あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

『鹿の王』を読んで

2015-05-05 19:19:23 | 日記
守り人シリーズを読んで以来、上橋さんの書かれたファンタジーの世界に心惹かれています。

主人公のヴァンに、北方謙三さんが描く小説に登場する主人公と重なるものを感じました。

愛する妻と子を失い、死に場所を求めて戦う主人公。
ニヒルな戦い人が、生と死の狭間を乗り越え、守るべき幼子:ユナと出会い、守るべき者を生かすための戦いに臨みます。
医術師という立場で生と死の意味を問いながら、病に立ち向かう もう一人の主人公ホッサル。
二人の主人公が出会う中で、生きるということの意味や命というものの大切さについて問われているような気がします。

病の謎を追求する形でストーリーは展開します。
しかし、読み終わった後に残るのは、人はなぜ生きるのかという問いであり、主人公の思いと重ね合わせた答えです。
生ある者は、いつかは死へとたどりつきます。
それが自明の理であるものの、いかに納得した形で生を終えるのか。
死と向き合うことで、見えてくる生のありよう…。

エンディングの場面で願うのは、ヴァンの死ではなく、ユナとサエとヴァンの生ある未来の姿です。
「鹿の王」としての 生き様があっても、そのゴールは死ではない。
そう思えること自体が、生きることの意味や大切さを感じるが故の結論なのかもしれません。

守るべき者のために何ができるか、その答えを探し求め続けることが 生きることの意味でもあるのかもしれません。





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