パリ五輪の競泳競技で、ビックリ仰天の大偉業が成し遂げられました。
地元フランスのレオン・マルシャン選手が現地7月31日、男子200mバタフライと男子200m平泳ぎの同日制覇を成し遂げてしまいました。
これが大偉業である理由は2つあります。
第1に、競泳競技で「平泳ぎ」と「バタフライ」は対極にある泳法のため、使う筋肉が全く異なること。
もともと「バタフライ」という泳法は「平泳ぎ」から生まれたものではありますが、今となっては対極にある泳法だと言えます。すなわち、競泳競技の中でほぼ同じ筋肉を使うのは「自由形(クロール)」と「バタフライ」。上半身の強靭な筋力と、両脚で水面を叩く推進力が共通点。その次に近いのが「背泳」で、これも上向きか下向きかの違いだけで、上半身の強靭な筋力とバタ脚の推進力が共通点。敢えて違いを言えば、腕を掻く回転が逆であることとバセロキックがあるため、より身体の柔軟性が求められること。一方「平泳ぎ」は、腕の掻き方も、脚の使い方も、全く異なる世界。使う筋肉が異なる上に、必要な筋肉の柔軟性の場所も全く別世界の泳法となります。
なお、「自由形」や「バタフライ」の選手の典型的な体型が『上半身筋肉モリモリのマッチョ』であるのに対して、「平泳ぎ」の選手の体型が『比較的スラッとした柔軟なシルエット』であるのはそれが理由。
第2に、パリ五輪では男子200mバタフライの決勝と男子200m平泳ぎの決勝が、わずか1時間半の間に行われたこと。
五輪競泳の日程は、もともと非常にタイトではありますが、さすがにこの2種目の決勝を同時に泳ぐ選手はいないことを前提に日程が組まれたのだと思います。しかも、200mバラフライという競技は、競泳の中でも最も疲れ=乳酸が溜まるレース。この状況を跳ねのけて、2レースともにオリンピックレコードで優勝したことは「驚異的」と言わざるを得ません。
(あとで分かったのですが、当初は「男子200mバタフライ決勝」の直後に「男子200m平泳ぎ決勝」が行われるスケジュールだったそうです。これをフランス水泳連盟が働きかけて、何とか1時間半のインターバルを入れてもらったとのこと。開催5か月前の時点で、マルシャンの同日二冠の可能性をフランス水連が確信していたのですね!)
まぁ、例えが悪いかもしれませんが、競馬の世界で言うと、「まず土曜日に中山大障害を勝ったあとで、翌日の有馬記念も制してしまう」ようなもの。同じ競馬と言っても、障害レースと平場レースは全く異なる適性が求められるものですが、これを短期間で同時に成し遂げるという意味で、
この「バタフライ・平泳ぎの同日二冠制覇」は、「中山大障害・有馬記念の連日二冠」と同じくらいの大偉業と言えると思います。