チェロの曲を聞いている。弾いているのは藤原真理さんだ。自分は音楽の才能に恵まれず、音楽教師にも恵まれず、音楽の時間には惨めな思いをしてきた。
そうして、今は時々手に当たったCDを聞く程度なのだが、楽器の音色は味わうことが出来るような気がする。弦楽器ではバイオリンも好きだが、チェロにはバイオリンにない心の奥底に響く音色がある。なぜ宮沢賢治がチェロを選んだか知らないが、きっとこの音色に関係があると思う。
いつかはと思った前橋汀子さんのバイオリンも遂に聞く機会がなかった。藤原真理さんのチェロ演奏は未だ間に合うかも知れない。今年の一つの目標にして聞きに行ってみたい。あれもこれもは到底無理と分かる年なのだが、これだけはというものはあるのだ。
暮れ正月で少し部屋を片付けることが出来た。二百冊ほどの本をお払い箱にしたが、まだ本に埋まっている。夜半、本に埋まりながらチェロの音を聞いていると心が解れてゆくように感じる。多分、北国で凍てつく夜に聞くチェロはもっと身体に滲み込むだろう。