海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

自衛隊内のいじめと官製談合の深刻さ

2011-01-10 14:16:22 | 米軍・自衛隊・基地問題
 2010年12月21日付琉球新報に〈静岡・損賠訴訟/自衛官自殺は公務災害/国が認定、妻に補償通知〉という記事が載っている。訴訟の概要と公務災害認定の意義を確認するため、長くなるが以下に全文を引用する。

〈【静岡】県出身者子弟の3等空曹=当時(29)=が自殺したのは上官の2等空曹の地位利用のいじめが原因として、妻子と両親が国と2曹に計約1億1千万円の損害賠償を求めた訴訟で、妻が20日、静岡地裁浜松支部(中野琢郎裁判長)の証人尋問で、夫の3曹が今月10日付で公務災害に認定されたことを明らかにした。自衛官自殺の公務災害認定は極めてまれとみられ、係争中の本訴訟をはじめ、今後の自衛隊の運営などにも影響を及ぼしそうだ。
 代理人の塩沢忠和弁護士らによると自衛官の自殺による公務災害認定は「過去に聞いたことがない。全国初のケースではないか」と話している。
 妻らの申請により、防衛省の航空幕僚長名で補償通知書が交付された。3曹の自殺が公務に起因することになる。
 申請に携わった龍田紘一郎弁護士らは「訴訟で国側はまだ争うだろうが、公務による精神的負担が起因して自殺に至ったとする因果関係を裏付ける一つの証拠だ」と評価している。
 訴訟資料などによると、3曹は1995年に静岡県の航空自衛隊浜松基地第1術科学校整備部に配属された。以来約10年間、2曹と勤務し、2曹から「死ね」「辞めろ」などの暴言や、たたく、蹴るなどの暴行を受け2005年11月13日に浜松市内の自宅アパートで首をつり自殺した。
 裁判では、自殺と一連のいじめを「指導」とする被告側の主張を、どう評価するかが最大の争点となっている。
 今回の公務災害の認定について、防衛省の認定内容は明らかになっていないが、代理人によると、自殺の場合、うつ病の発症など精神疾患が認定用件という。因果関係の争点判断を前にした国の認定は、訴訟の行方に大きく影響を与えそうだ〉

 琉球新報の記事によると〈防衛省の認定内容は明らかになっていない〉ということだが、自衛官の自殺が公務災害に認定されることは〈極めてまれ〉というのだから、原告にとっては大きな意義を持つものだ。同裁判は3月7日に最終弁論が行われるとのこと。原告の勝訴を願いつつ裁判の行方を注目したい。
 現在の自衛隊が抱えている問題は、以下の記事も合わせて読むと、その深刻さが浮き彫りになる。

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20101215k0000m040082000c.html

 いじめによって自衛官が自殺する一方で、官製談合の責任をとって航空自衛隊のトップが退任した。いじめも官製談合も空自にかぎったものではなく、自衛隊組織全体が抱える問題である。昨年は検察庁の問題が大きく取り上げられたが、内部に抱えている問題の深刻さは防衛省・自衛隊も変わらない。検察も自衛隊も国家権力を体現する組織であり、その腐敗は市民にとって計り知れない脅威となる。自己保身を図る組織から膿を出させるのは、多くの市民が注目し、声を上げることによって生まれる力しかない。


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