家で過ごす時間がさらに延長される中、この機会に見ていただければと、過去作品の動画無料配信を開始しました。
2016年に上演した「エピローグに栞を」。
上演した会場は古民家でとてもステキな場所。音楽は友人でシンガーソングライターの飯田マキトさんに生演奏で歌も歌ってもらいました。
当時、日々弱っていく父との別れが、その残り時間が迫っていることが辛くて、その思いを書いた作品。
思っていた通り、上演した翌年の春に父が亡くなり、そして、信じられないことに同じ年の年末には出演していただいた深水三章さんが急逝されました。
このあたりの一、二年は思い出しても悲しいことばかりです。
現実は悲しいのですが、この作品の上演と作っていた時間は、今から思い出しても、ただただ楽しくて、幸せな時間でした。
作品を作ることは苦しいことも多いのですが、これに関しては幸せな記憶しかありません。きっと深水さんがいてくれたからですね。
深水さんに出演をお願いした時は、まだ台本もなく、参加を迷っていらしたのは当然で、確認しても生返事しかしてもらえず、「発表していいですか?」と聞いても生返事。なので私は、先に発表をしてから、「ね? もう逃げられないですよ」と笑うと、深水さんは「わかったよ」と苦笑いされていました。なんと強引な引き受けてもらい方…。だけど最終的に気に入って演じてくださり、そして、いつもカッコよかったです。
女子高生役の中村優里さんは、映像作品に出演されることが多い女優さんで、私は彼女の声が好き。そんな声や容姿のかわいらしさだけではなく、セリフを多面的に理解しユーモアを持って表現してもらえるところがとても頼もしく、信頼しています。
ショートカットの永田涼香さんは独特の雰囲気をお持ちで、難しい役所だと思っていたのですが、難なくやってのけたという感じ。深水さんにもたくさん質問して、体いっぱいで学び吸収し成長していかれる様は瑞々しく、感動的でもありました。
で、この女子2人がかわいくて、いつも癒されました。
今回映像を見返し、劇団員の永島さんと大田さんが久しぶりに演技をされているところを見て、最近はリーディングが続いていたこともあり、素直に嬉しくなりました。
この公演は古民家の居間で上演しましたので、お客様には狭い板の間に座布団を重ねてギュウギュウに詰めて座っていただきました。
今となっては考えられない状況。奇跡みたいな出来事だったのだなと思います。
そう思うと、観客と一緒に空間と時間を作る「演劇」という表現で、体験は、非効率でアナログで、それでも人が集まる理由はひとことではとても説明が難しく、その本番のひとつひとつが奇跡の連続だったのだと、こうなった今、改めて思います。
この機会にこの配信を見ていただくこともキセキみたいなものですし。
お友達からも「見たよ」と感想をもらって、私の方が嬉しくて。
何か少しでも、皆さまのお役に立てていたらと思います。
先のことは分かりませんが、時代と共に変わりながら、粘り強く変わらずに、楽しんでいただける作品を作っていきたいと今は漠然と考えています。
配信は14日まで。この機会にご覧いただけましたら幸いです。
B.LET'S第16回公演
「エピローグに栞を」(2016年)