駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

研修医気質

2009年09月07日 | 医者
 秋風が立ち、また研修医が回ってくる季節になった。毎年印象が違う。年ごとの印象があるから、人間の個性の他に卒年の特徴といったものがあるのだろう。
 我々の頃に比べればスマートで人当たりも概ね良好で、医学知識もおしなべて優れているように思う。ただ思考がマニュアル式にパターン化している傾向があり、症状から考えられる病気を挙げて、可能性の高そうなものにアプローチしていくので、閃きはあまり感じられない。勿論、三振かホームランかのような診察では困るので、これでよいのだろうと思う。
 患者や職員に対する態度も評価の対象になっているせいか、挨拶などきちんとするが、人を見慣れている私には言葉以外の態度も気になる。僅か数日居るだけだが、食事をご馳走しながら話をするので、人となりが分かる。医学的知識もさることながら常識があり先輩の前でも普通に話ができる研修医を好ましく感ずる。それは臨床医に欠かせぬ資質で、入学以前に家庭で形成されるものだ。
 将来の希望を聞くとこじんまりしており、その点はちょっと物足りない。ダイナミックな外科医や学問で業績を上げる研究者を目指そうといった上昇志向は少ない。以前にも指摘したが、QOL(Quality of life)が大切といっても患者のではなく自分のQOLが優先で、緊急呼び出しの多い外科、産婦人科、小児科は敬遠し、自分の時間が確保できる眼科、皮膚科、精神科希望が多い。女医さんの中には最初から産業医になりたいという人も居て、まあ家庭を持とうとすればそんなものかと思いながら正直がっかりする。優しさは大切だし安定志向も分かるが強さの裏打ちがないと、小さめの夢も実現できない。棒ほど願って針ほど叶うというのは実感している。
 肩肘張ってちょっと生意気でも未知の世界を切り開いてゆく気概があれば大目に見たい。覇気がないと新風をもたらすことは難しいのだ。
 まあどこかに闘志溢れる研修医が居るだろうし、闘志はさほどなくても素直な人は伸びることが多いので、若い研修医を温かく見守り、いくらかでも力になってやろうと待っている。

 
 
コメント
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