オリンピックの開会式まで、あと1週間という日になりました。この時期になっても、色々な意見があって、それをネットで激しく言い争う状況も認識してはいるのですが、まずは「色んな意見があること」は多様性の証拠であり、このこと自体は、非常に素晴らしいことと評価いたしましょう。
それから、両極端の意見に対しては、それぞれの意図するところを理解することから始めましょう。もちろん、自分の意見を曲げる必要はありません。
自分の意見を申し上げれば、オリンピックには、単なるスポーツイベントを超えた特別な力があると信じております。その「特別な力」とは、外交力でも軍事力でも、演説でも文章でも、解決できないことを、可能にしてしまう特別な力であります。それは世界を変えることができる特別な力でもあります。
身近な事例を申し上げれば、2018年の平昌 冬季オリンピックの女子スピードスケート500mの決勝で、優勝した小平奈緒選手が、2位に敗れた韓国の世界チャンピオン 李相花選手の肩を抱きしめる姿、そして二人で健闘を讃え合う姿は、日韓両国の国民の心を氷解させる力がありました。政治や外交では全く不可能なことを、この二人は、オリンピックの舞台でやってのけたのです。
また、先日、陸上400mハードルの元日本代表 為末大氏がお話していましたが、2000年のシドニー オリンピックの女子陸上400mで優勝した、オーストラリアのキャシー・フリーマン選手のエピソード。キャシーは、オーストラリア先住民アボリジニで、今でも国内では困難な差別問題が残っている状況。レースでは、キャシーが最後の直線までは2位の位置で、残り数十メートルのところから、一気に先頭に躍り出る展開になった際、スタジアムにいる全員、世界中から集まった全ての人種・民族が、まるで一つの生き物になったように、キャシーを後押しするような大声援を送りました。恐らくTVの向こう側でも、世界中で同じ状況が起きていたと思います。
今回のオリンピックでは、原則無観客開催となってはいますが、こうしたオリンピックだからこその特別な力は、TVの力も借りながら、堅持できるものと思います。
感染防止に万全を期すのは当然ですが、こうしたオリンピックが持つ特別な力についても、ぜひ前向きに捉まえて、あらためてオリンピック開催の意義を考えてみることを、お願いしたいと思います。
私は、オリンピックが持つ特別な力を信じながら、頑張る全ての国の選手たちに対して、TVの向こうから全力の声援を送っていきたいと考えております。