休みの日はどこへも行かずに家にいることが多くなった。
夜になって、代わり映えしなかった1日に飽きて窓を開けると、遠くで赤い光が点滅をしていた。
どこかのマンションの屋上の電気だろうか。
寒い。
でも、見覚えのある景色だと思ってそのまま眺めていると、工事をしていたころの京都駅の風景だと思い出した。
いったい、何年前だろう。
あの頃の京都駅はとにかくずっと工事をしていた。
何年も、何年も。
実家の近所の公園から、まっすぐに京都タワーが見える。
あの頃、工事中だった昔の京都駅の上には、無数のクレーンが並んでいて。
そこが危険だと示すように、幾つもの赤いランプが、しきりに点滅していた。
まるで、暗闇に浮かぶ要塞のようだった。
実際に要塞は見たことないけど。
その風景を、いつもいつも眺めていた。
調べてみたら、駅が新しくなったのは1997年らしい。
その後に駅ビルや周りの伊勢丹やホテルの工事もしていたから、とても長く感じたんだろう。
その時の私は、実家の仕事を手伝っていて。
まだ犬のアイちゃんも生きていて、すっかり演劇も諦めていて、やりたいこともなくて、書くことなんて何もしていなかった。
不自由で苦しかった気もするし、幸せだった気もする。
アイちゃんは可愛い犬だった。
いま、YouTubeで追いかけている保護犬動画が、なんで気になるのかわからなかったけど、あのコはアイちゃんによく似ているんだ。
やっとわかった。
今の東京から、1997年の京都の町が見えるなんて。今日の最後に、思いもしなかったことだ。