駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

転勤のある人生

2009年09月08日 | 人生
 某大手薬品メーカーのK君が転勤で岡山へ行くという。五年の付き合いだった。「本当に先生にはお世話になりました」。と最敬礼をする。確かにK君の会社の降圧剤(血圧を下げる薬)はちょうど発売になって六年になるが、随分とたくさん、それこそ何千錠と使っている。これはたまたま評価の高い薬であったからでK君の力は10%くらいしか利いていないのだが、彼の着任と同時に倍々の勢いで使用量が増え、今では彼が担当する医院の中では一番の使用量らしい。おそらく新任の地で売り上げが伸びず困っていた時のしのぎになったのだろう、感謝してくれるわけである。
 最初交代で紹介された時、前任のO君に比べると地味で口べたで、頭を下げるばかりなので、こいつ大丈夫かなと心配したのだが、話をする内に素朴で正直なのでなんだか馬が合って親しくなった。
 K君のような仕事をMRというのだが、いろんな薬品メーカーのMRがとっかえひっかえ月に20人くらい当院を訪れる。一部の例外を除いて、ほとんどが数年で交代する。前任地を聞くと北から南まで日本全国あらゆる所だ。薬の宣伝のほかに雑談で各地の話を聞くのも楽しい。中に自然うち解けて色々話をするMRができてくる。K君はその一人だった。
 どうも薬の売り込みの激しいMRは苦手で、その点K君は薬の宣伝はどうぞよろしくという程度の控えめで、しかも他製品のネガティブキャンペーンはしなかった。それで気に入ったのかもしれない。もう33歳になるのにまだ独身で、最近腹が出てきたなどと情けないことを言っている。この二年は下に可愛い女性新入社員が付いて、あるいはと思っていたのだが、淋しく独身のまま誰一人として知人の居ない岡山へ行くらしい。
 ささやかだが個人的に部下のM嬢と3人で私的送別会を開くことにした。岡山でいい人を見付けますと誓っているが、岡山は美人が多い?といっても、自立して辛口の傾向があるようだから、大丈夫かなと心配している。
 突然、見知らぬ土地へ行く、なかなかのストレスだが、心機一転良い出会いがあればと願う。
コメント (2)
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