谷川さんの翻訳された絵本の中で、私のお気に入りは レオ・レオニの絵本です。
〇小さな魚たちが力を合わせて大きな魚に立ち向かう「スイミー」
〇色や光や言葉を集め、野ネズミたちに吟遊詩人のように語りかける「フレデリック」
〇バラバラだった文字たちが、嵐に吹き飛ばされないように手をつないで言葉をつくり、
大切なことを文にして大統領に伝える「あいうえおのき」
など、どれも大人が読んでも楽しく、いろんなことを考えさせてくれる絵本です。
このレオ・レオニの絵本を翻訳することにしたのも、その内容が谷川さんの思いや考
えと通じ合うものがあったからなのではないでしょうか。また、永遠の少年の心の持ち
主である谷川さんだからこそ、英語と日本語の間を自由に行き来し、作者や子どもの
思いを汲み取りながら 言葉の壁を超えて翻訳という作業に取り組んでこられたよう
に感じました。
次に紹介するレオ・レオニ作「ペツェッテイーノ」 (じぶんをみつけたぶぶんひんのはなし)
という絵本は、まるで哲学書とも言える作品で、特に心に残る作品です。
ペツェッテイーノは、自分は ちいさくて きっと だれかの とるにたりない
ぶぶんひん なんだとおもっていて、それをたしかめる旅に出かけます。
「ぼくは きみの ぶぶんひんかな?」 ペツェッテイーノは、いろいろ たずねて
まわりますが、
「ぶぶんひんがたりなくて はしったり つよかったり およいだり……できるとおもうのかい?」
という答えしか返ってきません。
「ぼくは だれかの ぶぶんひんに ちがいないんだ。どうしたら さがしだせの?」 と、
ペツェッテイーノは さけんでしまいます。
そんな彼に 「かしこいやつ」は 「こなごなじまへ いってごらん」と 言います。
そこで ペツェッテイーノは ボートで こなごなじまに 向かいます。
しかし、苦労してたどりついたものの ペツェッテイーノは、つまずいて転がり落ちてしまい、
こなごなにくだけてしまいます。
そこで 彼は知ったのです。
自分もみんなと同じように ぶぶんひんがあつまってできているのだということ。
「ぼくは ぼくなんだ」 ということに。
自分は決して誰かの部分品ではなく、自分という確かな存在なのだということに気づくことのできたペツェッテイーノ。
人は誰もがこの世にたった一人しか存在しない 唯一無二の存在であるということを気づかせてくれる絵本だと感じました。
自分という存在の意味を問いかける難しいテーマではありますが、霧に包まれた世界に一筋の光明が射すような感動を覚えました。
谷川さんの詩にも 「ひとりひとり」や「引き合う孤独の力」といった「孤」に焦点をあてた表現が登場します。
谷川さんは、それだけ ひとりひとりの存在の重さや尊さ、ひとりひとりの生きる姿や思いを
大切に感じてこられた詩人なのではないでしょうか。
〇小さな魚たちが力を合わせて大きな魚に立ち向かう「スイミー」
〇色や光や言葉を集め、野ネズミたちに吟遊詩人のように語りかける「フレデリック」
〇バラバラだった文字たちが、嵐に吹き飛ばされないように手をつないで言葉をつくり、
大切なことを文にして大統領に伝える「あいうえおのき」
など、どれも大人が読んでも楽しく、いろんなことを考えさせてくれる絵本です。
このレオ・レオニの絵本を翻訳することにしたのも、その内容が谷川さんの思いや考
えと通じ合うものがあったからなのではないでしょうか。また、永遠の少年の心の持ち
主である谷川さんだからこそ、英語と日本語の間を自由に行き来し、作者や子どもの
思いを汲み取りながら 言葉の壁を超えて翻訳という作業に取り組んでこられたよう
に感じました。
次に紹介するレオ・レオニ作「ペツェッテイーノ」 (じぶんをみつけたぶぶんひんのはなし)
という絵本は、まるで哲学書とも言える作品で、特に心に残る作品です。
ペツェッテイーノは、自分は ちいさくて きっと だれかの とるにたりない
ぶぶんひん なんだとおもっていて、それをたしかめる旅に出かけます。
「ぼくは きみの ぶぶんひんかな?」 ペツェッテイーノは、いろいろ たずねて
まわりますが、
「ぶぶんひんがたりなくて はしったり つよかったり およいだり……できるとおもうのかい?」
という答えしか返ってきません。
「ぼくは だれかの ぶぶんひんに ちがいないんだ。どうしたら さがしだせの?」 と、
ペツェッテイーノは さけんでしまいます。
そんな彼に 「かしこいやつ」は 「こなごなじまへ いってごらん」と 言います。
そこで ペツェッテイーノは ボートで こなごなじまに 向かいます。
しかし、苦労してたどりついたものの ペツェッテイーノは、つまずいて転がり落ちてしまい、
こなごなにくだけてしまいます。
そこで 彼は知ったのです。
自分もみんなと同じように ぶぶんひんがあつまってできているのだということ。
「ぼくは ぼくなんだ」 ということに。
自分は決して誰かの部分品ではなく、自分という確かな存在なのだということに気づくことのできたペツェッテイーノ。
人は誰もがこの世にたった一人しか存在しない 唯一無二の存在であるということを気づかせてくれる絵本だと感じました。
自分という存在の意味を問いかける難しいテーマではありますが、霧に包まれた世界に一筋の光明が射すような感動を覚えました。
谷川さんの詩にも 「ひとりひとり」や「引き合う孤独の力」といった「孤」に焦点をあてた表現が登場します。
谷川さんは、それだけ ひとりひとりの存在の重さや尊さ、ひとりひとりの生きる姿や思いを
大切に感じてこられた詩人なのではないでしょうか。