今、出演中の公演に「春の遭難者」のチラシを折り込みたいから終演後に最寄り駅まで取りに行っていいですか?
と、土田有希ちゃんから連絡をもらって。
その日22時頃、最寄り駅までチラシを届けに行った。
外は雨が降っていて、片手で傘を差し自転車で走りながら、前のカゴに入ったチラシが濡れないかと心配で仕方なかった。
ビニールに入れたチラシを紙袋に入れ、これでは頼りないと家を出るときに半ページの新聞紙でカゴを覆う。
家を出てすぐに後悔した。新聞紙も紙袋も水には弱い。新聞紙は早々に飛んでしまうし、チラシはビニールに入れてるけど、紙袋が破れたら持ち帰る土田有希ちゃんが大変。本番終わりの彼女の荷物は多いはずだ。
家を出るとき濡れるかもと思ったのに。
いつもそうだ……。
この道は間違っているかも、と思いながら進んで間違うし、
ココに置いたら無くなるかも、と思いながら置いて無くすし、
書かなきゃ忘れるかも、と思って書かずに忘れる。
わかっているのにやってしまう。
先日、土田有希ちゃんとご飯を食べた時のことも思いだした。
「滝本さんって、おもしろいですね」とつっちーは言った。
ランチにドリンクを付けなかった彼女に合わせて私も付けなかったからだ。
「ドリンク付けたかったら付ければいいのに」
確かにそうだ。でも食後に一人でコーヒーを飲む自分を想像し、相手に気使い急いで飲むだろうし、そこまでコーヒーを飲みたいわけじゃないし、だったらさっさと店を出た方がいい。
自分の意志でドリンクを付けないと決められるつっちーは大人だな、と思う。
私も自分の意志を貫ける大人になりたい。
このままじゃまずい時は立ち止まれる大人に。
もう大人だけど……。
そんなことを考えながら駅で待っているとつっちーがやって来て、チラシの受け渡しだけなのに改札をさっさと出てしまった。
「改札、出なくてもいいのに」と私が言うと、
「いいんですよ」と人懐っこく笑う。
電車代がかかるのに、改札を出るか出ないか瞬時に決められるなんてやっぱり大人だ。
23日まで新宿で出演中のキトキト企画の本番と、つっちーは帰って行く。
ハンカチで拭いた紙袋はその頃にはもう乾いていた。
B.LET'Sの本番は来年2月5日から。
私はもう大人だけど変わりたいって思っている。まだ変われるって、思っている。