2年
こんなふうにとらえることができたら、国境紛争も消えてしまいますね。大空を自由に飛ぶ鳥のように、国境にとらわれずに同じ人類として心が通い合えたらどんなにいいでしょう。
・「先生」と私をにぎる小さな手保育士の夢決意した夏 高校3年
私が教職の道を決意したのも、実習最後の日に手を振って見送り続けた子供たちとの出会いがあったからです。小さな手に込められた思いが、夢を後押ししてくれたのですね。
・不発弾今日もみつかる沖縄(うちなー)の『戦争おわらぬ』と吾が祖母なげく 中学2年
沖縄の人たちが背負ってきたものを強く感じます。基地が在り続ける限り、その思いは消えることがないのだと思います。軍事力で本当の平和は守られるものなのでしょうか。
・国境を越えて届いた母からの自筆の手紙にじんで読めない ニューヨーク学院2年
親元を離れ異国の地で暮らしているからこそ、家族への思いもつのることでしょう。手紙の文字を見るだけで会いたい思いが込み上げ、涙があふれるのだと思います。
〈小学生の部〉
・もみじの葉赤く色づきひらひらとふってはつもる秋のじゅうたん 小学6年
赤いもみじが舞う様子が目に見えるようです。ひらひらとふるだけではなく、一枚一枚重なるようにつもって じゅうたんになるのですね。秋を切り取って絵にしたような感じがします。
若々しく みずみずしい感性にふれることで、古くなりつつある私の感性も刺激され、潤いを与えてもらったような気がします。ハートだけでも、若々しくありたいものですね。