アートインプレッション

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影絵芝居『聖アントワーヌの誘惑』

2011-08-26 18:07:53 | 陶酔のパリ・モンマルトル
夏休みも後半戦になって参りましたが、皆さんいかがお過ごしですか?

今日は、「陶酔のパリ・モンマルトル1880-1910」展の舞台であるキャバレー「シャ・ノワール」で上演されていた影絵芝居 聖アントワーヌの誘惑 について、改めてご紹介します。

19世紀末、影絵芝居は映画に先駆ける総合芸術として観客を魅了していました。
そんな影絵芝居の中でも特に大きな人気を誇っていたのが、『聖アントワーヌの誘惑』です!

聖アントワーヌの誘惑

1887年
アンリ・リヴィエール 《影絵芝居『聖アントワーヌの誘惑』より「光の都」》
(c)ADAGP, Paris&SPDA, Tokyo, 2011


上のイラスト、まさに悪魔が聖アントワーヌを誘惑するシーンです。
隠遁生活では見ることのないパリの生活や科学技術を目のあたりにし、祈りを捧げる毎日に疑問を抱く聖アントワーヌ。この後も艶かしいシバの女王や金銀財宝の山、風神雷神をはじめとする異国の神々、真理の幻影など、ありとあらゆる誘惑が繰り広げられます。
原作は『ボヴァリー夫人』で知られる小説家、ギュスターヴ・フローベール。約30年もの歳月をかけて執筆され、特に後半の異教の神々のシーンでは、フローベール自身の世紀末的気分、科学技術への憧憬が反映された、彼の代表作と言えます。

「シャ・ノワール」で上演する際にはピアノの生演奏が入り、店主のロドルフ・サリスが即興で口上をしていました。
影絵芝居アルバムを見ても、次々と移り変わるシーンに合わせて音楽も表情をガラリと変え、宗教劇ではありますが当時のカフェ・コンセールの香りが濃厚に漂う作品に仕上っています。
音楽院を退学したばかりのエリック・サティもこのお芝居の初演を観に訪れ、「シャ・ノワール」の第2ピアニストとしての生活をスタートさせたと言われています。
下の写真は当時の様子です↓↓


「シャ・ノワール」の内部:ロドルフ・サリス(中央に立つ)、アンリ・リヴィエール(前列、右から2番目に座る)、
『フィガロ・イリュストレ』の挿絵、1893年


この影絵芝居のデザインをしたアンリ・リヴィエール(1864-1951)、後年は富嶽三十六景ならぬエッフェル塔三十六景を制作するほど、東洋美術に傾倒していたとのこと。イラストの構図もどことなく日本的じゃありませんか?

そして!

本展覧会では東京芸術大学音楽学部のご協力のもと、当時使用された音楽を演奏、録音し、影絵芝居用のイラストと一体化した再現映像の制作を試みました!

次回は制作の様子をご紹介いたします。

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