林哲夫さんの「喫茶店の時代」を読むと明治の終わりから昭和の終わりくらいまで喫茶店という場所があって、そこに集うあるいはたむろする人達が居たのがわかる。その中には文化人と呼んで良さそうな人達がおり、コーヒ一杯で何時間も沈思黙考したり駄弁ったり原稿を書いたり深夜に及べば喧嘩をしたりしていたらしい。そしてそこから波及的に様々な文芸が生まれた様子だ。
私も学生だった昭和四十年代には行きつけの喫茶店があり、よくたむろしていた。何も生み出せなかったが出会いはあった。
平成令和にはここに描かれているような夜な夜な文化人?がたむろして何時間も過ごす場所となる喫茶店は絶滅危惧種になったのではないかと思う。
喫茶店のような人が直に会って話をしたり情報を交換したりする場所の減少とインターネットの普及は関係がありそうだ。こうした時間の過ごし方の変化が世の中をどのように変えたか、喫茶店のない時代の報告も必要な気がする。