現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

河合雅雄「イタチ ― 落ち葉の精」少年動物誌所収

2017-05-22 19:58:50 | 作品論
 長く患って高熱を出した主人公は、次第に消耗していきます。
 おかあさんは懸命に看病してくれますが、なかなか回復しません。
 往診してくれている老先生は、「ようすをみてみましょう」というだけで、頼りになりません。
 熱にうなされながら、主人公は様々な美しい幻想を見ます。
 イタチが、庭でカサコソ音を立てているような気もします。
 おかあさんは、イタチは血を吸いに来るので怖いと言いますが、主人公はイタチが病気を追い払ってくれると信じています。
 ある日、とうとう主人公は、庭にやってきた三匹のイタチを、ガラス戸越しに目撃します(ような気がしただけかもしれません)。
 その後、イタチはやってこなくなりますが、主人公の病気もなおります。

少年動物誌 (福音館文庫 ノンフィクション)
クリエーター情報なし
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河合雅雄「蛇わたり」少年動物誌所収

2017-05-22 19:53:39 | 作品論
 さまざまな蛇たち(シマヘビ、ヤマカガシ、カラスヘビ、アオダイショウなど)と主人公たち(例によって相棒はすぐ下の弟です)の確執を描きます。
 可愛がっていた十姉妹のつがいをシマヘビにのまたことに端を発し、さらに飼っていたシマリスが襲われ(尻尾を噛みちぎられて、遠くへ逃げて帰ってきません)、主人公たちは蛇たちに復讐を誓います。
 主人公たちと蛇たちとの戦いは、ここで書くのをはばかれるほど残酷でグロテスクなのですが、ラストの幻想的に美しい蛇わたり(無数のヘビが池を渡っていく)で終結します。

少年動物誌 (福音館文庫 ノンフィクション)
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河合雅雄「水底の岩穴にひそむもの」少年動物誌所収

2017-05-22 19:49:21 | 作品論
 少年の日の魚とりの思い出です。
 しかし、読者が想像するような牧歌的なものではありません。
 頼りになるすぐ下の弟を相棒に、主人公は獲物に合わせた様々な手段(手網、伏せ網、ヤス、手づかみ、潜りなど)で、いろいろな獲物(ハイ(オイカワ)、ゴリ、アカサチ(オイカワの雄)、ウナギ、鯰、モト(カワムツ)、モロコ、ギンタ(ギギ)、イチクチ、ドンコ、ユザ(ウグイ)、鯉など)と、文字通り格闘するのです。
 二人がかりで手づかみしようとして、六十センチを超えるようなウナギに巻きつかれ、とどめを刺すために主人公はウナギの首を噛みちぎります。
 魚籠がないので、手づかみしたイチクチの群れを、二人とも、四匹も五匹も口の中に押し込み、詰め込みすぎて吐き出します。
 主人公は、雷蛭に肛門のそばを噛みつかれ、大量出血します。
 その間に、シオヤアブにも尻を刺されます。
 一メートルを超すイルカのような大鯉を求めて、深さ五メートルのところにある水中洞窟へ、軍用の古い防毒面にゴムホースを付けた手製の潜水帽で潜り、もう少しで窒息死しそうになります。
 現代の親たちが見たら、目をむいて失神してしまいそうな冒険の連続です。
 主人公は、魚以外の動物たちも、簡単に命を奪ってしまいます。
 「進撃の巨人」風に言えば、少年の世界は残酷なのです。
 でも、なんと豊穣な世界なのでしょう。
 そんな光景を見ているのは、河原のショビン(セキレイ)だけです。


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