子供の頃から毎年行っていた地元の祇園祭りには、大人になってからはほぼ行かなくなった。
でも、その日は友達のお誕生日でもあるので、毎年忘れることはない。
最初の記憶は子供の頃に、親に連れられて。
欲しいものは「帰りに買うから」と言われて、必ず買ってもらえなかった。
金魚すくいも、ヨーヨーも、あれもこれもダメだった。
親はちまきを買いたいだけだったので、買ってしまえば用がなくなるが、せっかくだからと大渋滞の中、無理して鉾を見て回る。
でも長刀鉾も月鉾も、雨に濡れないように厳重にビニールがかけられているので、よく見えない。
長刀鉾の前ではどんなに人が多くても毎年必ず写真をとった。
だから同じような写真が、年は違えど何枚もある。
友達同士で行くようになってからは、女子校だったので、女友達5、6人と浴衣を着て。
大学生になったら男の子とデートで行ったり。
四条河原町の喫茶店でアルバイトをしていた時は、宵々山から山鉾巡航までの数日は掻き入れ時だったので、参加する余裕はなかった。
やがて、そういうのにも飽きて、行かなくなったり。
でも、知り合いが旅行で来た時には案内したり。
それも東京へ移ってからは、一度も行っていない。
喫茶店も居酒屋も、お祭り中は料金が上がる。
コンチキチンの音色も、以前は春から夏にかけて、四条烏丸近辺の民家から実際の練習音が聞こえていたけれど、いまでは年中、録音したものが街中に流れている。
山鉾巡行は昼間なのでテレビでしか見たことがない。
祇園祭りはただ町を歩くだけ、動きのないお祭りなので、夜店以外は楽しくないと思っていた。
花火もお神輿もない、ただいつもと違う、渋滞の町を歩くだけ。
ものすごい暑さと人と、それになぜか必ず夕立にあうので、汗と雨で浴衣が必ず湿っていた。
行く前は楽しそうだけれど、行ってしまうと大変なお祭りだった。
だけど家が近いので、それでも毎年見に行っていた。
疫病の流行がきっかけで始まったお祭りだけど、今年は開催されないらしい。
本当ならそろそろ始まる時期。
そりゃそうなんだけど、ないことがあるなんてと、驚いている自分に驚いている。
つまらないお祭りだと思っていたはずなのに、最近は行ってもないのに、聞いた時は妙に感傷的な気持ちになっていた。
地元と地元民のアイデンティティなんだな。
その分も友達のお誕生日は必ず祝おうと思っている。